第178話「変身自慢といつもの喧嘩」
結局、俺の変身魔法の発動は、中々、上手く行った。
何度かは、やり直したが、全員が満足行く風貌になれたからだ。
まあ、変身魔法の練習になったと思えば、構わない。
という事で!
まず俺が、35歳くらい、長身瘦躯の茶短髪、
同色の短いひげをたくわえた、渋いイケオジな風貌の魔法使いに、
次にケルベロスは、狼犬のような風貌は変わらないが、
毛色が更に派手な白銀の猛犬に、
ジャンはといえば、ワイルドな山猫に、
そして最後のベイヤールは、翼のないペガサスのように派手な白馬に……
各自が、思い切り際立つようにした。
ここで皆さんは、疑問に思うだろう。
何故、わざわざ目立つようにしたのかと?
いや、これって実は逆手。
中途半端な雰囲気よりは、却って派手にやった方が、
相手の印象に残り易い。
変身後の姿は、ボヌール村在住のケン・ユウキと仲間達には、
到底結びつかないもの。
ちなみに、俺が着用した衣装は、渋いカーキ色の麻製法衣、
携帯する武器も、らしい魔法杖に、
普段は使っていない、銀製のロングソードにしたのだ。
さてさて!
ここから従士達と念話で話す。
まずは変身後の姿を褒める。
そう、普段のコミュニケーションは重要。
「どうせ言わなくても分かるよね?」みたいなツーカー的な考えは厳禁だ。
『おお、ケルベロス、とても恰好良いじゃないか、渋くて野性味に溢れているぞ』
『ケン様、ありがとうございます!』
輝くような白銀の、灰色狼的な風貌になったケルベロスが「にやり」と笑う。
精悍な魔狼という感じが、凄く格好良い。
このケルベロスに、やたらとライバル心を燃やすのが、
妖精猫のジャンである。
『なあ、ケン様! 俺は? 俺っちはどうっ?』
『ああ、ジャン。お前もワイルドで、優雅な雰囲気が出ているぞ』
ジャンの風貌は、アメリカ産ボブキャット風。
こっちも、お世辞抜きで恰好良いと思う。
ちなみに、妖精猫のジャン自身にも変身能力がある。
なのに、自身で変身しないのは、理由がある。
公平に俺から魔法を掛けて貰い、
同条件で、ライバル?ケルベロスと張り合う為。
つまり、男の見栄と意地って奴だ。
こうなると、ジャンはケルベロスを挑発する。
『あ~はははは! どうだ、ケルベロスめ! 俺は野性味だけじゃなくて、すんばらしい優雅さもあるってよ! 勝ったな!』
しかし、ケルベロスも負けてはいない。
『相変わらず、愚か者だ。お前が、凄いのではなく、ケン様の、魔法が素晴らしいし、凄いのだよ』
『ななな、何だとぉ!』
ケルベロスとジャンは、数年前に、
ゴブとの戦いの際にお互いを分かり合った。
加えて、クーガー侵攻の際にも共に命を懸けて戦った。
だから、それ以降の喧嘩は、はっきり言って『馴れ合い』である、と思う。
俺には、こんな友人が居ないので、少し羨ましい。
嫁ズで、この関係に近いのはクッカとクーガーかも。
姉妹という、触れ込みのふたりは、ボケとツッコミの口喧嘩ばかり。
でも、凄く仲が良いのは、ウチの家族ならば、誰でも知っている。
そして、俺にとってクッカは、愛する嫁でありながら、
苦楽を共にした『戦友』という言葉がピッタリ。
一方のクーガーは、この異世界での付き合いは短いが、
幼馴染クミカの記憶を持った、昔からの親友って感じ。
話を戻せば……『犬と猫の喧嘩』はいつもなら止める所。
だが、今回の旅は時間もたっぷりあるし、敢えて放置しよう。
思いっ切り、ツッコミ合い、ボケ合ってもくれ。
そして、ベイヤールへは違う褒め方で行く。
『悪いな、ベイヤール。ペガサスの姿で、何とか我慢してくれないかな』
ぶひひひひ~ん!
