第184話「怪しい冒険者達」
翌朝……
俺達は 魔法と視認を駆使し、東の森をくまなく探索した。
だが、村民へ脅威を与えそうな魔物の痕跡は見当たらなかった。
以前は居た、凶暴なオーガの群れも全く見当たらず、ひと安心。
また思い出が甦って来る……
初めて、この森へ来たのはレベッカとの狩人訓練。
あの時は、すんでのところでレベッカがオーガに喰われるところだった。
改めて思う。
レベッカを、助けられて本当に良かったって。
そう、愛するレベッカが生きていてくれて、凄く嬉しい。
俺をいつも癒してくれる、元気な声と爽やかな笑顔は、失われる事はなかった。
そして彼女は次世代へ、かけがえのない命をつなぐ事も出来た。
……今や、俺達にはイーサンという、
元気で可愛い、かつ優秀な息子が居るのだから。
閑話休題。
魔物以外に、危険な存在といえば、人間を餌とする肉食獣の熊や狼くらい。
しかし、いつかのように俺と従士達が森を歩くと、あちらから避けてくれる。
否、はっきり言って、一目散に逃げて行くのだ。
多分、野性的な本能でヤバイと感じるのだろう。
こうなると、森の中で一番の悪役は俺達かもしれなかった。
ボヌール村近辺において、残る探索地は西の森とその周辺である。
西の森は、元々ゴブが数多生息していたが、
何か、魔族を呼び寄せる、特別な理由があるかもしれない。
かつての魔王軍の面々、変態狼男を始めとして、
不死者リッチのバルカンに、悪魔エリゴス、
そして女魔王だったクーガーも現れた領域だから。
但し、東西の森は距離が結構ある。
俺が、今居るのは東の森だから、普通に移動すれば数時間は楽にかかってしまう。
時間が勿体無いし、索敵により、辺りは無人だと分かっている。
誰かに見られる、という心配が無いので、
馬車ごと、俺の転移魔法で移動する事にした。
確か、西の森前の草原には、身を隠せるくらいの小さな雑木林があった。
なので、俺達はそこへ転移する。
周囲をうかがい、誰も居ない事を確かめると、
俺達は雑木林を出て西の森へ向かう。
そう、俺達が、当面の目的とするのはゴブの掃討。
昨日、アーロンビアの商隊を襲っていた奴等だ。
ゴブ=ゴブリンは、魔物の中では弱い部類に入る。
約1mしかない身体は脆弱だし、攻撃方法にも特筆すべきものは無い。
しかし繁殖力が異常に高いので、短期間で容易に個体数を増やし、
集団で獲物を襲う。
つまり、数の論理だ。
まあ、たった数体のゴブなら、どうという事はない。
素手ならともかく、武器さえ携帯していれば、
冒険者ひとりでも何とか対処出来る。
だが、先程の群れのように50、100、それ以上となると、
少人数の常人は、抵抗する術もない。
襲われた被害者は、生きながら、あっさり喰われてしまう。
という事で、ボヌール村の村民を、
以前、リゼットがハーブ採取の際にあったような危険な目に、
あわせるわけにはいかない。
ふるさと勇者である俺は、この地域の治安を守る為、
跋扈するゴブどもを、まめに駆除しなくてはならないのだ。
さて、俺は、雑木林でベイヤールを馬車から外す。
外した馬車は空間魔法で生成した異界へ仕舞い、
身軽になった俺達は西の森へ入る。
……何となく、気配を感じる。
まだまだ遠い反応だから、はっきりとしないが、
この近辺には、まだまだゴブが居そうだ。
村の人達に話を聞くと、俺がこの異世界へ来る前はもっと大量に居たらしいが。
西の森も、東の森同様人影がない。
なので、森の奥へどんどん進む。
東の森だけでなく、こちらの森でも大抵の動物は先に逃げる。
やっぱり俺達は悪役だ(笑い)
そんなこんなで、あっという間に森の奥……
おっ! 約1km先にゴブ数匹の反応がある!
