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第199話「試練を乗り越えろ!」

食事が終わった後、本日の方針&試練に関して説明があった。

話すのは、フレデリカの父マティアスである。


「マトレーナ様から(つか)わされた勇者様が……いずれは、元の世界へ戻られると知り、父と急ぎ相談しました。試練を受けるフレデリカに、協力して頂きながら、ぜひ指導をしてやって下さい」


「指導ですか?」


「はい、魔法、スキル、武技、体術、心構え等々、何でも結構です。我が娘フレデリカへ、習得出来るよう、ご教授頂きたい」


未知の勇者から、アールヴ族が受け継ぐのは、何も『血』だけではない。


勇者の持っているであろう魔法、スキル、技能等々も、

習得したいという考えがあるのだろう。


レベル99の俺が持つ魔法やスキルは、最初からズルして与えられたモノだが、

教授すれば何か、フレデリカのプラスにはなるのかも。


マトレーナ様も、そのような効果を期待したのかもしれない。


俺が貢献すれば、この世界における、彼女の信仰心が上がるのだから。


「了解しました。俺がどこまで、何を教えられるのか分かりませんが、全力を尽くしますよ」


そんな事を考えて、無難な返事を戻したら、


「勇者様、ありがとうございます! 創世神様とマトレーナ様に、深く深く感謝致します」


早速、マティアスはジャストなコメントを出してくれた。


あは!


よっし。

信仰心を上げるって、こういう感じだな。


手応えを感じる俺に対し、マティアスは話を続ける。


「では次に、試練に関してご説明します」


む、試練か……

果たして、どのようなものなのか?


「ここでフレデリカが受ける試練とは、現ソウェルから与えられる課題といえる難事です」


「難事……ですか」


ああ、分かる。


俺の中二病……

伝説の英雄ヘラクレスが、成しえた『12の功業』みたいな感じかな。


納得した俺が頷くと、マティアスは話を続ける。


「はい、ランクは難易度によってS、A、B、Cと分れており、クリアすれば相応の評価が下され、実績として残ります。種類は大きく分けますと討伐系、調査探索系、そして貴重品獲得系の3つです」


「成る程」


「我が国へ害為す討伐系の試練で魔物や魔獣に置き換えて言いますと、Sは大悪魔や古代竜(エンシェントドラゴン)、Aは中小の悪魔、二足竜(ワイバーン)やグリフォン、Bはオーガ、Cはオークとなります」


「成る程ですね。分かり易い、理解しました」


「ご理解して頂き、ありがとうございます。フレッカ……いやフレデリカは今までにBランクの試練——オーガ討伐を成し遂げています」


ほう、フレデリカは既にオーガを倒したのか?

彼女の発する魔力波(オーラ)で結構な実力者だと分かったが、やはりそう。

レベルで言うと、50前後くらいだろう。


ちなみにエルネスティのレベルは良く分からないが、俺以上の実力者なのは確か。


意外だったのは、フレデリカの父マティアスで、

レベル40を少し超えたというところ。


何と! 自分の愛娘より……下なのだ。

 

