第193話「新たな家族」
「ばらばら」と出て来た冒険者達は、上空を見上げ、何事か叫んでいた。
大空を舞う、5体の巨大なグリフォンへ向かって。
ちなみにバルナベ達の監視は、索敵と付随した念話で奴らの心を捉え、
俺がず~っと、行っていた。
だから、奴らの位置、及び心に連動した会話と動きは筒抜け。
『お! 出て来た、出て来た。ケン様、冒険者どもが出て来ましたぜ』
と、ジャン。
『うむ、欲の皮が、突っ張った奴らだ』
と、ケルベロス。
『…………』
と、相変わらず無言のベイヤール。
そして、フィオナが面白そうに笑う。
『ああ、冒険者達ったら、驚いて、こっちを指差しているよ、うふふ』
『じゃあ、そろそろ行くか』
俺は念話と目で合図をした。
大空を悠々と舞う5体の巨大で美しいグリフォン……
実は!
そのうち4体は、俺と従士達が魔法で変化した姿なのだ。
グリフォンズは編隊を組み、同じ方向へと飛翔し始める。
そう! 俺達の取った作戦とは……
まずは、グリフォンがこのボヌール村近辺の地を去る事を印象付ける事。
つまり、グリフォンが居なくなる既成事実を作るって事だ。
どうせなら、大勢で派手にやろうと言った俺の提案を、
従士達は勿論だが、フィオナも面白がった。
そして、俺達の目指す場所は魔境。
この世界のず~っとず~っと北方……
アールヴ(エルフ)とドヴェルグ(ドワーフ)の国の、遥かなる先には、
人間が、殆ど居ない不毛の大地がある。
そこは魔族、魔物、魔獣の国であり、とてつもないお宝も眠るという伝説の地だ。
実は、ここにフィオナ達、グリフォンの一族が隠した財宝もあるらしい。
そもそも魔境へは、毎年多くの冒険者が挑み、
命を落としたり、行方不明となっている。
本当に危険極まりない場所なのだが、
成り上がる為に、人は死地となりかねない場所へ赴く。
俺達はその魔境へ、もうひとつ『お宝伝説』を加える事にしたのだ。
グリフォン5体の群れに扮した俺達は、王都上空経由で派手に飛び回り、
人々の注意を充分に引き付けた後、最後に魔境へ向かうという寸法。
魔境上空に到達したら、一旦降下。
人目のつかない場所で、俺は人間に、従士達は元の姿に、
そしてフィオナも、何かの姿へ擬態。
更には、俺が転移魔法を使い、全員でボヌール村へ帰る。
眼下のクラン挑戦者のように、
莫大な価値を持つグリフォンの財宝に、取り憑かれた冒険者達は、
必死に俺達の行方を追うだろう。
何とか魔境に辿り着き、長く厳しい探索の末、
冒険者達はグリフォンのお宝や他の財宝を見つけるかもしれない。
莫大なお宝は、己の命を懸けた代償として、
名誉と共に当然受け取って良いものだ。
だが、そのように幸運な者は全体のほんのひと握りに過ぎず、
殆どの冒険者は、志半ばで命を落とす。
でも、誰にも文句は言ってはならない。
誰にも責任を問うてもいけない。
冒険の最中に死んでも、それは完全な自己責任だからだ。
自ら危険を冒すのだ。
自分以外、誰にも責任はない。
俺達は大空を飛びながら念話で話す。
『で、フィオナはどうする? まだ時間はたっぷりあるから、魔境に行くまでに、考えれば構わないけれど……』
どうする? とはフィオナの『行く末』の事。
事前に俺は、選択肢をいくつか出した。
その中に、ボヌール村で俺達としばらく暮らさないか、
という提案もしたのである。
身分はケルベロス、ジャン、ベイヤールに次ぐ俺の従士。
仮初の姿は、例えばベイヤールのように地味な一般馬で。
平凡な田舎のボヌール村で、刺激も無く、ひっそり目立たず静かに、
しかし平和で穏やかに、俺達ユウキ家のファミリーと、楽しく生きて行く事を。
『でも……良いのかな?』
『何がさ?』
『いえ、迷惑じゃないの? 私みたいな……その』
どうやら、フィオナは迷っているようだ。
グリフォンのような強大な魔獣が普通の動物に変身し、人間と暮らす。
それが、果たして許されるのか、と。
だが、俺は即座に答えを返す。
『全然大丈夫! ノープロブレムさ! だって俺の従士達を見てくれよ』
そう! 俺の従士は、冥界の魔獣に、妖精猫、そして悪魔の元騎乗馬だ。
で、グリフォンに何か問題があるとでも?