と、思ったらすぐに消えちゃった。
何と! 一緒に人間の気配があったのだ。
む、約10人くらいか。
前にも言ったが、辺境の地の、更に奥まった森、
そして私有地とくれば、人間が居るのは珍しい。
ひとつ、面白い理屈話をしよう。
凶悪な魔物ゴブとはいえ、プリムヴェール王国の法律上、
領主オベール様の所有物となる。
兎や鹿、熊同様オーガもオークも全てだ。
魔物も、狩猟動物扱いとはすごく笑えるのだが。
まあ、結局、何を言いたいのかと言えば。
街道上で通行中に襲われた時は、魔物を撃退するのは正当防衛で止むを得ない。
だけど、こういった森などで、勝手にゴブを狩るのはNG。
オベール様の部下や、ボヌール村の村民など、狩猟を許された者でなければ、
領地内では、魔物を倒す事は『違法行為』という事である。
そもそも、拡大解釈すれば、
こういった森、原野等々に立ち入るのでさえ、不法侵入となるのである。
さてさて!
しばし経ち、ゴブの反応は完全に消滅した。
つまり、人間側がゴブどもを殲滅したということだ。
相手が、どれくらいの力量か、すぐには分からないが、
もう少し接近すれば、はっきりするだろう。
もしも万が一、こいつらに変な目的があったり、
害意を持って向かってくれば、俺も容赦はしない。
ズバリ、ゴブと同じ扱いとなる。
という事で、人間が居たから、俺は仕方なくスキルを使う事にした。
お約束の気配消去と隠身のふたつだ。
ちなみに、俺が使っている、気配消去のスキルはクッカの直伝。
この中世西洋風異世界へ来て、すぐに覚えたスキルだ。
更に今の俺は、自分自身だけではなく、従士達にも発動してやる事が出来る。
加えて姿を消す隠身のスキルも同時発動しているから、
俺達は異世界の忍者と言っても過言ではない。
こんな時、良く使ったのは全身真っ黒の魔王の手下風ファッション。
だが、嫁ズの評判が悪い為、現在は封印中。
さあ、確認だ。
俺達は気配のする方へ近付いて行く。
気配消去のスキルに加え、身体を浮き上がらせる浮上も行使。
そのまま滑空すれば、草を踏み締める音も殆どしなくなる。
……やがて、人間——冒険者達が居るのが見えた。
戦士風、魔法使い風、僧侶風、シーフ職風……様々な奴が居る。
どうやらひとつのクランらしい。
偵察役、盾役、攻撃役、支援役……が、すぐイメージ出来る。
多分、バランスは取れているのだろう。
さあて……どうアプローチするか?
俺は、少し考える。
戦いが終わったばかりで、相手はまだ殺気立っていた。
いきなり声を掛けて、矢を射掛けられたり、魔法をぶっ放されても厄介。
そうなっても、大丈夫なように、俺は『一計』を考え付いたのである。
いつもご愛読頂きありがとうございます。
※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。
宜しければ、下方にあるブックマーク及び、
☆☆☆☆☆による応援をお願い致します。
東導号の各作品を宜しくお願い致します。
⛤『魔法女子学園の助っ人教師』
◎小説書籍版既刊第1巻~8巻大好評発売中!
《紙版、電子版、ご注意!第8巻のみ電子書籍専売です》
(ホビージャパン様HJノベルス)
※第1巻から8巻の一気読みはいかがでしょうか。
◎コミカライズ版コミックス
(スクウェア・エニックス様Gファンタジーコミックス)
既刊第1巻~5巻大好評発売中!
《紙版、電子版》
何卒宜しくお願い致します。
コミックスの第1巻、第3巻、第4巻は重版しました!
皆様のおかげです。ありがとうございます。
今後とも宜しくお願い致します。
また「Gファンタジー」公式HP内には特設サイトもあります。
コミカライズ版第1話の試し読みも出来ます。
WEB版、小説書籍版と共に、存分に『魔法女子』の世界をお楽しみくださいませ。
マンガアプリ「マンガUP!」様でもコミカライズ版が購読可能です。
お持ちのスマホでお気軽に読めますのでいかがでしょう。
最後に、
⛤『外れスキルの屑と言われ追放された最底辺の俺が大逆襲のリスタート! 最強賢者への道を歩み出す!「頼む、戻ってくれ」と言われても、もう遅い!』《連載中》
⛤『冒険者クラン新人選択希望会議でドラフト1位指名された無名最底辺の俺が、最強への道を歩みだす話!』《完結済み》
⛤『頑張ったら報われなきゃ!好条件提示!超ダークサイドな地獄パワハラ商会から、やりがいのあ
る王国職員へスカウトされた、いずれ最強となる賢者のお話』《完結》
⛤『異世界ゲームへモブ転生! 俺の中身が、育てあげた主人公の初期設定だった件!』《完結》
も何卒宜しくお願い致します。




