112 不穏な発表
次の奉活の日程が決まった。
といっても、かなり先だ。7月の下旬、夏休みに入ってからとなる。
7月の上旬は期末試験で忙しいので、中旬をお願いしていた。
下着メーカーの方も下旬は発表会があるので、その方がいいという返答をもらった。
ならばそれでいいじゃないかと思ったが、発表会とはなんぞや?
詳細を聞いてみると、来年用の新作だそうな。しんさく?
いま6月なのになぜ来年? と思うかもしれないが、今年の秋用の作品は完成済。
すぐに売り場に並べられる状態になっている。
冬用を工場で鋭意制作中らしい。
つまり、来年の春用をいま発表して、反応を見る感じだ。
発表の結果が良ければ、工場で量産するために動き出すらしい。
なんともはや、動きの速いことだ。
というわけで、「発表会の日がいいです!」と言ったら、すんなり決まった。
下着の発表会だ。橋上さんに借りて、カメラを持っていっちゃだめだろうか。
しかし、下着メーカーの発表会と奉活がぶつかるなんて、「なんてラッキーな」とホクホクしていたら、淳がやってきた。
「政府発表で、太陽フレアの影響は確実になったらしいって」
「えーっと……難しい話がうんたらってやつだよな。それで男が生まれにくくとかなんとか」
「うん。ものすごーく簡単に言うと、そうなるかな」
「なんで政府発表なんだ?」
「社会形成に大きな影響があるからじゃないかな。男女比は現状維持か、もっと悪くなるかもしれないからね。そうするとより男性の役割が重要になってくるでしょ」
「そうなのか? いまでは人工授精で子が産めるから、昔のように人類が滅亡しかけることはないって習ったけど」
「人口は維持されるからこそ、男性の役割が重要視される感じだね。いまはまだ社会にそれなりの数の男性がいるけど、どんどんと世代交代していくよね」
「そうだな。祖母の頃はそれなりにいたらしいけど、俺たちの代だとかなり少ないんだよな」
特区で見かける男性は、高齢>壮年>青年と、順に少なくなっている。
「そう。僕らが将来の男性を支えていかないといけないんだ。これから生まれる男の子たちが僕たちくらいの年齢になったとき、社会の中核にいるのが僕たちだからね」
「そうなるのか……たしかにそうだな」
「僕たちの代だと、一般の企業で働く男性はかなり減るだろうね」
社会で男性が必要とされるところは多い。
以前聞いた教師や医師、カウンセラーなどは男性必須だ。
それと奉活局を含めた役所などにも男性がいないと、相談に対応できない。
半民半公の施設でも、多少の男性社員は必要である。
男女比が数十人に一人から、数百人に一人となり、いまは千人に一人くらいの割合。
当然、民間に就職する男性はどんどん減っていくだろう。
「つまり今回の政府発表は、男性の価値がより一層上がることを示しているんだ」
太陽フレアの件がなければ、男女比は戻っていく。
一時的に男性が減っても、すぐに復活するはずだった。
だが、そうはならなかった。このぶっ壊れた男女比の社会がまだ続く。
「そうなると、どうなるんだ?」
「僕は、母親の筋から、なるべく目立たないようにって言われたよ。あと、これは内緒だけど、母にかなりの便宜が図られたらしい」
「目立つな? ……ああ、つまり目立てば、勧誘があるわけだ」
男性の就職は、かなり自由意志によってなされている。だれも男性の意志を強制できない。
もしできたら、社会がヤバいことになる。おそらくヒャッハーな世の中に。
それを利用して、よりよい条件での確保も可能となっている。
「引き抜き防止策だね。……おそらくクラス内での監視も強くなっているんじゃないかな。僕には知らされてないけど」
「なんかそれ、生きにくいな」
淳の班員は、仕事関連で選んだと聞いた。おそらく接触してくる者を監視しているのだろう。
話を聞くだけでも、面倒くさいのが分かる。なんとかできないだろうか。
と思ったが、相手は太陽だ。どうにかできるものでもない。
「結局、いまいる人数で社会を回していくしかないんだろ? 会社もそこまでするのか?」
俺としては不思議だ。会社も家族も必死過ぎる。
「男性社員の数がゼロになったら、翌年から男性の入社希望者はゼロになるからね」
男性がその会社に希望すれば簡単に入れるだろう。
だが、そんな会社に入ったところで、男性社員は自分だけ。
話し相手は全員女性。男性同士の相談もできないし、翌年から入ってくるかも未知数。
それが分かっている状況で、だれが会社に入るだろうか。
そう淳は言いたいらしい。
「大変だねえ……って、それ、ヤバいじゃん。つまり俺たちの代で社員がゼロになったら、その会社って未来なくない?」
「太陽フレアが収まれば、もしかすると男性社員も入ってくるかもしれないね」
「そういうレベルだよな。だから、淳に目立つなって言ったのか」
いま男性社員がいても、今後は入ってきてくれるか分からない。
何しろ、俺たちの代はかなり男性が少ないのだ。
だが、今後しばらく回復しない場合、いまいる男性社員がみんな定年で辞めていく。
普通ならば若い社員が台頭し、中核となっていくのだが、その世代が俺たちだ。つまり、入社しているか分からない。
ここを逃すと、ずっと男性社員は厳しいまま。
つまり、いまが分岐点なのだ。手をこまねいて男性社員を見逃すか、手を打って……引き抜きでもいいから確保するか。
先が見える企業はすでに手を打ちはじめている。
淳のところまで話が来たということは、入社前の青田買いの重要性に気づいている。
そしてこれから気づく会社も大勢あり、男性確保の激戦が予想される。
「そりゃ、親も目立つなというはずだよ」
「今年は宗谷くんに話題をさらわれたから、かなり楽だと思うけどね」
このクラスだって、大手企業と繋がっている者の娘が大勢いる。
だが俺が話題の中心であるため、淳はほとんど表に出ない。
「避雷針の役割は果たしているかな?」
「最高。拝みたくなるくらい役に立ってる」
「それだったらよかった」
どうやらネオ特区のことも含めて、これから社会が騒がしくなりそうだ。
最近、あちこち町へ繰り出している(半強制)んですけど、クリスマス一色でもないんですよね。
なんていうか、たまに「そういえばクリスマスが近いのか」と思い出す程度の装飾で。
さて、本作品を読んでどうでしょうか。感想をお待ちしています。
それと同時連載中の『ダンジョン商売』もよろしくお願いします。
こちらは、仲間たちと現代日本でダンジョンを造って、商売をはじめようと真面目に(?)がんばるお話です。