フィオナは優しくて思いやりがある。
素直で可愛い女子だし、一緒に暮らすのは楽勝だろう。
ここで、ケルベロスがフォローしてくれた。
それが、ジャンをダシに使って。
『全然大丈夫だ! 品のない、性格が最悪な、この駄猫でさえ、何とかやっている』
『はあ? あんだとぉ!』
いじるケルベロスに、いじられるジャン。
掴みはOK!
喧嘩ではなく、お約束の掛け合いだ。
『あはははは!』
朗らかに笑うフィオナ。
彼女の気持ちが解れて行くのを感じる。
ここで寡黙なベイヤールが、とうとうフィオナへ意思を伝えて来た。
ベイヤールの言葉を聞いた、フィオナが驚く。
『え!? 私が美い女!?』
ベイヤールは黙って頷く。
そして更に意思を伝えたのだ。
はっきりと、きっぱりと!
『え!? 仲間になれば、俺はお前をずっと……守ろう……って、あ、ありがとう! ベイヤール!』
今のフィオナのセリフで彼女の返事は分かった。
ああ、唐突だが、何か素敵な幸せの予感がする。
逞しい鹿毛の妖馬と、純白の美しいグリフォンって……
結構、お似合いかもしれない。
今回の、俺と従士達の小さな旅は、これで終わり……
また機会があれば、ぜひぜひやりたい。
こんなにたくさん、良い思い出が作れた。
そして素敵な仲間も増えたのだから。
『さあ、皆! 行くぞ、魔境へ!』
『『『『応!』』』』
俺の呼び掛けに対し、全員が元気良く返事をする。
フィオナも、今までずっと俺達と一緒に居たかのように、
返事のタイミングがバッチリ合っていた。
またボヌール村に新たな仲間、否! 新たな家族が増える事になる。
これって、「喜ばしい」のひと言。
新たな出会いって、本当に素晴らしいな。
今日も天気は快晴。
雲ひとつない。
まるで俺達の前途を祝しているかのように気持ちが良い。
皆の表情も天気同様、晴々として、とっても嬉しそうだ。
5体のグリフォンは広大な青空を、遥か北へ向け、
素晴らしい速度で突き進んで行った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『俺と従士達の小さな旅編』はこれで終了です。
ご愛読ありがとうございました。
次話からは新章が始まります。
もっともっと続きが読みたいぞ! とお感じになりましたら、
作者と作品へ、更なる応援をお願い致します。
この作品が……もっと多くの方にお読み頂けるよう、応援して下さい。
皆様のご愛読と応援が、作品継続への力にもなります。
いつもご愛読頂きありがとうございます。
※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。
宜しければ、下方にあるブックマーク及び、
☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。
東導号の各作品を宜しくお願い致します。
⛤『魔法女子学園の助っ人教師』
◎小説書籍版既刊第1巻~8巻大好評発売中!
《紙版、電子版、ご注意!第8巻のみ電子書籍専売です》
(ホビージャパン様HJノベルス)
※第1巻から8巻の一気読みはいかがでしょうか。
◎コミカライズ版コミックス
(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)
既刊第1巻~5巻大好評発売中!
《紙版、電子版》
何卒宜しくお願い致します。
コミックスの第1巻、第3巻、第4巻は重版しました!
皆様のおかげです。ありがとうございます。
今後とも宜しくお願い致します。
また「Gファンタジー」公式HP内には特設サイトもあります。
コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。
WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。
マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が購読可能です。
お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。
最後に、
⛤『外れスキルの屑と言われ追放された最底辺の俺が大逆襲のリスタート! 最強賢者への道を歩み出す!「頼む、戻ってくれ」と言われても、もう遅い!』《連載中》
⛤『冒険者クラン新人選択希望会議でドラフト1位指名された無名最底辺の俺が、最強への道を歩みだす話!』《完結済み》
⛤『頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのあ
る王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話』《完結》
⛤『異世界ゲームへモブ転生! 俺の中身が、育てあげた主人公の初期設定だった件!』《完結》
も何卒宜しくお願い致します。




