第185話「容赦ない追及」
オベール様の領地へ、入り込み、
ゴブどもを倒した冒険者達、一体、どんな奴らなのか?
確認する為、いかにアプローチするのか?
一計を案じた俺は、いきなり大声をあげる。
「お~い、あんたら!」
「な!? だ、誰だ!?」
「な、何者だ!」
「な、名乗れえ!」
突然、そして、どこからともなく男の声がする。
なので、冒険者達は戸惑って「きょろきょろ」している。
皆さんは、木霊という現象をご存知だろう。
ヤッホーとか、高い山から声を出すと、反響してあちこちから聞こえるアレ。
そんなスキルを、俺も習得している。
そう、声のする場所に行っても、俺は居ないのだ。
冒険者達は、しばしの間、声がした方向を探し回った。
だけど、俺も従士達も見つからない。
見つかるはずがなかった。
声が聞こえた場所に、最初から俺達は居なかったから。
探し疲れ、肩をすくめて戻る冒険者達。
何なんだ! ふざけるな!
と、冒険者全員が焦れ、いらついていた。
しかし、さすがにリーダーらしき奴は、すぐ落ち着きを取り戻した。
いつもながらと言うのか、お約束の、髭男なのが笑える。
そのリーダーが、俺に負けないくらい大声をあげる。
「おい! そこに居る奴! 手を挙げて出て来い! さもないと! 矢と魔法をお見舞いするぜ!」
おお、やっぱりか。
予想通り脅して来た。
そんな奴には、当然、俺も従わない。
返事だけは、してやる事にした。
「断わる! 無抵抗で出て行って、いきなりやられるのは嫌だからな」
「何言ってる! そんな事はしないぞ! クラン挑戦者は卑怯者の集団じゃない」
髭リーダーは、そう言っているが、
そんな言葉を、鵜呑みにするほど俺は単純ではない。
ここで俺は、奴等に『弱味』を作らせる事にする。
「いやいや、全然、信用出来ないな。そもそも、あんた方は違法行為をしているし」
違反だとか、規則に背いているとか、そんな話をすれば、
相手が、トンデモなアタオカではない限り結構気にする。
注意して、従うかどうかは別にして、一旦、聞く耳は持ってくれるもの。
どの時代も、どこの国の人間でも一緒だ。
何でもありの原始時代ではない限り、一応は法律が存在するからである。
俺の指摘を聞き、案の定、リーダーは動揺する。
「な!? 俺達が違法行為だと? 馬鹿な!」
怪訝そうなリーダーに、俺は補足説明をしてやる。
「おいおい、知らないのか? ここはオベール騎士爵家の領地内だ。許可も無しに狩猟する事は禁止だぞ」
俺に狩猟と指摘され、リーダーは更に首を傾げる。
「はあ? 狩猟? 狩猟などしていないぞ」
「いや、お前達はさっき、ゴブリンを倒しただろう?」
「何? ゴブリンだと? あんな魔物、正当防衛だ。不可抗力の戦闘行為だ。やらなければ、俺達が喰われてしまうじゃねぇかよ!」
確かに、無抵抗では喰われるだろう。
戦わなければ撃退出来ない。
それも正しい。
しかし、それはケースバイケースだ。
なので、俺は更に言う。
「ああ、一応は理解出来るが、それは街道を通行している場合だ。このような森では通用しない」
「え!?」
「そもそも! お前ら、何故、こんな森の奥に居るんだ?」
何故、この冒険者クランがお宝もないような森へ踏み入ったのか?
ゴブなんか狩っても大した金にはならないから、
俺みたいにオーガでも倒し、皮でも売るつもりなのか。
不自然さを指摘すると、リーダーは苦し紛れに叫ぶ。
「み、道に迷ったんだ!」
「ははは! ありえないな……王都へ通じる街道を真っ直ぐに歩いて、何故、こんな森の奥深くに来る?」
あまりにもお粗末な言い訳に、俺は苦笑した。
ここでリーダーが反撃する。
「……そ、そういうお前はどうなんだ」
おお、質問に質問を返して来たか。
苦し紛れに突っ込む、というところだろう。
でも俺は、そのような場合の対策も立ててある。
無記名の書類を持っているのだ。
「あいにくだな、俺はオベール様から許可を貰って狩猟をしている。フリーの冒険者さ」
「な、何!?」
「動物は勿論の事、魔物を狩っても、OKなんだ。ちゃんと許可証も持っている」
さあ、どうだ。
これで追いつめたぞ。
「くくく! 畜生!」
「どうだ? いい加減、白状しろ! 俺がこのまま、エモシオンの衛兵に通報したら、お前達は不法侵入等々で、即座に牢獄行きだ」
「……わ、分かった! 相談したいから俺達の前に姿を現してくれ! わ、悪いようにはしない」
はあ? 悪いようにはしない?
おいおい、何言ってる?
ふざけるなよ。
その台詞ほど、曖昧で怪しいモノはない。
少なくとも、俺の周囲でそう言われて、良くして貰った者は皆無。
見えない悪意を持って、丸め込もうとする気配がぷんぷんだ。
いや、丸め込むばかりじゃない。
今回の場合、俺達が殺されて、死体をどこかに隠されたらそれで終わり。
「死人に口なし」という立派な諺があるじゃないか。
まあ、もし襲い掛かって来ても、こんな奴等は返り討ちだけどね。
とりあえず、俺の返事は拒否あるのみ。
「断わる! とりあえずお前達が、ここに居る理由を話して貰おうか、このままの状態でな」
「…………」
リーダーの髭男は黙り込んだ。
すぐに答えないところを見ると、やはり何か人に言えない理由がある。
だから、こんな場所に居る。
だが、奴等が答えるのを、気長に待つほど、俺達は暇じゃない。
俺はきっちり追い込む。
クロージングへ入る。
「おいおい、黙ってちゃ分からないぜ。話すか、牢獄行きか、すぐ選べ」
「ぐぐぐ」
俺の宣告に、リーダーは更に追いつめられる。
悔しそうに、歯噛みをしていた。
よし! ここは攻め時、容赦なく追い立てよう。
「さあさあさあ! どうする? どうするんだよ?」
俺は身を隠したまま、木霊のスキルを使って叫ぶ。
口ごもるリーダーを急かし、真の理由を吐かせようと迫ったのである。
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