第191話「俺に任せろ!」
グリフォンの財宝…
魅惑的な響きが籠められた言葉である。
冒険者にとっては堪らない言葉だ。
金銀宝石は勿論の事、
レアなユニークアイテムもあるかもしれない。
もしも得られれば、大が付く成功者となれるのだから。
だけど、俺には響かない。
何故って、必要が無いもの。
そもそもボヌール村での質素な生活に、余分な金はかからない。
ユウキ家の嫁ズは皆働き者で、主な収入は農作業と狩猟、
そして大空屋の売り上げ。
これで生活費は余裕で賄える。
俺が自由に使える小遣いは、以前ドワーフから貰った金が充分残っているし、
相変わらず彼らとは、深い友好関係があり、
これからも魔物の討伐等々でガンガン稼げる。
そうそう! 隠された凄いお宝ゲットよりも、
村の平和が保たれ、家族全員で幸せに暮らす事が一番。
魔獣ケルベロスも俺と同じ。
彼がした質問の意味は、宝を欲する興味からではない。
なので俺はフォローする。
『いや、ケルベロスは単に尋ねただけさ。ここにあれば、財宝目当てで、再び人間が来る。そうなると、厄介ごとが起こるかもしれないから。ちなみに俺も、グリフォンの財宝には、全然興味が無い』
『え? 財宝に興味が無い……の!?』
『ああ、正直、無い。何故なら俺は、普段金を使わない。使う機会があまり無いし、そもそも、使う金は自分自身で稼ぐから』
俺のリアクションに、フィオナはびっくりしたようで、黙り込んでいる。
『…………』
『ちなみに大金はあるぞ。俺の金ではなく、嫁の財産だけどさ。とある理由があって、俺が預かっているだけなんだ』
そう、グレースこと元伯爵家貴族令嬢ヴァネッサの財産、
金貨数千枚を俺は預かっている。
ヴァネッサを騙した悪徳商人から色をつけて取り戻した金であり、
もしも俺と結婚せず王都に戻った場合、彼女へ生活費として渡すはずだった金だ。
ただ俺は、その金を、いずれヴァネッサに記憶を戻らせた時に、
渡そうと考えていた。
もしヴァネッサが、記憶を戻す事を望まなければ、
彼女に了解を貰い、家族の為、村の為にこっそり使おうとも思っている。
『人間は、分相応が良い。普通に生活して行ければ良いんだ。個人的な考えだが、俺はそう思う。だからグリフォンの財宝にも興味がないんだよ』
『ふ~ん……珍しいね、ケンは』
フィオナは鼻を鳴らす、そして溜息を吐く。
『でも……大抵の人間は宝を欲しがるよね?』
『まあな、確かにそうだ。俺は変わっているかもな』
俺が自虐的に言えば、フィオナは「ふっ」と笑い、
『実は……一族の財宝はここには無く、ある場所に隠してある。けれど人間は知らない、私が手元に抱え込むと思い込んでいる』
『まあ、そう思うだろうな』
『……そうなると、ケンの言う通り、また財宝目当ての人間が来る、私は自衛の為に彼等を殺さなくてはいけない……下手をすると、村も巻き込んで、ケンに迷惑をかけるわね。いずれ、私を追う竜も来れば、尚更だわ』
『ああ、そうだな……』
確かに人間だけでなく、竜がフィオナを追って来たら、ひと騒動起こすだろう。
ボヌール村も、巻き込まれる可能性がある。
いくら俺や従士達が強くても、竜が大群で来たら、
ボヌール村も、全くの無傷では済まない。
そう考えると、フィオナの答えは決まったようだ。
『……ケン、私、ここを出て行く』
軽く息を吐いてから、フィオナは寂しそうに言った。
『でも、フィオナ。出て行くと言っても、お前、身体が傷ついていて、満足に飛べないのだろう?』
『ふふ、分かる? でも魔法も多少使えるし、何とかなるわ』
やっぱり、この子はいい子だ。
俺達に迷惑をかけたくないのだろう。
そして……本音も話してくれた。
いずれ傷が癒えれば、フィオナは目立たないよう、そっと旅立つ。
そして、どこかに居る仲間、別のグリフォン一族を探すのだろう。
だが財宝を巡って、追跡する竜との果てしなき戦いは再開される。
フィオナも、新たな仲間と共に戦わざるをえない。
そんな暗い未来が見えている、フィオナの表情は冴えなかった。
俺には分かる……
仲間を失う悲しみを味わったフィオナは、もう二度と戦いたくないのだと。
そして、フィオナはグリフォンなのに財宝には執着が無くなった。
