041
このキャンプ場の森の中、ガネーシャがいた場所から二分ほど奥に歩くと目的のモノが見つかった。
その場所は、森の中で木漏れ日が差し込むほどに小さな広さが見えた。
光が差し込んでいて、草むらが光で輪を描いていた。
そこに、不自然な黒い円が描かれていた。
ガネーシャの言うとおり、やはり光が失われた魔方円だ。
文字も消えていて、効果が失われていた。
「やはり、ダメか」
「そうだな」
俺とエフネ、傷だらけのスピカ……五十土と鹿山も一緒だ。
「私を置いていかない方が、正解だったのではないか?」
「ああ、今回は助かったよ」しつこく言うエフネに、俺は感謝を伝えた。
「それだけか?なぜ私を置いていった?」
エフネが、何度も聞いてきた。あの話だけは、どうしても出来ない。
だから、俺は難しい顔で口を開いていた。
「魔方円ということもあり、今回の敵は魔王軍が絡んでいる。
だとすれば、魔王軍との戦いは避けられない可能性が高い。そう思ったからだ」
「それはわかるが、納得は出来ぬ。
なにより魔方円の解析は、魔王の娘であり魔法適正のあるこの私にしか出来ない」
ブーブー言う子供のような……いや実際見た目も女の子のエフネがダダをこねていた。
「よしよし、エフネちゃんダダをこねないの」
「大丈夫か、エフネ」五十土とスピカが、エフネを宥めようとした。
二人をチラリと見て、エフネがなぜか女勇者のスピカの方に甘えていた。
「だって、神『男駆』がぁ」
「大丈夫よ、心配いらない」
五十土は、何とかエフネをなつかせようとしていた。
それでも、エフネはスピカに甘えていた。明らかに、五十土に逃げるように。
「ペストラは?」
「留守番だ、あいつがいては鬱陶しくて叶わぬ。
アイツは、よく寝る子だから今頃は眠っているだろう」
小さなエフネが、胸を張って言い放つ。
「そういえば、あの護符は何だ?」
「魔法の効果を封じ込めた護符だよ。
魔力を長いこと込めれば、魔力源が低いこの地球でも使うことが出来ると思って。
ちなみに私の使った護符は『スリーピー・ガンズ』。悪魔魔法の強力な睡眠魔法だ」
「それで、家出を企てたのか。鹿山を操って……」
「「鹿山に使った護符は『マインド・コントロル』だ。相手を洗脳する魔法。
護符から、特殊な魔法を字発動させて私が魔法の術式を完成させた。
なにせ鹿山は、操りやすいからな」
エフネに言われて、鹿山は両手を広げた。
「俺のどこが、操りやすいんだ?」
「全部」エフネにあっさりと否定されて、鹿山は落ち込んでしまう。
スピカは、汚れた黒のジャンパーを脱いで落ち込んでいた。
「すまない、僕のせいで……」
「今回は、どう考えても相手が悪い。
勝手に回復する相手で、硬さが自慢のガネーシャ相手ではいくらソロの勇者とはいえ厳しかろう」
「それでも、勝つのが勇者の仕事だ」
「なるほどな、勇者というのは変わっているんだな。
私では、勝てない相手には絶対に戦いたいとは思わぬが」
エフネは、どこまでも冷静だ。
見た目は幼いのに、かなり落ち着いて喋っていた。
確かに『ガネーシャ』は、グランドファンタジアのボスだ。
ゲーム内だと、ガネーシャでは魔法中心で戦う敵。
魔法の使えないスピカでは、相性がかなり悪い。
エフネの護符の力で、スピカの傷はかなり回復していた。
HPという概念だと、ほぼ全快したようにも見えていた。ただ、汚れた服はボロボロだ。
「いろいろと申し訳ない。僕一人では、勝つ事が出来なかった。
僕は、神『男駆』の期待に応えることができなかった」
「じゃあ、次こそ勝てばいいよ」
「そうだな、優しいな。神『男駆』は」
スピカは、俺に照れた顔でじっと見てきた。
「あそこで眠っている、ガネーシャはどうなるんだ?」
「しばらく起きない。三日は起きぬだろう。
私の魔法にかかると、とても深い眠りに落ちるのだ。
腕を切り落とされたって起きることはないだろう」
「どういう眠りだよ」
「一言でいえば、呪いのような眠りだからな。魔力源の高い私の力を、舐めるではない」
エフネが、怪しく笑って見せた。
なかなか恐ろしい魔法の力を、持っている幼女だ。
流石は、魔力源700といったところか。
俺がやっているグランドファンタジアで出てくる『新緑の魔女』アルクの魔力源よりも、エフネは高いのか。
「そういえば、ガネーシャはここで何をしていた?」
「仕事をどうとか、言っていたな」
「鹿山のような魔晶石を、魔方円に入れていたのではないか?」
「そうだろうな、それがなんなのか全く分からないが……いい予感はしない」
そんな中、俺のスマホと……五十土、鹿山のスマホが三台同時になっていた。
「なんだ?」スマホを見ると、一件のメッセージ。
LONEを見ると、芝童森からのメッセージが見えた。
『これは、一体どういうことだ?』というメッセージと、真っ黒な城の写真が見えた。
その城を見た瞬間、五十土は一瞬で理解した。
「これは『魔城トーリー』よ」
「でも、出ている場所は……」
「秋田の市街地だ」
五十土は、青ざめた様子ではっきりと言っていた。
さらに魔城トーリーの背景には、秋田の町並みが城下町のように見えていた。




