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083 騎馬戦(2)

 勝者である2、4組が敵味方に分かれて決勝を行うのだが、俺はここで「作戦タイム」を5分間とった。

 勝ったとはいえ、2組も4組もボロボロ。疲労困憊だったのだ。


「服もボロボロだな」


 ちょうど六月に入って、夏服に切り替えたせいもあるだろう。

 スカートは薄地になり、セーラー服も半袖の薄手のものに変わっている。


 引っ張り、引っ張られたことで、脇のファスナーが壊れたりして、肌の露出が激しい人も多い。

 それと問題はスカートだ。


 合戦のときにスカートを引っ張った人がいたようで、腰のホックが外れてしまった子がいる。

 半分ずり落ちたままで、作戦会議に参加している。


 つまり、半裸族がそこかしこにいるのだ。

 目の保養……げふんげふん。目に悪いことこの上ない。


 それと「履いてない」と言ったが、あれは間違っていた。

 彼女たちは履いていた。「肌色の下着」をつけていたのだ。


 そういうことにしてくれ。そうしないと、さすがにやばい。

 上も下も肌色の下着をつけているのだ。うん、間違いない。


 永遠とも言える(?)五分が過ぎ、半裸だらけのドキドキ騎馬戦大会……ならぬ、2、4組の決勝戦が始まる。


「2組、準備はいいかぁ?」

「いぇーい!」

 ノリがいい。


「4組、準備はオーケーかぁ?」

「オーケーでーす!」

 こっちもノリがいい。


「それでは一年の決勝戦を始めるぞ。総員、かかれぇー!」

 俺の号令とともに、両騎馬が校庭の中央で激突した。


 双方とも小細工はなし。

 力と力のぶつかり合い。


 目の前の敵を蹴散らせば勝ち。シンプルでいい。

「気迫が違う」


 朝礼台の下でそんな声がした。

 生徒会のだれかが呟いたのだろう。


 なるほど、普段の練習どころか、体育祭などで戦ったときと、気迫が違うようだ。

 ひとりが騎馬の上からもんどり打って校庭に転がった。だが、味方も敵も一顧だにしない。


 打撲どころか骨折しそうな倒れ方した騎馬もある。

 だが彼女らは、一心不乱に戦いに没頭している。


 ――すべては勝つために。


 両組の戦いは、中央の潰し合いに終始している。

 中央の戦いを制したクラスが勝つ。それは2組なのか、4組なのか。


 残った騎馬が半数以下になったとき、4組の一騎が中央を抜けた。

「一騎駆けだ!」


 歓声が校庭にこだまする。

 抜けた一騎を二騎が追うが、それで中央の均衡が崩れた。


 そして駆け抜けた一騎は、将に近づき……。


「と、跳んだ!?」

 ジャンブ。いや、ダイビングだ。


 すでに馬は後方に押しやられ、このまま地面に落ちれば負けは確定。だが、駆け抜けた一騎はそれすら予定調和。

 見事、将を抱き込んで大地に激突した。


 クラスに将は二騎しかいない。そのうちの一騎がいま落ちた。

 2組がここから逆転するためには、中央を抜けて敵将に迫らなければいけない。


 だが、味方の将が一騎になったことで、動きが制限された。

 中央を制覇して、ゆっくり将を倒すか、速攻で将を倒しに向かうか。


 その逡巡を突かれてまたひとり、一騎駆けを許してしまった。

「わあああああああ」


 騎馬の自爆攻撃で、残った将が落とされて、2組の敗北が決定した。

「けっちゃーく! 勝者は4組ぃ!」


 俺の宣言で、勝った4組の喜びが爆発した。




「騎馬戦大会1年の部、優勝4組! 感動した、おめでとう!」

 ちょっとパクリを混ぜて、俺はカバンの中から色紙を取り出した。


 それをみんなに一度見せてから、「4組 騎馬戦 優勝おめでとう」と書き、今日の日付と俺の名前を添えて渡した。


 受け取った女子は感動のあまり、顔をくしゃくしゃにしながら、たった今書かれた色紙を見えるようにかざした。


 この色紙については、奉活について調べているときに発見したものだ。

 奉活先で最後に、色紙を書いてもらうことがあるらしい。


 俺も「これだっ!」と思って、今日のために十枚ばかり買って、カバンに入れておいたのだ。

 それが早速役に立った。


 2回戦が終わったわけだが、半裸だった彼女たちの中には、全裸に近い者もいる。

 それだけ激戦だったわけだが、なんだか申し訳ない気持ちになる。


 だが彼女たちを見ていると、なんとも清々しい顔をしているではないか。

