4 誘拐犯
「ふぅ、間に合って良かった。今のはなかなかギリギリだったな。」
生徒のピンチに駆けつける先生とか、完璧すぎるシュチュエーションだろ!
これでやっと昨日の手賀崎のおんぶを忘れられるわ〜。
しかも女子!これは流石に俺に惚れたか?
まぁ、しょうがないよな。これはカッコ良すぎる。
まぁ冗談はこのくらいにして、
「神崎、大丈夫か?」
「先生!?助かりましたわ、本当に危ないところでしたの。私なら大丈夫ですわ」
「そうか、良かった。じゃあ、危ないからちょっと離れててくれるか?
コイツの仲間がいるかもしれないから、油断はするなよ」
「了解ですわ。でも、先生もレジスタントのはず、大丈夫なんですか?こいつ、強いですわよ」
「ああ、任せとけ」
誘拐犯は、ハッとすると要から大きく距離をとった。
どうやら相当動揺していたようだ。
それも当たり前である。
ナイトである自分の攻撃を完然に受け止めた奴から、微塵も神聖力を感じられなかったのだ。
「おいおい、勘弁してくれよ。なんで、この町には常人離れしたレジスタントがこんなにいるんだよ!」
誘拐犯は、驚愕と感心と気怠さを混ぜたような複雑な表情をして言った。
「お前が誘拐犯だな!俺の生徒をよくも拐おうとしてくれたな!
めんどくさいが相手してやるからとっととかかってこい。」
「はっ、笑わせてくれるな、レジスタントのお前が俺に勝てるわけねぇだろ!
ただ、こちらにも事情があるからな、今日は逃げさせてもらいますわ。」
男はそう言うと、いっきに近くの建物へと飛び上がった。
「待てっ!はぁ〜めんどくせ〜な〜、でも仕事だし、生徒が狙われてたとあっては黙ってられないか」
誘拐犯を追って屋根の上に飛び上がると、それを見た誘拐犯は、猛スピードで逃走を始めた。
屋根や、時には電柱の上を飛び移りながらもスピードは、どんどん加速してる。
しばらくすると、このままでは要を振り切ることが難しいと思ったのか、時々後ろを振り返っては火の玉を放ってくるようになった。
おそらく奴は、火系統の神術を使うのだろう。威力も流石にナイトだけあって、レジスタントが食らったら骨も残らないレベルだ。
ただ、要は左右上下に自在に動き回って上手いこと避けていた。
火の玉は、厄介だな。
時間をかけると、この町が大火事になっちゃうかもしれないしな〜。
もうちょい力を出しても平気だろ。身体能力だけなら、なんとでも言い訳はできるだろうしな。
実際、誘拐犯が放っている火の玉によって所々で火の手が上がり始めていた。
あれよこれよと邪魔をして、逃げようとする誘拐犯であったが、要には障害とはならず、2人の距離は全く開く気配はなかった。
すると突然、誘拐犯はビルの屋上へ飛び移ったところで足を止めると振り返った。
要も、それに合わせて1つ手前の建物で足を止めて誘拐犯と向き合う。
「しつこいなぁ。どこまでも追いかけてきやがって。どうやらこのまま逃がしてはくれなそうだし、殺すしかないようだな」
「これだけ暴れまわったんだ。俺が逃しても特殊警察が黙ってないだろう。
まぁ、追いかけるのは面倒だしここでやるってのには賛成だな。
だが、置いてきた神崎が心配だな。お前にもちょっと付き合ってもらうとするか」
言い終わると、要はいきなり消えた。
「なにっ!?」
誘拐犯は、背後から強烈な殺気を感じ、振り返ると、拳を振りかぶった要が目に映った。
即座に腕をクロスさせ、防御姿勢をとるも、それが精一杯だったらしく、要の強烈な一撃が炸裂した。
踏ん張りも虚しく誘拐犯は元来た方向に吹き飛んでいく。
「さて、俺も後を追いますか。ん?なんか近づいて来てるな。ちょっと急ぐか」
要は恐ろしく速いスピードで、神崎のいる方へ向かって行った。
力を入れすぎたのか、足場となったマンションの屋上はバキバキにひび割れていた。
請求書は誰にいくのだろうか、、、
ドォォォーーン
