021
五十土とテレビ電話。
運河の上から、中継をしている五十土。
隣にはスピカもいた。運河周りの歩道には、平日と言うこともあって、人が少ない。
大学の並木道を背景に、俺はテレビ電話をしていた。
「魔方円は探せたか?」
「これからよ、でも……ここにあるのは間違いないみたい。
探しやすい状況、外も晴れているしね」
「五十土先輩は、単位大丈夫か?」
「まあ、私はもう卒業だけだし……取れない単位もないから。
男駆は単位取れるの?アンタの方が心配よ。
恵太よりも、単位取れていないんだから」
「それは……言い返せない」俺は苦笑いをしていた。
「ゲーム作りもいいけど、ちゃんと勉強もやりなさいよ。
大学5年生とか、恥ずかしいでしょ」
「分かっているって、そんな説教しに電話したのか?」
「まあ、説教はそのぐらいにしておいて。
出てきたキャラに、ついてだけど……キャラの近くに魔方円があるんだよな?」
話をしてきたのは、後ろにいたスピカだ。
普段はジャージ姿のスピカだけど、今日はオシャレをしていた。
どこからどう見ても、現代人の雰囲気を見せていた。
「そうだな」
「でも僕は、魔法に関して残念ながら詳しくない」
「知っている、魔力源33だしな」
「芝童森から聞いたのか。これも男駆のセイだぞ」
「うん、なんかごめん」
「いえ……それよりも魔方円には、魔法の文字が書かれているぞ。
それをスマホで、撮ればいい。
後は、魔法に長けた私が解析できるから」エフネが声を出していた。
「そうか……」
エフネとスピカは、しっかり会話していた。
二人とも、世界に戻るという共通の目的があるからだ。
だけど、スピカはエフネには疑惑が無いわけではない。
「この私を、信用していないのか?」
「そうではない、だけど……」
「ならば、問題は無い。
この二週間、お前と一緒に過ごして分かったことがある」
「僕もだ」エフネとスピカの声が、電話越しに同調した。
「私は勇者が、悪い奴らだと思っていた。
私の父と戦い、殺そうとするモノだと思っていた。
それは変わらないし、神が与えた使命なのだろう」
「ああ、僕はそうだ。
だけど魔王軍は、全て悪い悪魔の集まりだと思っていた。
それが間違いだと、君が気づかせてくれた。
エフネは普通の女の子で、父親思いの魔王の娘だということ」
スピカに言われて、照れくさそうな顔を見せるエフネ。
「先に言うのは、ズルいぞ」
「いや、本当の事ではないか」
「まあ、スピカもイイヤツだ。面倒見がいいし、料理がうまいし」
「面倒見は……いいかもしれない」
エフネに褒められて、スピカも照れていた。
二人は、電話越しで照れ合っていた。
「あのー、それで……五十土先輩」
「ああ、そうね。男駆に最新の情報を教えようと思って」
「最新の情報?」
「大学の博物館に、男駆が描いたあのキャラが出ていた。
博物館に出たのは、昨日の夜。ねえ、あの巨人には秘密があるでしょ」
「ああ、そうだな」
俺は知っていた。
五十土にもらった写真に、巨大な女の人間が写っていたのを。