 怪我をしているのも多い。擦り傷は言わずもがな。腕や足がアザになっているのもいる。


 それもすべて勲章とばかり、誇らしげにしているのだ。

 だが、男性がいる前で着替え直すのはやめてもらいたい。


 服のズレを直す程度なら問題ないが、一度脱いで、ホコリを払ってから着なおすと、すべてが見えてしまうのである。

 俺は紳士だから、何かあってはいけないと思い、着替え中の彼女たちをとくに注意して見ているのである。


 一年生が終わり、二年生の騎馬戦が始まったのだが、後輩の戦いを見ていたからだろうか。

 戦意は最高。その上で戦術を駆使した戦いとなった。


 1組と3組の将が一箇所にかたまり、まるで『鶴翼の陣』のように左右に大きく広がった。

 2組と4組はその広がった左右の翼部分へ果敢に攻撃をしかける。


 その戦い方はまさに、両輪の『車懸りの陣』のようだ。


 二年生の勝負は、将以外の騎馬を先に狩られた1、3組が敗北して終わった。

 決勝は、積極的に将が動き、他の騎馬を翻弄する『つり野伏せ』同士の対決となった。


 これを制したのは2組。俺は新しい色紙に2組おめでとうと書いて渡した。


 三年生の大会はさらに技巧が凝らされていて、フェイントを織り交ぜた高度な駆け引きのあるものとなっていた。

 すでに三年目ということで、戦術は互いに熟知している。


 相手の戦術を潰しつつ、自分たちの戦術を展開する。

 いきなりはじめたにもかかわらず、なんと高度な戦いであろうか。


 結局、将の位置が入れ替わるという変則的な戦いとなり、一瞬のスキを突いて、1、3組の特攻が決まった。


 決勝は反対におだやかなスタートとなり、騎馬が互いに間合いの外をぐるぐると回る戦いとなった。

 押しては引くカバディのような戦い。


 勝負は持久戦となり、それを制したのは平均的に身体が大きい1組だった。


 これで三学年、すべての戦いが終わった。

 勝利した3年1組を表彰しているとき、ハプニングがおきた。


 なんと、校庭に警官がやってきたのである。

 どうやら、あまりに大声で合戦をしていたため、「これは尋常ではない」と近隣住民から通報があったらしい。


 たしかに、本気の絶叫がそこかしこで響き渡っていた。

 それどころではない。「やれ!」「殺せ!」など、殺伐とした言葉も、たまにだが出てきた気がする。


 慌てて事情を説明する教師と、こちらをチラチラ見る警官。

 いや、こっちへやってきた。


 半裸になるまで女子を戦わせた俺は捕まるのだろうかと思ったが、「大丈夫ですか? 変なことされていませんか?」と反対に心配されてしまった。


「まったく問題ありません」と答えると、敬礼して去っていった。

 感覚的に、命拾いした気分だ。


「みんな、このあとは俺と講堂で会おう!」

 それだけ言うと、全員が言葉の意味を察した。頭いいよね、この子たち。


 いい場所を確保するため、我先へと講堂へ駆けていった。

 もはや、教師は眼中にないようだ。


「それじゃ、校長先生。当初の予定通り、講堂で講演をしたいと思います」

 事前の打ち合わせで、生徒を前に話をしてほしいと言われていたので、内容を考えておいたのだ。


「…………」

「校長先生?」


「は、はい。お、おまかせ……します」

「ありがとうございます。それでは俺も講堂に向かいますね」


 講堂へ向かう途中、校長先生の「いまどきの男性の行動が分からない」というつぶやきが耳に入った。



先日、腰痛が再発した話をしましたが、職業病なので実は長い付き合いです。

以前購入した電動式の介護ベッド(病院とかにある背もたれと足があがるやつ)が書斎に置いてありまして、腰痛のときはそっちを使って生活しています。


ここ数日で、運動しても問題ないくらいまで回復しました。

心配していただきありがとうございます。回復完了です!


それでは引き続き、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 発想が天才 [気になる点] 凄まじくネタが良いが、あっさり終わってしまって寂しい [一言] ありがとう
[気になる点] 主人公、悪質な煽動者だな。 極めて不快だわ
[良い点] 一行目から最後の行まで笑わせていただきました。 ありがとうございます。 [一言] 運動可能な位に回復おめでとうございます。寝室以外 (書斎)に電動ベッドは目から鱗の良いアイデアですね。
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