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第198話「見抜かれてる!」

アールヴ美少女フレデリカと、清らかなイチャ寝をして数時間後……

翌朝というか、まだ時間は夜明け前。


ぐっすり寝ていた俺は、フレデリカに起こされて食事の間へ向かう。


あちらの世界では、自宅のベッドで寝ている筈なのに……

夢の中でまたも寝るなんて、何か変な感じ。


……まあ良いや、細かい事は考えないでおこう。


ちなみに、何故こんなに早く起きるかというと、

今日は『試練』という奴をクリアする為。


すなわちフレデリカが、アールヴの長ソウェルになる為の実績作りをする。

その手助けをする為なのだ。


ちなみに、何も俺とエッチして子づくりするだけが、実績作りではない。

他にも、やらなくてはならない事が結構あるという。


詳しい話は後でと言われたが、雰囲気では、どこか遠方へ出かけるらしい。


フレデリカの部屋を出て到着した、食事をする場所はとっても大きかった。


ボヌール村の我が家も居間はそこそこ大きい。

だが、こちらは王族に近いアールヴ貴族が暮らす王宮のような屋敷。

当然、比べ物にならない。


うっわ!

改めて見渡したら、ざっとファミレス大型店くらいの広さがある。


部屋の真ん中には、巨大なテーブルがど~ん。


ああ、上座が霞んで見える。

いわゆる『お誕生日席』に座る人は凄いんだろうな。


どうせ、昨日お会いしたソウェルのエルネスティ様でしょ?


そんな事を考えていたら「ぐいっ!」と手を引っ張られた。


あれれ?

フレデリカ様ったら、どちらへ俺を連れて行くの?


ずるずると引きずられて、首を傾げる俺を座らせたのは端っこの席。


え?

ここは……どこ?


って! さっきの、あの上座じゃないか!


向こうのテーブルの端っこが遥か遠~くに見える……


当然ながら、大いに焦る俺。


「おいおい、こんなところ座れないよ」


「いいえっ、勇者様は、席の一番上座だと、決まっていますから」


「そう……なんだ」


有無を言わさない雰囲気のフレデリカ。

彼女は可愛いだけのアールヴ美少女じゃない。


昨夜といい、押しの強さは超が付く一級品。


でも何故か、上座の俺の隣に無理矢理座った。

身体を、ぴったり俺へ密着させている。


そんなこんなしていたら、フレデリカの祖父エルネスティと、

父マティアスが入って来た。


身内のふたりに気付いたフレデリカが、大きな声で挨拶する。


「あ、お祖父様、お父様、お早うございま~すっ」


「うむ、お早う、フレッカ」


「おお、フレッカ、今朝は一段と元気が良いな」


あれ?

フレデリカの祖父と父は、何か料理の載ったトレイを持っている。


最近俺の家では、食事の配膳と片付けは、自分自身でやるのが基本である。


ユウキ家では、子供の躾けの為だが、彼らは違う。

王族もしくは上位貴族に等しい。


ならば配膳、給仕は、使用人がやる仕事じゃないの?


少し驚いて、きょとんとしていると、

コトン、と音を立てて俺の目の前にトレイが置かれた。


「勇者様がいらしゃるので人払いを致しました。これが貴方様のお食事です」


マティアスの言葉を聞いてトレイを見ると、

何かの肉と野菜を煮込んだスープに、ライ麦パンという簡素な食事が載っていた。


これではボヌール村の食事と変わらない。


アールヴ貴族って、普段からこんなに堅実に暮らしてるの?

  

トレイを見つめる俺の疑問を、マティアスが説明してくれる。


「試練を受ける日は『粗食』を摂ると決まっているのです。私と父も、フレデリカに付き合うと決めました」


そうか、粗食?


成る程……

そうか、そうだよな。


地方領主のオベール様でさえ、もっと良い食事をしていた。


王族、上位貴族に近いであろうこの家が、こんなに質素なわけがない。


「うふふっ、こんな食事でも、ケン様が居れば平気だも~ん」


そんな会話を交わす中、相変わらずフレデリカが甘えて来る。

腕をしっかり組み、つないだ手の指を絡める。


だが、こんな食事ねぇ……


俺は、普段からこんな食事だけど。

ありがたく、美味しく頂いている。


まあしょうがないか。

フレデリカは王族に等しいぐらいの貴族育ちだから。


俺の思いはさておき、フレデリカの熱いイチャを見た父が目を細める。


「うんうん」と頷いている。

どうやら俺とフレデリカが、絶対にエッチしたと思い込んでいるらしい。


それ、果たして良いのだろうか?

「Hしていません」とちゃんと正直に申告した方が、

後々、平和に暮らせるんじゃあないだろうか?


実はさっきそういう話をしたら、フレデリカにきっぱり却下された。


誤解を招かない為、俺は説明したかったのに、

頑として、フレデリカに拒否され、そのまま押し切られてしまったのだ。


約束したので、ここは仕方なく沈黙……

俺はただ「にこにこ」するだけ。


そのうち食事が始まった。


父マティアスは機嫌が良いが、祖父のエルネスティ様は俺をじっと見ている。


何か、微妙な雰囲気。


と、その時。


いきなり、俺の心に声が響く。


『勇者様、エルネスティでございますが……念話は使えますな?』


使えないとは言わさない雰囲気。


ああ、分かった!

フレデリカはこの祖父似だ。


この押しの強さは。


『は、はい……』


『ならば、お聞きしたい』


『…………』


ええっと、何かヤバイ雰囲気……


『あの子の放つ魔力波(オーラ)で分かりますよ』


『え? 分かるとは?』


『フレデリカは……いまだ処女のまま……貴方は何故、あの子を、抱かなかったのですかな?』


うっわ!

いきなり、ど真ん中の直球、来たぁ!


仕方がない、正直に言おう。


俺は昨夜、フレデリカへ伝えた通りに話した。


すると……


『ははは、勇者様。貴方は誠実だな』


『そうでしょうか?』


『ふむ……ならば、告白ついでに話して下さい』


え?

何か、もっとヤバ~イ雰囲気。


『貴方の事も、心から発する波動でほぼ分かる』


『…………』


『ズバリ、貴方はアールヴではない……正体は、擬態した人間だ』


『…………』


『そうであれば全て辻褄が合う……貴方とフレデリカの間に出来る子供は、純粋なアールヴではないからな』


『…………』


む、ここは沈黙するしかない。

ノーコメントに徹するしかない。


さすがに、俺でも分かる。


ここで余計な事を言ったら、

俺を派遣した女神のマトレーナ様に迷惑がかかるって。


しかし念話は、心と心の会話。

つまり魂同士の会話。


俺の考えは全て見透かされてしまったらしい。


でも……何故かエルネスティ様は、それ以上、追及しては来なかった。


俺に甘えるフレデリカを見て、傍らに居る父親同様に目を細めたのである。


「ふむ、我が孫フレデリカを……今日は頼みましたぞ」


7千年を生きた偉大なるアールヴのソウェルは、肉声でそう言うと、

俺にも笑顔を向けてくれたのである。

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