第177話「のんびり行こうぜ」
嫁ズは全員、俺がチートなレベル99魔人だと知っている。
だけど、何かにつけて、俺の安否をあれこれと心配してくれる。
ああ、本当にありがたい!
優しさ、思い遣りに涙が出る。
そう、愛は勝つ!
全てに勝るんだ!
正妻のリゼットを筆頭に、クッカ、クーガー、レベッカ、ミシェル、クラリス、
ソフィ、そしてグレース。
8人もの嫁を持つ俺は、文句なく「リア充、超大爆発しろ」状態である。
傍から見れば、羨ましい事この上ないだろう。
だから最近、少ないながら、移住した若い男子達は、俺を目標にしていると聞く。
現在のボヌール村も、俺が来た当時と、状況は殆ど変わらない。
未婚の美少女が圧倒的に多くて、若い男子はごく僅か。
一見すると、男にとっては凄い天国状態。
プリムヴェール王国では一夫多妻制が認められているから、
気合いを入れ、一生懸命に頑張れば、俺のように、『幸せ』をゲット出来るのだ。
だが、このような異世界においても、前世と同じというのが微妙。
最近の若い男子は、引っ込み思案な草食系が多いと来ている。
村の女子は、総じて、レベッカ、ミシェルのように逞しい肉食系が多いから、
大人しい男子は、どうしても物足りなく映るらしい。
そもそも! そういう良きメリットには比例して、大いなる責任も伴う。
……というのが、人生のお約束。
ベタな言い方をするのなら、甲斐性だ。
なので、若者の数が増えても、村の成婚率は全く上がらない。
村長代理の俺としては複雑である。
しっかりしろよ、男子!
と、つい、はっぱをかけたくなる。
嫁ズの中で、草食系男子達から注目されているのは、断然クラリスだ。
そしてクッカ、リゼットと続く。
やはり、大人しそうな癒し系清純美少女が、草食系には人気があるらしい。
一見、口答えや喧嘩など、しそうもなく、
夫の言う事には、素直に従うタイプに見えるのであろう。
クッカやリゼットなんて、本当は完全な清純タイプとは違う。
けれど、もしも、そんなこと言ったら、俺を待つのは確実に死。
話を戻すと……
もっと早くボヌール村へ移住して、クラリスが結婚する前に知り合いたかった!
ぜひぜひ! 俺が嫁にしたかった!
という、独身男子の声は圧倒的に多い。
「行ってらっしゃ~い」
「気をつけてね~」
「無理しないでね~」
手を振る嫁ズへ、独身男子達から、相変わらず羨望の眼差しが送られる中……
「おう! 行ってくるぞ!」
嫁ズに応えて返事をする俺の耳に、犬猫の鳴き声が聞えて来る。
ばうばうばう!
にゃごにゃ~ご!
今回、一緒に旅をするのは、3人の従士達。
ケルベロス、ジャン、ベイヤール……
そして、ベイヤール以外のふたりには、愛する大事な家族達が居る。
その彼ら、彼女達が、俺の嫁ズ&子供達同様、見送りに来ていたのだ。
ケルベロスには、奥さんであるレベッカの愛犬ヴェガと子供達。
そして、ジャンには、村の女子猫&子猫達が、総出で見送っている。
ばうばうばうばうばう!
にゃ~ご、にゃごにゃご。
俺に、通常の犬猫達の言葉は分からないが、意思疎通は可能である。
ケルベロスとジャンの家族は、見送りするのは勿論、
俺に対しても、主人の無事を頼んでいるのだ。
俺は、手を振って応えてやると、鳴き声は益々大きくなった。
人間達と犬猫達の見送りを受け、俺達は華々しく、旅立ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
今回、俺はミシェルから、ユウキ家の馬車を借り受けた。
ベイヤールに、ハーネスをつけて曳かせ、
俺が御者台に座り、荷台にケルベロスとジャンが寝そべっている。
ごとごと、 ごとごと、 ごとごと、のんびりと馬車は走る。
今日も、ボヌール村は快晴。
今は亡き、ミシェルのお父さんも大好きだった、
ボヌール村名物たるスカイブルーの大空が広がっている。
雲ひとつ無いくせに、風はそう強くなく爽やか。
絶好の出発日和だ。
まあ、とりあえず、しばらくは、のんびり行くと決めている。
何故ならば、どこへ行くという、具体的なアテも無いから。
村の周囲を丁寧に見回って、
『異常無し!』という結果だけ得られれば良い。
但し、街道へ出るには、村道を少し走らなくてはならない。
そして、この中世西洋風異世界の道路は、俺の前世の物とは全く違う。
今、通っている村道だって、草原に点在する雑木林の中を、
まるで縫って走るような雰囲気。
で、当然 舗装などされていなくて草を踏み締めたようなものであり、
獣道と、ほぼ同じと言って差し支えない。
魔物、賊、獣の敵襲に備え、当然、索敵も最大有効範囲で発動している。
そう、人がたまに通る村道だからといって、100%安全ではない。
村の附近にだって、賊、そして狼も出れば熊も出るのだ。
最近は、魔物同様に、出没数はぐっと減ったが……
そんなこんなで、村道を15分くらい走っただろうか……
うん、そろそろ良い頃合だろう。
え? 何が良い頃合かって?
周囲に他人や敵の気配が無い。
なので、俺達は魔法によって、「変身する」のだ。
俺の正体が絶対にばれないよう、常にリスクの可能性を考え、
充分に、注意して行動するように、
という以前示された、クッカの教えは肝に銘じている。
変身はその、リスク回避方法のひとつ。
種族、身分、年齢、性別、職業等々、自由自在、何でもござれの、大変身。
初めて、秘密裏に野外に出て、ハーブを取りに行った時。
ソフィア、ことステファニーへ会いに行った時、助け出した時。
小遣い稼ぎの為、ドワーフの町へ、会いに行った時等々……
変身以外、他にも、いろいろなアドバイスが、
大いに役立ったのは言うまでもない。
という事で、サポート女神だったクッカの教えを忠実に守る俺。
外で目立つ事をする時は、基本的に、素顔のケン・ユウキでは絶対に行わない。
「さあ、行くぞ」
俺の合図に従士達は了解の意思を見せた。
「変化!」
俺の言霊が詠唱され、変化の魔法が次々に発動されたのである。
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