028
博物館の倉庫内の部屋。
狭い部屋に、いくつもの棚が置かれていてさらに狭く感じられた。
積み重なった段ボールは、ずっしりと重い。
展示する鉱物や、資料が山積みになっているのが見えた。
俺は周囲を警戒しながら歩くと、間もなくして奥が光っているのが見えた。
(魔方円だ)
そこには、赤いフードの人物もいて……何か石を魔方円に投げ込んでいた。
投げ込んだ瞬間、黒い柱が天に昇っていくのが見えた。
「こ、これは……」
思わず俺が声を出すと、赤いフードの人物に気づかれた。
額に大きな紋章が入った赤いフードの人物は、俺の方を見ていた。
顔はやはり見えないが、無言でこちらに体を向いていた。
無言で振り向いた赤いフードの人物に、俺は身構えていた。
(コイツ、何者だ?)
グランドファンタジアの衣装、レッドクローク。
真っ赤なローブに、フード。だけど顔は、こちらから見えない。
ただ唯一、フードに描かれたあの紋章。あの紋章だけが、見覚えがあった。
「……」黙っていて、こちらの様子を伺っているようだ。
それでも、後ろの黒い柱が博物館の上で登っていき……天井をすり抜けた。
黒い光で、まがまがしいオーラを放っていた。
「一体何をした?」
「……」俺の言葉には無反応だけど、黒い柱は数秒後に消えていくのが見えた。
それと同時に、小さな石がカランと音を立てて円の中に落ちてきた。
相手は何者か分からない。出てきた二つの魔物の写真。
猪も、女巨人も、モンスターだ。
しかもゲーム内では中ボスの存在。この赤いフードも、中ボスだろうか。
だけど、俺は普通の人間だ。
彼がグランドファンタジアのキャラであっても、俺には何も出来ない。
特別な強さも、剣も魔法も使えない。
対面して、俺は危険と恐怖を感じていた。
すると、赤いフードの人物が無言で動き出した。
俺に背中を向けて、黒い光の消えかかった魔方円を見ていた。
(なにか、ここでしないと……)
ここにあるのは、黒く光った魔方円の手がかりだ。
エフネやスピカが戻るための手がかりが、きっとここにある筈だ。
このまま、この人物に好きにやらせてはいけない。
(そうだ、ここは……)
そして、俺は動き出した。
目をつぶり、そのまま恐怖心を振り払って走り出した。
「ええい、なるようになれ!」
背後から迫る俺に反応できない赤いフードの人物は、そのまま前に倒れた。
魔方円の真横に、赤いフードが外れた。
フードがなくなった瞬間、俺は驚きが困惑しか無かった。
赤いフードの中には、一人の人物が姿を見せた。
「鹿山?」
そこには、髪が伸びた日焼けした男子学生『鹿山 遼』が姿を見せていた。
その瞬間、赤いフードの額部分にあった、紋章が消えていた。




