012
魔王の娘『エフネ』。
俺は、グランドファンタジアを作ったインディケーターのメンバーの一人。
だから俺の仕事は、キャラグラフィックを描くイラストレーターだ。
主要のキャラから、敵キャラから、町の住民まで全てのイラストを俺がほぼ一人で描いていた。
恵太に頼まれた分を描いて、魂を込めた。
だから、俺は全てのキャラを覚えているし……スピカも知っていた。
エフネの父、バロルも俺は描いていた。
(でも、エフネだけは描いた記憶が無いんだよな。
無いんだけど……どこかで見た事のあるキャラなんだよな)
エフネを見ながらも、なにかを考えていた。
食事も終えたテーブルで、エフネはスマホを見ていた。
ちなみに、エフネの持っているスマホは俺のスマホだ。
「エフネ、何を見ているんだ?」
「うーん、言葉」
「言葉?」
「現代の言葉」見ているのは、子供向けの知育ビデオだ。
こういうのを見ていると、エフネは子供っぽくてかわいらしい。
「ねえ、これは何?」指さした動物を、俺は見ていた。
「タヌキだな」
「タヌキ?」エフネが聞き馴染みの無い単語を、聞いていた。
「タヌキは、人を化かす動物だ。この辺りも、山奥にいるし……」
「人を化かす?魔法でも使うのか?」
「そういうのじゃ無いけど、伝承かな。
タヌキは、死んだふりとかも得意で騙したりもする……賢い生き物だからそういう脚色もされているのだろう」
俺の話に、かなり興味をもっているエフネ。
こうしてみると、本当に小さな女の子にしか見えない。
「そういえば、次のゲームにタヌキの女の子を描いたっけ」
俺は、ふと自分の私物のタブレット端末を取り出した。
そのまま描いているイラストの画像を、俺はエフネに見せた。
「タヌキの女の子」
「可愛いだろ、着物を着ていて、丸っこい女の子。
俺の、今イチお気に入りのキャラの一人だ」
「おお、神の仕事か?」
「俺は、神のイラストレーターだからな」
俺の話に、エフネは興味を持っていた。
赤い目は、輝いていてかわいらしい。
純粋なエフネを見ていると、エフネが口に出したことがあった。
「そういえば、前に円に引き釣り込まれたあの男は?」
「鹿山か?」
「神『鹿山』は、どんな創造力を持っているんだ?」
「アイツは。音楽だな。
魔城トーリーにも、流れている音を作っている」
「おお、それは凄い!」
「ダンジョンの曲とか、音楽を作る神なんだ」
鹿山の事を、興味深く聞いていたエフネ。
俺のすぐ隣に来ているエフネが、一緒に小さなスマホを見ていた。
「なるほど、私の城の音楽は神『鹿山』の力だったのか……」
「何の話をしています?」
奥からスピカが、台所から出てきた。
食器を洗い終えた女勇者は、そのままこたつに着席。
青いエプロンを脱いだスピカは、俺たちの方を見ていた。
「ああ、神の話だよ。俺が描いたイラストも、見せていたんだ」
「神の仕事ですか、是非、僕も見たいです!」
鼻息荒くスピカが、俺に急いで近づいた。
狭いこたつに、スピカも入っていた。
エフネとスピカに挟まれた、狭い俺は困惑していた。
「ちょっと狭いって」
「ふむふむ、このイラストが、今度……神『男駆』が命を与える人なのですね」
スピカが言っていると、急にエフネの持っているスマホに着信音だ。
俺はすぐさま、エフネに手を伸ばす。
「ちょっと、スマホ貸して」
俺がエフネから自分のスマホを取り返すと、そこにはLONEでメッセージが入っていた。
そのメッセージを見た瞬間、俺は驚きしか無かった。
《今、仙志荘の近くに来たんで、遊びに行くわ》
差出人は五十土先輩だ。
メッセージを確認した瞬間、玄関のチャイムが鳴っていた。
そして、俺は確信した。
(先輩か……)あきれ顔の俺は、ゆっくりと立ち上がった。
「お客様ですか?」声をかけたスピカ。
「ああ、俺がいるときは、俺が出る」
そのまま、来客を出迎えるように玄関の方に歩いて行った。




