2 保健室にて
保健室は本校舎にあるので、隣にある旧校舎から来たわけだが、やはりレジスタントへの差別は酷いようだ。すれ違う生徒たちは、おんぶされている手賀崎を見つけては睨んでいた。
中には今がチャンスと、攻撃を仕掛けてきそうな生徒までいる始末である。きっと手賀崎に喧嘩を売り、見事に返り討ちにあった生徒であろう。
さっきのナゾ子との闘いで、手賀崎の戦闘能力はだいたい把握する事ができた。
能力至上主義の社会において、神聖力の保有量と神術の有用性を総合して導き出される能力者のクラス分けが存在する。
上から順にマスター、プロフェッサー、ナイト、エスパー、クラウド、そして、無能力者であるレジスタントとなっており、下のクラスの者が上のクラスの者に戦闘で勝つことはほぼ不可能であると言われている。
そんな中、手賀崎は驚くべきことに、概ねエスパークラスの生徒たちとであれば、互角の勝負が出来ると思われる戦闘能力を、先程の闘いで見せつけてきた。
世界中を探しても、レジスタントがエスパーと互角なんて話は、そうそう見つからないだろう。
「手賀崎、お前ナゾ子には負けたけど、とんでもないやつだな」
「ナゾ子?誰っすか?それ?てか、いきなり褒めてこないで下さい。なんか気持ち悪いっす」
「せっかく褒めてやってるのに!可愛くないな。そうだ!あのお前と闘ったナゾが多そうな子は、なんていうんだ?」
「あ〜あいつは、藍染桜楽っていうんすよ。いつも俺をおちょくってくる、ムカつくヤツです。でも、あいつは底知れない強さがあるんっすよね〜。正直、あいつに勝てるビジョンが全く浮かばないんです。くそっ!やっぱ、ムカつく!」
「藍染!?まさか、な、、、」
てか、そろそろこのシュチュエーション、限界なのだが、、、男が漢をおぶってるって、側から見たらヤバイことになってそうだ。
手賀崎を見て睨んでいた生徒たちも、このシュチュエーションのおかしさに、鼻で笑っていた。
ここは定番の、イケメン先生が、女生徒をおんぶして保健室に連れて行くところだろ!
もしかして、手賀崎を強くして藍染に勝てるようにすれば、わんちゃんあるぞ!!
「フッフッフ、、、、」
「何にやけてるんすか?先生なんか怖いっすよ?」
「あっあぁ、すまんすまん。ちょっと今後の予定をなっ!」
「はぁ〜、?」
そんな会話をしているうちに、どうやら保健室の前に着いたようだ。
保健室のドアを開けるとあり得ない人物がそこにはいた。
「なっ!神楽さん!?なんでこんな所に!?」
「ん?あれ?要ちゃんじゃない。どうかしたの?」
「あぁ〜ちょっとうちの生徒が怪我をしてな、てっ!じゃなくて!なんで学園長のあんたが保健室にいるんですかっ!?」
「学園長?何言ってんすか?先生」
「あらら、、要ちゃん、世の中には言わない方がいいこともあるの。こんなことも分からないからまだまだ子どもなのよね〜」
この人は、この学園の学園長で、グランドマスターの藍染神楽という人だ。
神楽さんとは、かなり昔からの付き合いだが、今まで1度も口喧嘩に勝てたことがない。
最後には、見事に言いくるめられてしまうんだから恐ろしいものだ。
もし、神楽さんに口喧嘩で勝てる人がいるとしたら、ぜひ会ってみたい。
いるかどうかは、かなり怪しいが、、、
もちろん、グランドマスターである神楽さんに、神術勝負でも勝てる奴はほとんどいない。
つまり、神楽さんは最強。この人と知り合いで良かったと常々思う。
「忍くんは、また桜楽にやられたの?あの子には、あんまりやんちゃしないように言ってあるんだけどね〜。忍くんも怪我しないくらいは強くなってくれると、こっちとしても有難いんだけどね。」
「くっ!す、すみません。」
どうやら、神楽さんの標的が手賀崎に移ったようだ。ありがとう手賀崎!お前のことは忘れない!存分に神楽さんの犠牲になってくれ!
よし!これから神楽さんと会う時は、手賀崎を連れて行こう。
「やっぱり、桜楽呼びってことは、ナゾ子は神楽さんの妹なんですか?」
「そうよ、まあ、顔はあんまり似てないし気づかなくても無理はないかもね。」
「今思うとなんとなく雰囲気が似ているような、何というか、笑顔で人が殺せるタイプと言うか、、、」
「要ちゃん?喧嘩売ってるの?」
神楽さんはあくまで笑顔であるが、神楽さんの背後に修羅の顔が現れている。
「そ、それですよ!それ!」
「まぁいいわ、要ちゃん、悪いけど桜楽のこと任せてもいいかしら?なかなかやんちゃしてるみたいでね〜」
「これでもいちおう担任ですから、任されるも何もないですよ」
「あら、要ちゃんもしっかり先生してるじゃない、じゃあお願いね。
それから、最近この付近で、無能力者の若い女性が、行方不明になる事件が多発してるの。
私の監視網を潜り抜けてるってことは、神術を使用しないで、何者かに拐われてる可能性があるのよね〜。
うちの生徒も標的になる可能性があるから、ちょっと気を使ってくれると助かるわ。」
「おっす。じゃあちょっと今から見回りでもしてきます。」
「お願いね、、、」
神楽さんは、珍しくどこか悲しい顔をしていた。もしかしたら、知り合いに行方不明になってしまった人がいるのかもしれない。
神楽さんは近畿地方と中部地方を統括するグランドマスターであるため、非常に多忙を極めている。
他のグランドマスターに比べれば、かなり狭い統括範囲であるため、学園長としての仕事もこなすことができているようだ。
ただ、この様子からして保健室に入り浸っているようなので、学園長の仕事は誰かに押し付けてる可能性が高い。
この人は、昔からそうだ。面倒ごとは他人に押し付けて、好きなことをする悪魔のような人間だ。
この人が、強大な力を持っていると思うと寒気がしてくる。
冗談はさておき、まぁあながち冗談でもないが。
とにかく言えるのは、神楽さんがあんな顔をしていたということは、多少まじめに行方不明の原因を突き止める必要がありそうだということだ。
と思ったのだが、今日一日全くの成果なし。
最悪アリスに頼むか?
いや、アイツは面倒だからやめておこう。
世の中そんなに甘くないよなぁ。
そもそも、あの神楽さんが原因を特定できてない時点で、めちゃくちゃ難易度高いんだよなぁ。
1番手っ取り早いのは、行方不明になる瞬間を抑えることなんだが、、、
明日からは、うちの女生徒たちをつけてみるか。
いや、これはストーカーとか不審者じゃなくて、あくまで原因究明のためだから!だから!
生徒たちを囮にするようで、悪いが助ければ文句言われないだろう。
お読み頂きありがとうございます。
広告の下にある評価欄をつけていただけると幸いです。よろしくお願い致します!