空からものすごいスピードで何かが降ってきた。落ちてきたものは、地面にのめり込んでクレーターを作っている。
「きゃっ!なんですの?またまた敵襲ですの?」
誘拐犯は神崎を拐おうとした場所まで吹き飛ばされてきたようだ。
「いってぇ〜、あいつマジでなにもんだよ!腕力だけでこの俺を吹き飛ばすなんてありえねぇ。バケモンかよ、、、」
「貴方は!?さきほどの誘拐犯!」
「おっ!お前はさっきの嬢ちゃんか、ただ、今お前を攫ってくのは無理そうだな。あいつがいない今のうちに逃げるとするか。そろそろ特殊警察も出張ってきそうだしな」
誘拐犯は立ち上がったところで、上から強烈な存在感を感じとった。
ハッと顔を見上げると、そこには要が立っている。
「おいおい、マジかよ。」
「こっちにも事情があってな、悪いがお前を逃すことはできないな。めんどくさいからさっさと降参しろ。
さっきのでわかったろ、お前じゃ俺には勝てないよ」
「はっ!はっ!はっ!笑わせてくれるなよ。お前がこの俺に勝つ?確かにお前は、身体能力はバケモノかもしれないが、レジスタントということには変わりない。
これがお前と俺との圧倒的な差だっ!」
誘拐犯はそう言いながら、手を上に掲げ、先程とは比べ物にならないくらい巨大な火の玉を放った。
火の玉は要に迫るが、要は全く避ける素振りも見せず微動だにしない。
「先生!避けるんですのよっ!」
神崎は、誘拐犯が放った火の玉の威力を瞬時に見抜くと、慌てた表情を浮かべて言った。
しかし要は全く動こうともせず、火の玉は要を直撃する。要が立っていた建物の一部も消しとばされた。
「はっ!はっ!はっ!あれだけ大口を叩いてこの程度とは、所詮はレジスタントだったということか。」
「そんな、先生が、、、嘘ですわ。」
あの火の玉の直撃を受けて生き残るのは、もはや無理だと思われた。
生き残れるとしたら、ナイト以上の力の持ち主でなければ不可能だろう。
しかも、要が神術を行使したような形跡は無かった。
煙が上がる中、その声は唐突に聞こえてきた。
「おいおい、勝手に俺を殺すんじゃないよ!それにしても、ナイトだからと期待してみれば、この程度か、、、
って!?俺のお気に入りの服がっ!」
火の玉の直撃を受けたはずの要は、さっきと全く変わらずそこに立っていた。
服以外は、、、
要がさっきまで着ていた服は、火の玉によって燃え尽きたようで、要はいわゆる上裸状態であった。
余程ショックだったのか、要は両膝をついてうなだれた。
「なっ!?」
渾身の一撃を食らわせて、服以外は全く無傷の要に驚いたのか、誘拐犯は口をあんぐりと開けて固まってしまった。
その間に、要は復活したようで立ち上がる。気持ちの切り替えは恐ろしく早い要なのであった。
「くそっ!よくも服を、、、一着しかないスーツを!
でも、そろそろ特殊警察も来そうだし、いい加減終わらせてもらうぜ。」
誘拐犯もやっと正気に戻ったようで、要の言葉に身構える。
多少の沈黙が2人の間に広がっていた。お互いに、相手の様子を伺っている。
先にこの沈黙を破ったのは誘拐犯の方だった。
「炎虎っ!」
男は神術を発動させると、どこからともかく大量の炎が吹き荒れ、それが次第に虎の姿を形作った。
ちっ!いちいちカッコいい技を使いやがって!ムカつく野郎だ。
誘拐犯が神術を使うと同時に要も動いていた。建物から一気に飛び降りると軽々と着地し、加速しながら誘拐犯に迫った。
「炎虎っ!行けっ!」
男の合図と共に炎虎は、要に向かって走り出す。
まるで本当に生きているかのように要の動きに合わせて確実に噛みつこうと狙っている。
近づくにつれてその熱量が感じられ、明らかにただの炎ではないことがわかる。
要は先程の火の玉と同じように、炎虎を全く意に介さず一直線に誘拐犯に向かって行った。
炎虎は既に牙を剥き出しにして飛びかかってきている。
炎虎が迫った時、要はおもむろに拳を振りかぶると音速を超える速さで拳を前に突き出した。
ドォォーン!!!
