第196話「意外な展開」
祭儀を執り行う感じの部屋……ストレートに『召喚の間』と言うらしいが……
俺は、フレデリカと一緒にその部屋を出た。
さりげなく、ここはどこか?と聞くと、
アールヴの長ソウェルの住まう屋敷だという。
そう、さっきフレデリカが言ったソウェルとは名前ではなく称号。
一族を束ねる、最高責任者の事だそうだ。
さてさて!
単に屋敷と言っても、えらく広大……
俺達が居る屋敷は、王宮に近い規模であり、
壮大壮麗と言う言葉がぴったりである。
そして廊下に出て分かった。
外は真っ暗。
再度、フレデリカに聞けば、今は深夜だと言う。
召喚の間から出た廊下に、ずっと人影はなかった。
普通は夜でも護衛が居るのに。
どうやら、フレデリカが勇者召喚に集中出来るよう、
『人払い』がされていたようである。
俺とフレデリカは、気の遠くなるような長い廊下を歩く。
しばし歩くと、ようやく人が居る。
といっても、当然だが、全員アールヴ族だ。
そしてとうとう、目的の部屋へ到着。
フレデリカがノックをすると返事があり、
中は書斎らしき、めちゃくちゃ広い部屋である。
そう、どこかの、大型図書館くらいはある。
四方を天井まで届くような書架が置いてあり、
全てに本がぎっしりと詰まっていた。
そこには老齢のアールヴと、壮年と見えるアールヴのふたりが待っていたのだ。
俺にはピンと来た。
ふたりは、フレデリカと近い波動を放っていたから。
多分、フレデリカの身内だと。
早速フレデリカから紹介される。
案の定ふたりは、フレデリカの祖父と父。
ふたりとも、俺が女神マトレーナ様の代理と言う事で跪いている。
祖父の方はアールヴの長、いわゆる総帥であるソウェル。
名をエルネスティ・ラハナストと名乗る。
放つ波動で分かるが、俺でも臆してしまうくらいの魔力を持つ実力者だ。
後で聞けば、2、3千年が平均寿命のアールヴ族の中でも、
7千年という、凄まじい時間を生き抜いているそうだ。
そして『おまけ』のように言って申し訳ないが、
フレデリカの父もマティアスと名乗り、中々の力を持っていた。
まあ、それだけエルネスティの力が突出しているわけなのだが。
そのエルネスティが俺を見て言う。
だいぶ驚いているようで、目が見開かれている。
「おお……成る程。ケン様は凄まじき、お力をお持ちだ……そのお力で……貴方ならば、我が孫を助けられる」
「父上、いきなり貴方が、そこまで仰るとは驚きだ。とんでもない力をお持ちなのですか?……この勇者ケン様は」
「うむ、これまでに召喚した勇者様の中では、抜きんでておられる」
やはりアールヴナンバーワンの実力者の眼力はさすがだ。
俺が持つ、レベル99の力を見抜いたみたい。
「で、これから、俺は何をすれば良いのですか?」
いつもの言い方で返すと、エルネスティとマティアスは驚いて顔を見合わせた。
背後では、フレデリカが笑うのを我慢している。
どうやら、俺の言葉遣いが原因らしい。
あまりにもざっくばらん過ぎるのが、変に聞こえるようだ。
「ふうむ……ケン様は、どうやら何かにつけて規格外のお方らしい……詳細はフレデリカに聞いて頂きたいが、手短かにお伝えしましょう」
エルネスティは苦笑してそう言うと、俺を召喚した経緯を話し始めた。
要約すると……
次期ソウェルは世襲ではなく、有力家いくつかの中から最も適した者が継ぐ。
現在フレデリカは最有力候補。
但し、ソウェルになる為には誰にでも誇れる『実績』を作らなくてはならない。
加えて言えば、実績は他の者の助けを借りずに単独でやり抜かねばならぬとも。
なのでつい聞いてしまう。
「ソウェルの後継者候補が単独で実績を? なのに、俺が手助けしても構わないのですか?」
「はい、召喚した存在は、候補者本人と同等とみなすので、全く問題ありません」
エルネスティは笑顔で答える。
ようは、召喚魔法も本人の実力だから、
呼ばれた俺を使いこなすのも実力の内というわけ。
成る程、納得。
ここで俺がアドバイス。
「もし、やらねばならぬ事があるのなら、急いだ方が宜しいと思います。俺は、期間限定ですから」
「「「え!?」」」
俺の言葉を聞き、驚く3人。
良く話を聞けば、今日はゆっくり休んで貰い、
翌日、晩餐会っぽい歓迎会を執り行おうと考えていたらしい。
いやいや、そんなに悠長な事では駄目だろう。
時間の流れは違うだろうが、俺が見ている夢はいずれ覚める。
で、あれば、俺はその時点で元の世界へ引き戻されるに違いないから。
「多分ですが、マトレーナ様が与えてくれた時間は限られています。俺はいずれ、元の世界へ戻る事になるでしょうから。なので、そちらの準備が出来たら、すぐ実行に移したい」
「わ、分かりました……では……フレデリカ、時間も時間だ。……お前の部屋へ、ケン様をご案内し、もろもろ詳細を、ご説明するように」
「は、はい、お祖父様……」
祖父の指示に対して、何故か噛むフレデリカ。
む、何故……だろう?
結構、慌てている。
もしや、何か、隠しているのか?
こうして俺は、とりあえずフレデリカの部屋へ行く事になったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
案内されたフレデリカの部屋は、深窓のお嬢様らしくて、えらく豪華。
何と!
5間続きの凄い部屋……置いてある調度品も高価そうなモノばかり。
そして、俺が部屋へ入ると、フレデリカが廊下に面した扉に、
「がちゃり」と鍵をかける。
「え? どうして鍵をかけるの?」
「べべべ、別に、た、他意はありません。じゃ、邪魔者が入らないようにと……」
ふうん、邪魔者……ねぇ。
「こちらへ……どうぞ」
フレデリカに案内された部屋は……何と、寝室。
ちなみにシーツは、女子オーラ全開の『どピンク』
綺麗な色だから、俺、ピンクは大好きだけど。
「どうして? 寝室?」
「…………」
俺の問いに対し、フレデリカは何故か、答えなかった。
ちらっと見たが、フレデリカの部屋には、祖父の書斎によく似た書斎もある。
そこには応接も……
説明は、そこで出来る筈だ。
なのに、どうして???
「ケケケ、ケン様!」
「何?」
「そそそ、そこへ座って、いいい、頂け、ままま、ますかっ!」
盛大に噛んだ上、大きな声で叫ぶフレデリカ。
それも座れと指示されたのはベッドの上。
やっぱり変だ……何か、ある。
「…………」
無言のまま、フレデリカは着ていた革鎧を脱ぐ。
そして……あっという間に、あられもない肌着姿に!
「おいおいおいっ!」
「ゆゆゆ、勇者ケン様! わわわ、私を抱いてくださいましっ!」
真っ赤になって立ち尽くす肌着姿のフレデリカ。
そんな彼女を、俺は呆然として見つめていたのである。
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