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エフネと鹿山の登場を、俺は全く予期していなかった。
というより、二人とも市内の仙志荘にいたはずだ。
ここから十キロ近くも離れているし、エフネは魔法が使えない。
なのに、なぜこの場所にいるのだろうか。
その答えの一つが、エフネがなぜか持っているスマホだ。
「このGPSというのは、本当に凄いな。
お前達の場所を、見事に割り出して見せた」
「それは、鹿山のスマホ。というか、なんで鹿山も一緒にいるんだよ」
「……」俺の言葉に、鹿山は無反応だ。
俺とエフネが会話を短く返す中、バランスを崩したガネーシャが体を起こした。
「エフネ様、こんな所にいたんですか?さあ、帰りましょう」
手を差し出したのは、ガネーシャだ。
ガネーシャは、魔王軍だしエフネには敬意を払っていた。
「ガネーシャ王よ。帰り方を、知っているのか?」
「勿論ですとも。我輩は、ここに仕事をしに来ました。
仕事が終わりましたら、魔王様の元に戻ります」
「ふーん」エフネは、じっとガネーシャを見ていた。
バグであるエフネは、本当に魔王の娘だ。
ガネーシャの申し出は、彼女にとっては渡りに船だ。
エフネは少し考える仕草を見せて、鹿山にスマホを渡した。
「悪いな、断るぞ」
「な、なぜですか?」
「お前達は、何か良からぬ事を企んでいる。
私が戻ったら、きっとそいつをつけられるのだろう。
そんなダサイ精霊印を、私はつけたくない」
指さしたのは、オベロンの精霊印。
ガネーシャの額についている紋章を、エフネが指さした。
「私は使役されるより、使役する方が趣味なのだよ。
この男のようにな」
エフネが、鹿山の背中に手を伸ばす。
手を伸ばした瞬間、鹿山の目が変わった。
さっきまでの正気の無い目から、魂が戻ったような目に戻った。
「あれ、俺はここで……えーっ!」
いきなり森に来たかのように、驚いて見せた鹿山。
エフネが背中に貼った護符を外し、懐にしまう。
「ガネーシャよ」
「何でしょうか?」
「お主が、スピカをここまでやったのか?」
「ええ、にっくき勇者をご覧の通りに始末していることです」
「やはり、父の命でここに来たのだな?」
「ええ、あなたも邪魔をするのであれば……抹殺します」
ガネーシャは、目を赤く光らせていた。
それは、エフネに対する尊敬の目ではない。
威圧するような睨みを見せて、ガネーシャはエフネの方に巨体を動かした。
「そうか、抹殺か」
「ええ、邪魔者の始末も我輩の仕事」
ペラペラと喋るガネーシャをよそに、背後に小さな体を滑り込ませたエフネ。
すばしっこい動きのエフネに、反応できないガネーシャ。
そのまま、ガネーシャは1枚の護符を貼っていた。
「エフネ様……むうっ」
「しばらく、寝かせておこう。ガネーシャのことが、邪魔なのだろう。神『男駆』よ」
エフネの一言で、ガネーシャがいきなり膝を突いた。
そのままガネーシャの赤い目が、抵抗しているようがあっという間に閉じていく。
耐えようとするガネーシャだけど、そのままうつ伏せに倒れていた。
「え、エフネ……」
「大丈夫だ、しばらく起きない。安心するがいい」
エフネは、それでも怒ったような顔を見せた。
小さなエフネは、俺を睨んでいた。
「それより、このザマで、よく私を呼ばないでいられたな」
顔を膨らませて、怒っていたエフネが少し可愛く見えていた。