ここでフレデリカが手を挙げる。


マティアスが発言を認めたので、声を張り上げる。


「お父様! 今日は勇者様がいらっしゃるから、当然、討伐系のAランクをお願いしたいわ」


む、討伐系のA。

すなわち、中小の悪魔、もしくは、二足竜(ワイバーン)レベルか。


状況にもよるが、悪魔はエリゴスを倒したし、

二足竜(ワイバーン)も以前、戦い、勝った事がある。


まあ、何とかなるだろう。


しかしこの父は、経験不足の愛娘が心配らしい。


「いや、フレデリカ、それは無理だ」


「全然、無理じゃないわ」


「いや無理だ。そもそもAランクというのは、ソウェル自らが、解決にあたられるくらいの難事である。候補レベルのお前では到底無理だ」


「あら? それはお父様がでしょ? 私は大丈夫よ」


フレデリカは自分の実力が父を上回っている事を知っている。


だから実の親に対してさえ、こんな失礼な事を言うのだ。


俺の前で、立場をなくされたマティアス。


何とか怒りを抑えながら、フレデリカへ言う。


「むむむ、お前は! 先日、Bランククリアを、苦労して、やっと成し遂げたばかりではないのか」


「だからあ~! 勇者様があ! ケン様がいらっしゃるからあ! 全然! 怖くないし! 大丈夫だって!」


何だか、エスカレートして、不毛な会話になりそう。


と思っていたら、案の定、エルネスティが止める。


「マティアス、フレデリカ、もう止めなさい。勇者様の前なのだぞ」


「父上!」


「は~い、御免なあさ~い、お祖父様」


さすがに、フレデリカは祖父の言葉には従った。


そのエルネスティ、息子をフォローする。


「ふむ、マティアス、私が代わってやりとりをしよう、構わないな?」


「か、かしこまりました、ソウェル」


いきなり、マティアスの言葉遣いが変わっていた。

実の息子ではなく、『部下』として命令に従っている。


マティアスの同意を得たエルネスティは、孫娘へと向き直る。


否、ソウェルとして、ひとりの後継候補者に対して、

という鋭い視線を投げ掛ける。


「うむ、ではフレデリカ」


「は、はい! ソウェル」


「お前の気持ちは尊重したい。しかし、残念ながら、今のところAの試練はない」


「成る程! となると、またBの試練ですね。楽勝です」


ニコニコ余裕のフレデリカ。


しかし! そうは問屋が卸さなかった。


「いや、折角だから、もっと凄い課題に挑んで貰おうか」


「へええ! もっと凄い課題? やったぁ!」


「うむ、折角の前向きなお前の気持ちを、このままだと、無駄にする事になるからな」


「わあ! ありがとう! お祖父様!」


「いや! 礼を言うのは、まだ早いぞ、フレデリカ」


「え? まだ早い? どういう事でしょうか?」


「ふむ、イエーラ国内ではなく、国境を越えた遥か北の魔境で、試練完遂を行って貰う。転移門を使ってな」


「え、えええ!? ま、魔境!?」


祖父のひと言でフレデリカの表情は一変した。


驚きのあまり、目を大きく見開いている。


父親のマティアスも、びっくりしたようだ。


「ち、父上!」


「大きな声を上げるではない。控えよ、マティアス!」


「は、はいっ、ソウェル……」


「フレデリカ、魔境であれば、お前が望むAランクどころか、Sランクレベルの試練に近い経験が出来るだろう」


「………………」


「現時点でのお前の実力、そして魔境の危険度を考えると、ひとりでは、絶対に行かせない。だが今ならば……お前の言う通り、勇者ケン様がついていらっしゃる」


「うう、は、は、はい……」


震えながら返事をするフレデリカ。


ええっと……彼らが言う魔境って、あの……魔境だよな。


俺は少し前に邂逅した、グリフォン女子のフィオナと共に赴いた、

遥か北方の地を思い出した。


……その地は、想像以上にもの凄い場所だった。


時間の関係で、敢えて戦いを避け、上手くやり過ごしたが、

(ドラゴン)の大群が「うじゃうじゃ」居たのだ。


この世界の魔境が、もしも俺の世界と同じ環境の地ならば、

自信家のフレデリカが、怯え震えるのも分かる。


と、今度はエルネスティが俺へ呼び掛ける。


「勇者様!」


「はい」


「失礼だが、改めて貴方様のご戦歴をお聞きしたい。これまでに、悪魔や(ドラゴン)と戦った事は、おありかな?」


成る程!

ストレートに尋ねる、この質問は、エルネスティの深謀遠慮だ。


俺に実績を話させる事で、フレデリカの暴走を抑え、

マティアスの心配を(やわ)らげる効果を狙ったのだろう。


エルネスティの質問を聞き、当然ながら、俺を見るフレデリカとマティアス。


注目の俺はといえば、あっさり答える。

ここは嘘をつかず、正直に答える方が賢明だろう。


……悪魔はエリゴス、竜は魔王クーガーの騎乗竜ハイドラゴン、

そして悪徳召喚士の呼んだ、二足竜(ワイバーン)との戦いを、

思い出して話す事に。


「ええ、ありますよ」


「ふむ、詳しくお聞かせ頂きたい」


「分かりました。……俺が戦った騎士の姿をした悪魔は多分、爵位が付く相当なレベルの奴だと思います。竜とは2度戦いました……最初が、ハイドラゴンで、たぶん古代竜(エンシェントドラゴン)です。次に戦った竜は、二足竜(ワイバーン)ですね」


「うむ、中々の強敵ぞろいですな。それで、勇者様が今も無事という事は、結果はどうなったのですかな?」


「はい、高位悪魔は魂を破壊し、肉体、騎乗馬もろとも消滅させました。古代竜(エンシェントドラゴン)は威圧し、降伏させて無力化。二足竜(ワイバーン)は手刀で尾を切り落とした上で、マウントポジションを取り、素手で殴り、完璧に倒しましたね」


「えええっ!!??」

「あううう!!??」


驚愕! という言葉がぴったりのフレデリカ達。


そんな中、全く動じないエルネスティは、淡々と質問を続ける。


「ふむ、圧倒的、かつ見事な手並みの戦いぶりですな。それは、貴方様、おひとりでか?」


「はい、その場に協力者は居ました。ですが、相手と戦った時は基本的に1対1、俺ひとりでした」


そんな俺の答えを聞き終わった、エルネスティはにっこり笑う。


「おお、頼もしい! ならば大丈夫だ。フレデリカ、お前を勇者ケン様と共に魔境へ送ろう」


「は、はいっ」


「ひとつ、言っておこう。試練をクリアするのは大切だが、その前にケン様の言う事を、素直に良く聞くようにな」


「か、かしこまりましたっ、ソウェル!」


こうして……


俺とフレデリカはアールヴ達が怖れる『魔境』へと送られたのである。

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