第186話「冒険者の野望」
「さあさあさあ!」
俺は、西の森の中で身を隠したまま、
クラン挑戦者のリーダーに迫っていた。
今の、この状況が、不法侵入にあたる行為になりかねない事。
それゆえ、この地へ、来訪した理由一切を明かすようにと。
「うううう……」
しかし、リーダーの髭男は口ごもっていた。
躊躇し、喋るのを躊躇っている。
中々、話す決心がつかないようだ。
見かねたサブリーダーが声を掛ける。
「バルナベさん……」
ほう……
バルナベっていうのか、この髭クランリーダーは。
面倒だから、名前なんて、どうでも良いと思っていたけれど。
このバルナベ……
スペックを見たら、『そこそこ』だけど、さほど強いってわけでもない。
油断さえしなければ良い。
それより吐け。
早く、ここへ来た理由を吐け! さっさと吐いてしまうんだ!
かつて俺は、この森へ進撃して来た魔王軍幹部バルカンへ禁呪を使った。
その最終手段を使えば、心の中は勿論、魂の底まで読み取れる。
しかし、俺がレベル99魔人である事をひけらかす必要はない。
まあ、とりあえず普通に、ディベート的会話で自白させるのが得策。
それでも黙秘するのなら、ノーマルな自白の魔法を行使すればOKだろう。
黙ってしまったバルナベを、俺は容赦なく追い立てる。
「バルナベさんとやら、踏ん切りがつかないようなら、俺はもう行くぜ……エモシオンの町へ行く」
「な!? エモシオンの町だと? ま、まさか」
バルナベは息をのんだ。
俺が何をするか、想像したようだ。
「ああ、そのまさかだ。チクるんだよ、クラン挑戦者とかいう、お前ら冒険者の事をな」
「な!? 何ぃ! チクるだとお!?」
「ふふふ、そうさ! 不法侵入者のお前らをチクれば、俺は結構な金を貰えると思う。領主のオベール様は、すぐに追っ手を差し向けるだろう」
「くうう、追っ手だとお!」
「ああ、そうさ! 俺は追手の衛兵達と同行して、お前らクラン全員を捕まえる。チクった褒美の金と合わせて、結構な報奨金が出るだろうぜ。お前達のお陰で、俺は左ウチワになる」
俺の口上を聞いて、とうとう頭に来たのだろう。
クランメンバーの戦士らしいひとりが、憎々しげに言う。
「なあ、バルナベさん、こんな辺鄙な土地の田舎領主なんて関係ありませんぜ! こんな奴の言う事なんか、無視しましょう!」
ほう、領主を無視だと!?
このプリムヴェール王国は、王様以下貴族に絶対的な権力を持たせ、
逆らう者には、えらく厳しいと聞いている。
それを知らないのだろうか?
何という、愚かで馬鹿な奴だ、この戦士は。
俺がそう感じた通り、さすがにバルナベも呆れたようである。
「馬鹿野郎! そんな事をしたら、俺達クランは、この王国中のお尋ね者だ!」
きっぱり言い切るバルナベ。
対して、驚く戦士。
「え!? お、お尋ね者!?」
「ああ、そうだ! のこのこ王都へ行ったら捕まって、中央広場の大勢の見物人の前で斬首されるか、吊るされる! 反逆罪と逃亡罪の合わせ技で、死刑になりかねないぞ!」
死刑!?
とんでもない刑罰に、更に驚いた戦士が目を丸くする。
「う、うおっ!?」
叫んで言葉が止まった戦士。
俺は、ここぞと畳み掛ける。
「おお、さすがはリーダー。この王国の法律を、良く分かっているじゃないか……さあ、どうだ?」
「く、糞っ! わ、分かった、話す!」
「よし! そうこなくちゃ!」
おお、遂に話す気になったか。
しかしバルナベは唇を噛み締めている。
相当悔しそうだ。
まあ、俺のやり方は汚いから分かるけどさ。
「……ぐうう……俺達クラン挑戦者は、北から王都経由でこの地へ来た……俺はバルナベ、ランクBの冒険者だ」
「ふうん、あんた、ランクBか……」
俺は、この異世界の冒険者ギルドの事は詳しくは知らない。
しかしランクBならば、多分、
上級冒険者の範疇と言われるランカーであろう。
そこそこ、名の通った冒険者だと思われる。
「分かった、それで目的は?」
「……俺達は怪物を倒し、お宝を頂戴する」
「む、怪物を倒して……お宝を?」
「そうだ! 俺達のターゲットは大物さ! 竜やグリフォンなんだ」
竜やグリフォン?
そうか! ……成る程!
読めて来たぞ。
俺の中二病……竜やグリフォンは、大量の貴金属や宝石、
つまり『お宝』を溜め込む癖がある。
こいつらは怪物を殺し、部位と共にお宝を奪う専門の冒険者なんだ。
という事は、相当強いレベル。
ただ、バルナベのスペックを見たら、そうは思えないけどさ。
もしくは、竜やグリフォンの隙を見つけ、
お宝をかすめ取る『盗人冒険者』って事だ。
そして、こいつら、何も根拠が無かったら、
遥か辺境の、この地なんかへは来ない。
何か、確実な情報があって、来訪したに違いない。
と、思ったら案の定である。
「王都の売れっ子情報屋から、高額で買った確実な情報なんだ。この森の洞窟に、魔獣グリフォンが住みついたってな」
へえ、王都の売れっ子情報屋?
何で、そんな凄い情報を得られるんだ?
こんな辺境の地の森にグリフォンなんて……
ええっと……
俺は記憶を呼び覚ます。
グリフォンは、ファンタジー世界では有名な存在だ。
鷲の上半身と翼、獅子の下半身を持つ魔物であり、
知識と強さを示す象徴として貴族に人気がある。
余談だが、オベール家の紋章もグリフォンなのである。
でもグリフォンは、ドラゴンに勝るとも劣らない、結構な強者な筈。
対して、やはりというか、このクランは……
俺が見ても、リーダー以下そんなに強そうではない。
魔法使いや僧侶が居てバランスは良いだろうが、
倒すとか、一体、どんな手を使うんだろう。
「俺達はな、グリフォンを倒し、奴の部位とお宝の両方を手に入れる! その為に、情報屋へ高い金を払った! 絶対に成し遂げるんだ!」
バルナベは熱く語っていた。
話すうち、自分の言葉に酔ったらしい。
でもさ、あんた。
自分達の能力を鑑み、良く考えてみなさいって。
だから、俺は言ってやる。
「ほう、グリフォンを倒すか……ふ~ん、恰好良いね。でもさ。この領地でそんな事をしたら違法行為になるよ」
「ああ? 違法行為だと!? 何故だ!」
俺が悪戯っぽく言うと、陶酔が冷め、バルナベはムキになった。
何だよ、さっき言っただろう?
人の話を聞いていないのか?
「おいおい、俺が、さっきも言っただろう?」
「???」
「お前さ、人の話を良く聞けって!」
「な、なにぃ!」
「お前らが倒したゴブの話をしただろう? この領地に居るものは、例え魔物でも、オベール様の所有物だからさ」
「と、いうことは?」
「そうだ! もし、グリフォンを倒したとしても、違法行為に変わりはない。所詮、お前らはお尋ね者って事だ」
「く、くくく……くそ!」
「お、おい、バルナベさん……ちょっと話が……」
ここでクランのサブリーダーらしき男が手招きをした。
ふたりで何か内緒話をするらしい。
一方、俺は「にやり」と笑い、
隠れたままバルナベ達を見守っていたのである。
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