023
(SUPIKA’S EYES)
ここは秋田市の郊外にある、運河だ。
大きく広い川を、運河できれいに整備されていた。
水路には、きれいな歩道も見えていた。
神々の世界は、見えるモノ一つ一つが新鮮だ。
見た事の無い建物、鉄と電気の塔。
建物も、日本家屋や神々の学び舎も見てきた。
ここが『地球』という神々の世界だと、驚きばかりしかない。
穏やかな川の運河で、見慣れない風景。
神々の世界に圧倒された僕だけど、周囲に警戒をしていた。
青いシャツの上に赤いダウンジャケット、ジーンズをはいていて黒いブーツ。
現代風のファッションは、神『男駆』が揃えてくれた衣装だ。
そんな服装の僕は、武器を普段は隠すことが出来た。
僕の相棒……『勇者の剣』は、どこにでも出すことが出来た。
この世界では、武器を持ち歩いて町の中を歩くと自警団……警察というモノに捕まるらしい。
運河について五十土とテレビ電話をしている中、ヤツはいきなり現れた。
「スピカちゃん」五十土が声をかけてきた。
でも僕は、その声を背に走っていた。
一目散に走った僕は、険しい顔で運河の奥を駆け抜けた。
そのまま、下り階段を見つけた。
運河の下は小さなコンクリートの歩道があり、立ち入り禁止区間と看板も見えた。
それでも、僕は人間離れした跳躍力でフェンスを軽々と跳び越えていく。
僕が入った柵の中に、一つの人影が立っていた。
「どうして走ったのよ?スピカちゃん」
「ここに、魔王軍がいた。お前は……」
「お久しぶりです、勇者スピカ」
フェンスの先から甘い声が、聞こえてきた。
目の前には、一人の人影が見えた。
しかし、それは人間ではない。二足歩行をしている猪だ。
獣の匂いがして、毛深い茶色の猪だ。
そして、猪は真っ黒な執事服を着ていた。
「魔王軍四天王の一人、猪頭のパイス」
「勇者様はまた随分と奇っ怪な格好をして、この世界を満喫されているようだな」
「魔王執事パイス……か。何しに来た?」
「単に、この世界の観光です」はぐらかすパイス。
「嘘をつけ!お前達魔王軍は、何かを企んでいるのだろう」
「企むとは、ありえませんな」
猪頭のパイスが、僕に対して笑っていた。
猪頭の頭頂部は、赤く紋章のようなモノが猪の毛の中からぼんやりと光らせながら。
対する僕は、唇をかみしめて睨んだ。
エフネには悪いが、コイツら魔王軍はどうしても好きになれない。
はっきりと敵だと幼い頃から、教わった。
僕の勇者の直感が、彼を敵だと予見していた。
「ならば、お前は魔方円の場所を知っているな。教えろ!」
「勇者に教える事など、ありませんな」
「そう来るよな」
拒否された僕は、パイアのことを睨む。
パイアは、それでも飄々として僕を見下ろしていた。
「ちょっと、スピカちゃん」遅れてやってきた、五十土。
フェンスを跳び越えられない、五十土が現れた。
しかし有刺鉄線のある高い柵があるので、こちらに近づけない。
僕は目をつぶり、右手を横に突き出す。
そして、剣をイメージすると僕の剣が出てきた。
細くて長い僕の剣、『勇者の剣』を構えていた。
「おお、こわ。ならば自分も、真面目にお相手しましょう。
こう見えても、自分は悪魔魔法の達人ですから」
やはり、いつの間にかパイアの手には長い杖が持たれていた。
それと同時に、猪の顔……口の辺りがモゴモゴ動いていた。
はっきり分かったのは、ヤツは魔法を詠唱していた。
(詠唱が早い、悪魔魔法の天才は伊達じゃないか)
僕は知っていた。
パイアという男は、魔王軍の中でも随一の魔法の使い手である事を。
そして、僕は戦った事があることをここで思い出した。
(そうだ、僕は戦った。
戦った最中に、パイアの魔法にやられたんだ)
パイアは強い。
記憶の一部が、パイアの魔法詠唱と共に呼び起こされた。
確かパイアの魔法、『スリーピー・ガンズ』で僕は眠らされたんだ。
「手始めに、この電撃を………『パイア・ライトニング』」
杖を構えて、電撃が見えていた。
杖の先端から電撃が、僕に向かって放たれていた。