ベイヤールは「仕方がないな」とばかりに嘶く。
とある悪魔の騎乗馬であったベイヤールは、特に誇り高い。
今の姿のベースである、天馬ペガサスよりも自分が数倍、
いや! 数万倍も上だと思っている。
なので、褒めるのは却って、逆効果なのである。
普段の、地味な鹿毛馬姿もそうだが、
本来の姿に劣るが、仕方無く、我慢してくれというのが礼儀だ。
こうして……
しばらく、口喧嘩を楽しんでいた? ケルベロスとジャンであったが、
ひとまず、収まったようなので、俺は声を掛ける。
『よっし、じゃあ街道沿いの雑木林へ転移するぞ』
リスク回避の為、俺達が、ボヌール村から来たと思われてはまずい。
なので、ここから転移魔法で本街道沿いの適当な雑木林へ移る。
休憩していた、どこかの旅人を装い、本街道へ出て北上するのである。
『転移!』
周囲の気配を、再度確認し、俺達は魔法で転移したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
俺と従士達が、馬車ごと転移したのは、
村道と本街道が交差する場所から、北へ数キロ行った先。
街道から、ちょっと奥へ入った、
目立たない雑木林に到着した俺達は、ちょっとだけ休憩。
ケルベロスとジャンは、馬車から飛び降り、地面に寝そべった。
俺は馬車から、ベイヤールを外して、寛がせる。
お湯を沸かした俺は、香りの良い紅茶を飲み、従士達には適温の水を飲ませた。
ジャンが紅茶を飲みたそうにしたが、
猫や犬にはお茶に含まれるカフェインが有害らしいから、絶対に駄目である。
そもそも、熱い飲みものも、猫舌でNGだろうし。
紅茶が、飲めないと知り、残念そうなジャン。
代わりに「早い昼飯にしろ」と、ひどく煩い。
『ケン様、俺、腹が減ったよ~ぉ!』
ここで叱るのもケルベロス。
もう、お約束だ。
『おい! この駄猫! 少しは我慢しろ!』
『あ~っ、また駄猫って言ったな!』
ジャンが悔しそうに言い返したその時。
俺の索敵に、人間の気配が引っかかる。
捕捉したのは、10名の人に8頭の馬。
多分、商隊か、何かだろう。
おお! 何と!
魔物らしい大量の気配もする。
距離はここから1kmほどだ。
「助けてくれぇ!」
「うわあっ!」
遥か彼方から、助けを求める男達の声も聞こえて来た。
この、中世西洋風異世界に来た時もそうだった。
俺は、懐かしく思い出す。
人間離れした、俺の聴覚でリゼットの悲鳴を聞き、彼女の危機察知。
襲われたゴブの群れから、助け出したのだ。
ああ、いかん。
今、まさに、襲われている人達が居るんだった。
助けを求めているのが、むさい男の声だという事もあるのだろう。
ジャンが顔をしかめ、「ちょっち面倒臭いぜ」みたいな表情になる。
だけど俺は、ふるさと勇者。
どこに居ても、助けを求められたら、行かなくてはならない。
という正義感は、正直言って建前。
申し訳ないが、俺は、『世界の全て』を救う勇者では、全くない。
ボヌール村とエモシオン、近辺のみをカバーするローカル勇者。
ここに、ゴブの群れが居るのなら、
回り回って、ボヌール村へ襲って来る可能性がある。
だから『討伐決定』という判断だ。
それに商隊は、ボヌール村へ、恩恵をもたらしてくれる人達かもしれない。
それゆえ、情けは人の為ならず——
レベル99の力をだいぶ抑えて、戦えば宜しい。
俺は、馬車を空間魔法でしまい、従士達と頷き合う。
「行くぞ、皆!」
そして、声のする方向へ、ダッシュで走り出したのである。
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