022
巨人とは、文字通り巨大な人間のこと。
だけど、現代社会にそんな人間はいない。
2メートルを超える人間でさえ、珍しくネットニュースになるような社会だ。
3ートル級の女巨人と聞いて、俺は首を傾げた。
「巨人ペストラ……間違いない」
「秋田の大学で、謎の巨人が目撃されたの。
最初に目撃されたのは、三日前の夕方。
遠くを歩いていて、学生の何人かが目撃したの」
「体長は?」
「3メートルほど。しかも女よ」
「相変わらず、でかいな」
「でも、ただ歩いていて……突然消えてみたいよ」
五十土の情報に、首を傾げた。
「巨人ペストラは、とんでもなくでかいぞ。それが消えるって」
「ありえるとしたら、魔方円だね」
「異世界……ルドファークに、もしかして転移したのか?」
「その可能性が高い。だけど、あなたも知っているのでしょ」
「ペストラには、特殊な能力がある」
「あなたは、デザインしたから知っているのよね」
「まあ、ペストラはかなり気合入れた敵だからな」
俺は、かつて恵太に言われながら描いたペストラという女巨人を思い出した。
何パターンも絵を描いて、写真に写る女巨人になったのにかなり苦労した。
「ペストラの能力、ってこともあるのか?」
「その可能性もあるわね。
まあ、いずれにしても魔方円を起動していることは間違いないし。
女巨人を見つけたら……」
「大丈夫だよ。そんなことより、協力してくれるんだな。助かる」
俺は素直に五十土に、感謝を伝えた。
五十土にとっても、自分の作ったゲームのキャラが困っているのを見過ごすわけにはいかない。
俺たちは神であり、エフネやスピカは子供のような存在だ。
「魔方円で、行き来しているのならばその時間帯だけルドファークから干渉があると言うこと」
「そう、干渉している魔方円を探す。
そっちも、あのキャラが出ているんだろ」
「まあね」五十土のいる運河にも、出ているキャラがいるようだ。
やはり、普通のキャラではない。
(あくまで知る必要があるのは、起動している魔方円)
そこに、帰るヒントがあるのだ。
起動を確認し、あわよくば魔方円の文字も確認できれば再現が出来るかもしれない。
エフネは魔法こそここでは使えないけど、魔法能力は高い。
彼女の知識で、再現することで帰れる僅かな希望があるのだから。
「結局魔方円は、起動しないとタダの地面に描かれた円にしか見えない」
「ミステリーサークルとか、不思議なモノになれればいいけどね」
「まあ、そうだな」
それでも、俺たちは探さないといけない。
帰るための道標を。家に帰るための、僅かな希望を。
「待て、何かいる!」
電話越しで叫んだのは、スピカだ。
スピカはそのまま、何かを感じて運河の奥に走って行く。
五十土は急なスピカの行動で、戸惑っている様子だ。
慌てた様子で、「それじゃあ、切るから」と一言残して通話が切れた。
「バタバタしているな、向こうも」
エフネが、スマホを覗き込む。
俺も、スマホを閉まって芝童森を見ていた。
だが、芝童森も驚いた顔を見せていた。
「どうした?」
「見ろ!」叫んだのは、隣にいた芝童森。
芝童森が指さしたのは、一つの大きな影。
その影を見るなり、回りの学生の視線も一堂に集めた。
それは五十土の言うとおり、3メートル超えの大きな女が、裸で歩いていた。