要の一撃によって炎虎は完全に消滅していた。さらに、その延長線上にいた誘拐犯も吹っ飛ばされて気絶しているようだ。
あれ?ちょっとやりすぎちゃったかな?
思わず力入れすぎちゃったけど、周りの建物とかは壊れてないし、まぁ大丈夫だろ。
目撃者は神崎だけだし、口止めしとくか。
「動くなっ!」
要の後ろにいきなり男が現れた。要の首筋には、電気を纏った小刀が添えられている。
っち!ちょっと遅かったか。特殊警察が来る前に誘拐犯を回収して、とんずらするつもりだったが、思ったより到着が早かったな。
それにしても、今日会うやつはどいつもこいつもさらっとカッコいい台詞を言いやがって、なんかムカつくな!
「お前が町に火をばら撒いた犯人だな!ん?ちょっと待てよ、お前からは神聖力が感じられないな。じゃあ、お前は誰だ?」
「俺は、国立早蕨学園で教師をやっているものだ。生徒があの誘拐犯に拐われそうになっていたんで、俺が誘拐犯と戦ってたって訳だ。」
「なるほど、あそこで気絶しているのが誘拐犯かつ放火魔だということか。」
話を理解したのか、特殊警察の男は一旦首筋に添えられていたナイフをしまい解放してくれた。
話が早くて助かるな。それにしても、こいつはなかなかやるな。力の感じからしてプロフェッサーぐらいかな?
流石はグランドマスターのお膝下、出張ってくるやつも超一流って訳か。
「しかし、どうやら話を聞く必要があるようだな。役所までご同行願えるか?」
うげぇ!めんどくせぇ〜、どうにかして逃げられねぇかなぁ。
「えっ!?お父様!?」
「おぉ〜!!!エミリアじゃないか!どうしたんだこんな危ないところで?誘拐犯がこんなに近くにいて危ないだろ、今護衛の者を呼ぶからな。」
「いらないですわっ!私1人で帰れますから!私が拐われそうになってたところを、先生が助けて下さったんですの。」
神崎の言葉を聞いた途端、神崎父はものすごい殺気を放ち始めた。
そして、気絶している誘拐犯を今にでも殺すのではないかという形相で睨みつけている。
「拐われそうになった?よし、そいつを殺すか、、、」
さっきから薄々感じ取っていたが、神崎父は重度の親バカのようだ。
ただ、今、あの誘拐犯を殺されてしまっては困る。
アイツと神崎との会話の中で出てきたロイドとかいう奴がおそらく裏で糸を引いていると思われる。
なので、情報を聞き出すまでは殺してもらっては困るという訳だ。
まあ、情報さえ聞き出せればその後アイツがどうなろうと知ったこっちゃないが、、、
「ちょっと待ってくれ!今アイツを殺されては困る!」
「何?お前はアイツの味方をするのか?ではお前も殺すしかないなぁ、」
ダメだこの親、怒りで正常な判断ができなくなっている。
どんだけ娘のこと好きなんだよっ!
「ちょっと!お父様!何言ってるんですの!」
神崎の言葉を聞くと、我に帰ったのか謝ってきた。
こんなのが父親とは、神崎も日々苦労をしているのだろう。
ご愁傷様です、、、
ただ、神崎からしたら良い親であることには間違いなかったりする。
優秀な人材を多く輩出してきた神崎家にレジスタントとして生まれながらも、なんとか家族内で人権を持てているのは、エミリアが家長であるこのバカ親父から溺愛されているからなのだ。
それを分かっているからか、神崎は呆れながらも父親には非常に感謝している。
神崎父は、神崎の目があるためか、殺気を必死に押さえながら誘拐犯を拘束していた。
その顔は、怒りと笑顔が混ざり合った非常に気持ち悪いものだった。
「よし、では役所に向かうか。」
神崎父が準備を終えたところで、上空から1人の人物が降りてきた。
「なっ!?」
バトルシーンは難しいですね。
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