第192話「男達の目覚め」
※このパートは、冒険者クランの視点となります。
「う~……………」
「あうううう………」
「くうう……………」
と、ある洞穴の中で倒れていた10人の男達が目を覚ました。
周囲は明かりが全く無く、真っ暗闇だ。
「な! な、何も見えないぞ、お~い! 明かりを点けろぉ!」
闇に響いた大声は、
冒険者クラン挑戦者リーダーのバルナベである。
命令された魔法使いがひと言、ふた言詠唱すると空間がほんのりと明るくなった。
魔法使いの手元に淡い光が立ち昇っている。
迷宮探索用に使う、照明魔法を行使。
灯火用の魔導光球を生成したらしい。
その場に居る面々を見渡したバルナベ。
大きく頷く。
「うん、全員無事だな」
「何とか……」
「どうやら、怪我は、無いみたいですぜ」
「まだ眠いっす……」
「一体ここは、どこなんだ?」
全員が、お互いの無事を確認する。
幸い、怪我もしていないようだ。
辺りを再び見回して、言葉を発したのはサブリーダーのティボー。
「ですが、リーダー、俺達はどうして、ここに?」
まあ、尤もな疑問である。
男達は記憶を呼び覚まそうとした。
……確かクランは、王都で情報を得た。
王都の凄腕と噂される情報屋へ、ばか高い金を払って。
万全の準備をして、はるばる長い旅をして、
南に位置するオベール騎士爵領内の森へ来た筈なのだ。
王都の、とある情報屋から教えられた洞穴を、一生懸命探している途中だった……気がする。
眉間に皺を寄せたバルナベが、腕組みをして唸る。
「なぁ、ティボー……俺達って……確か、この辺りの森を探索していたよな……」
「ああ、確か、そうですよ」
すかさず、答えるティボー。
信頼するサブリーダーの言葉を聞いた、
クランリーダー、バルナベの記憶が徐々に蘇る。
「でも、ここはどこで……一体、どうして?」
考え込むティボーであったが、何か気付いたのか、ハッとし、
はたと手を叩く。
「……そ、そうだ! 俺達は遂に情報通りに洞穴を見つけた、そして中へ入ったんだぜ、きっとそうだ!」
ティボーは、自分自身に言い聞かせるように言った。
バルナベも記憶が蘇ったらしく、同意する。
「おお、そうだった」
そう、男達の記憶が途中で遮断されている。
何か、人為的な不思議な力が働いていた。
先程まで自分達が、『ある男』と交わしていたやりとりを全く覚えていない。
それどころか擬似の記憶が、新たに植えつけられているのだ。
バルナベが、頭を振りながら言う。
「と、いう事は、ここはグリフォンの洞穴だな。俺達、何かが原因で倒れていたんだろうけど……そういえば、用意していた牝馬はどうした? 毒水は?」
質問を重ねるバルナベに対し、周囲を見回し、ティボーは答える。
「今は……見当たらないですぜ」
「そうか、見当たらないか。馬は逃げたのか、毒水は、所在不明か……それとも……ならば、仕方が無いな」
「うん、全員が無事ですし、今更じたばたしても仕方が無い。仰る通りですよ、バルナベさん」
仕方が無いなどと、普段の彼等なら絶対に言わない。
冒険者が明確な理由も無く、目的を放棄するなどありえない。
グリフォンを狩ると言う目的で、
金と時間をかけ、この辺境の地まで来たのだから尚更だ。
それに牝馬と毒薬は、バルナベ達が強靭なグリフォン狩りをする際に、
最も大事なツールである。
無いのなら、まともに狩りは出来ない。
そんな違和感を微塵も覚えない……
どうやらバルナベ以下、クランメンバー全員の判断力も狂わされているようだ。
何か……
底知れぬ魔法の力に違いなかった。
「このままで居るのは、時間の無駄だ。とりあえず奥へ進み、もっと探索しよう。もしもグリフォンが居て、倒せそうならば、倒して、お宝を奪うぞ」
約1時間後……
クラン挑戦者は洞窟内をくまなく探索したが、
財宝とグリフォンどころか、何も発見することは出来なかった。
探索を終了したクランメンバー達は皆、首を傾げている。
「う~む、おかしいなぁ……」
「あの情報屋は超一流だし、払う金はとんでもなく高額だが、教えてくれるネタは絶対確実だと聞いたのに」
「論より証拠で、実際に俺達も、何度もいい目を見させて貰ってますからね」
しかしバルナベはさすがにリーダーだ。
引き際を心得ていた。
一見、がさつに見える彼だが、「時は金なり」を地で行く性格でもあった。
「仕方が無い。こんな何も無い洞穴に居ても、時間の無駄だ……さっさと出よう」
バルナベが手を挙げ、撤退の指示を出した。
「そうですね。じゃあ皆、撤収だ」
ティボーも同意、
クラン挑戦者は洞穴から出る事にしたのだ。
リーダー達が先頭に立ち、クランメンバーも重い足を引き摺るように歩き出す。
先頭のバルナベが、悔しそうに吐き捨てる。
「畜生! もしかしたらグリフォンの奴め。お宝を持って、ここから移動したかもしれん……ならば早く外へ出よう」
「ですね! 附近にある別の洞穴って可能性もありますし、急いで手掛かりを探しましょう」
ティボーも顔をしかめて頷いた。
前向きなリーダー格ふたりに対して、他のクランメンバーは不機嫌そのものだ。
「全く! とんだ骨折り損だぜ」
「面白くねぇ!」
「糞っ!」
「最悪!」
しばし歩くと前方から明るい光が射して来た。
まもなく出口であろう。
と、その時。
きえええええ~ん!
けあああああ~ん!
きえおおおおお!
外界で鋭い咆哮が轟いた。
バルナベとティボーが驚いて駆け出し、クランメンバーも続く。
外に出た彼等が見たのは、遥かに高い上空を悠々と舞う、
巨大な5体のグリフォンだったのである。
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