何故なら、その執着の為、彼女の一族は婚約者を始めとして、全員が死んだ。
哀れなフィオナは、たったひとりぼっちになってしまったのだから。
ここで俺は、温めていたアイディアを明かそうと思った。
『フィオナ、俺に考えがある、良かったら、任せてくれないか?』
『え? 考え?』
『ああ、こうしたらどうだろう?』
俺は自分のプランを詳しく説明した。
『えええっ!? 出来るの? そんな事!』
フィオナは驚いた。
信じられないという表情をしている。
しかし、従士達の反応は違う。
『ふむ、大丈夫だ、ケン様に任せろ』
『ああ、そうだな! いつもこうやって、皆を幸せにしてくれるんだ、ケン様は!』
『…………』
ケルベロスとジャンが誇らしげに言い切る。
ベイヤールは相変わらず黙っていたが、同意の意思を示していた。
『という事で、まずはフィオナの身体を治そう』
『え?』
俺はフィオナへ回復魔法を掛けてやる事にした。
治癒、回復、全快、慈悲、奇跡。
俺の使う回復魔法は軽傷を治す『治癒』から、
身体の欠損さえ完全復元する『奇跡』まで多岐に渡る。
相手の怪我の度合いで使い分けるのだ。
最終的に発動可能なのは、究極ともいえる死者蘇生が可能な『復活』まで。
しかし、命さえ自由に出来るなんて神様の領域だから、
俺は余程の事がなければ使わない。
フィオナの怪我は結構酷いが、幸い、致命的なものではない。
見た所……全快の魔法で充分だ。
早速、俺は魔法を発動した。
洞穴内が、まばゆく温かい光で満ちて行く。
『あ、ああああ……ず~っと続いていた翼の痛みが消えた! 何て! 身体が軽いのっ!』
魔法の威力に驚き、そして喜ぶフィオナの声が、
俺達の心に大きく響いていたのである。
いつもご愛読頂きありがとうございます。
※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。
宜しければ、下方にあるブックマーク及び、
☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。
東導号の各作品を宜しくお願い致します。
⛤『魔法女子学園の助っ人教師』
◎小説書籍版既刊第1巻~8巻大好評発売中!
《紙版、電子版、ご注意!第8巻のみ電子書籍専売です》
(ホビージャパン様HJノベルス)
※第1巻から8巻の一気読みはいかがでしょうか。
◎コミカライズ版コミックス
(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)
既刊第1巻~5巻大好評発売中!
《紙版、電子版》
何卒宜しくお願い致します。
コミックスの第1巻、第3巻、第4巻は重版しました!
皆様のおかげです。ありがとうございます。
今後とも宜しくお願い致します。
また「Gファンタジー」公式HP内には特設サイトもあります。
コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。
WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。
マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が購読可能です。
お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。
最後に、
⛤『外れスキルの屑と言われ追放された最底辺の俺が大逆襲のリスタート! 最強賢者への道を歩み出す!「頼む、戻ってくれ」と言われても、もう遅い!』《連載中》
⛤『冒険者クラン新人選択希望会議でドラフト1位指名された無名最底辺の俺が、最強への道を歩みだす話!』《完結済み》
⛤『頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのあ
る王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話』《完結》
⛤『異世界ゲームへモブ転生! 俺の中身が、育てあげた主人公の初期設定だった件!』《完結》
も何卒宜しくお願い致します。




