1 担任になりました
「おぬしに力を授ける」
自分の部屋でぼーっとしてたら、いきなりそんな声が聞こえてきた。
「へっ!?」
声が聞こえてきた方向に、恐る恐る振り向くと、ギリシャ神話の主神ゼウスを思わせる姿かたちをした人物?がそこにはいた。
普通部屋にいきなり見知らぬ人が現れたら、恐ろしく怖いが、目の前の老人に対しては不思議と恐怖という感情は芽生えなかった。
「というても、すでにお主は力を覚醒させておるようだな。では、この力を授けよう。」
いきなり現れたやけに神々しい老人は、どこからかそれを取り出して渡してきた。
なんか後光?がさしてるんだが、、、
状況が全く理解できないまま、とりあえず差し出されたものは受け取っておく。
なんかやけに禍々しいオーラみたいのを感じるような、、、
「お主の力は常に世界を滅ぼす可能性を秘めておることを忘れるな。しかし、使いこなせるようになれば、絶対的な力となるであろう。」
「はぁ〜、急にそんな事言われても、そもそもあんたは誰なんですか?」
「はっはっはっ、わしともあろうものが、これは失礼したな、わしは神じゃよ。まあ、急には信じられんかもしれんがな。」
神!?
たしかに神々しいオーラが出ているような気がするけど、、
「これから世界は混沌に包まれるじゃろう。わしらが降臨したことで、人間のリミッターは解除され、本来の力を取り戻す。おそらく、その力を使い世界各地で人々の殺し合いが始まるであろうが、決してお主は力を使ってはならぬ。これだけは約束してくれんかの?」
「はぁ〜、まあ分かりましたけど、俺の力ってそんなに危険なんですか?」
「人にはあまりにも手に余る力じゃろうな。少し詳しい話をしてやろう。その前に、1つだけ教えておく。1人の少女を探せ、アメリカにおるはずじゃ。その少女こそ、お主が力を制御する上でのカギとなるであろう、、、」
♢♢♢♢♢♢♢♢
西暦2025年8月10日、世界に七柱の神が降臨した。
神々の降臨と同時に、人類は科学によって説明不可能な未知の力を手に入れた。
その力を人々は神聖力と名付けた。
この日こそが審判の日である。
人類は神聖力の強さにより、上からマスター、プロフェッサー、ナイト、エスパー、クラウド、そして神聖力を持たないレジスタントという階級制度を作り出した。
また、神々は去り際、人類にある言葉を残したという。
「神の子よ、世界を災禍が駆け巡る。力ある者集いて平安もたらすべし。いつの日か、七撰の王が現れる。」
予言の王は七神撰王と呼ばれるようになり、七柱の神とともに信仰の対象となった。
しかし、七神撰王は一度たりとも人類の前に姿を現してはいない。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
新世界歴335年4月7日
「今日からお前たち"無能"クラスを担当することになった敷島要だ、1年間よろしく!」
"無能"のところでこのクラスのほぼ全員が苦い顔をした。それも当たり前だ。
完全能力至上主義のこのご時世に、能力を持ってないなんて、生きて行くだけで大変だからな。
しかし、実際、この世界にはかなりの数、無能力者がいる。彼らはレジスタントと呼ばれ神に抗ったものとして、ほとんどの国で差別されている。
「それでお前たちは"無能"な訳だが、この1年間どうしたい?お前たちは何がしたい?」
「無能、無能うっせーんだよっ!!!そんな事は重々承知してんだよっ!こっちはよっ!!」
「あなたには大層なお力があるのかもしれませんけど、能力者だからって何が偉いっていうんですの?教師がそんな態度を取るなんて最低ですわっ!」
まずい!非常にまずい!俺の可愛いい生徒たちに囲まれて、楽しい教師ライフを送るという計画が…
怖い怖い、俺の可愛い生徒たち(仮)がものすごい形相でこっちを睨んでる。
どうやら"無能"というのはこいつらにとってNGワードだったらしい。
「別に俺に能力があるなんて誰が言ったよ?(無いとは言ってない)」
「ええぇぇぇぇー!あんた能力者じゃないのかよっ!なんだよ、早く言えよ〜どおりで力を感じないと思ったんだよ〜」
なんだ?急に馴れ馴れしくなったな。しかし俺の計画がおじゃんにならなくて良かった〜
というかさっきからずっと気になってたことが1つ、
「なんじゃこのボロ教室はぁぁぁぁぁーーーー!!!」
おっと今度はドン引きされてしまった。
いきなり叫んだんだから、この反応は当たり前だろうが、この教室のありさまを見て叫ばない奴はいないだろう。たぶん。うん、きっとそうだ。そうであってほしい。
いつどこからGが出てきてもおかしくないという感じだ。
というかさっきから、どこからかカサカサ聴こえてくるのは幻聴だろうか…
窓は建て付け悪く隙間があり、そこから抜けてくる風がかなり寒い。
さらに、扇風機1台とストーブしかない。
こんな状態でこいつらはどうやって夏や冬を越してきたのだろうか。
この事はあとで聞くとして、新しいクラスの始まりと言えば定番のやつやっちゃいますか。
「なぜか学園長からお前たちのこと全く聞けてないんで、とりあえず自己紹介お願いしてもいいか?」
やっぱいいな〜このセリフ!死ぬまでに言いたいセリフランキング54位!
えっ?何位まであるのかって?
只今342位までございます。なにぶん暇だったもんで、
その言葉に最初に反応したのは、俺に最初に文句を言ってきた、ちょっとヤンキーぽい見た目をした生徒だった。
この時代に滅多にお目にかかれない学ランを、ヤンキー風にアレンジしてる。
ちょっとカッコイイって思ってしまった。が、今の時代にこの服装を見て俺みたいに思う奴は、まぁ、まずいないだろうな。
「俺は手賀崎忍ってんだ!これでも手賀崎流の総師範をやってる!得意なことは喧嘩!売られた喧嘩は必ず買う!そこら辺の能力者より強い自信はあるぜ!」
手が先?で、喧嘩好き?こんな名前と中身があってる奴、なかなかいないぞ。
しかも、総師範⁈
手賀崎流っていうくらいだから何かしらの武道の流派なんだろうけど武道家って喧嘩とかしちゃいけないんじゃないのかよ!
能力者より強いとか言ってるし突っ込みどころ満載過ぎる。
手賀崎の自己紹介が終わって次に立ち上がったのは、2番目に俺に文句を言った奴だ。
この国でも珍しくなくなった金髪で、みるからにプライドが高そうだ。
金髪と言っても染めたような、ギャル的な感じではなく、自然な金髪で何処かのお嬢さまといった感じだ。
顔はかなり整っているが性格が良さそうには見えない。
「私は神崎エミリアですわ。神崎家に伝わる薙刀術を少々身につけていますの。私も、そこら辺の低能な能力者に遅れをとることはありませんわよ」
批判された時から薄々気になっていたが
"ですわ" だと⁈
このご時世にどんな教育受けたらそんな語尾になるんだ?
長年生きてきたが、"ですわ" 口調の人には初めて会った。
しかもこいつも能力者には遅れをとらないとか言ってるしこのクラスなんなの?
やばい奴しかいないの?
だんだんこのクラスでしっかり教えられるのか不安になってきたんだが…
と、ここで誰も立たなくなってしまった。
確かに教室を見回しても今の2人以外は自己主張激しそうな奴がいない。
周りをキョロキョロ見ている気が弱そうな男子もいれば、我関せずといった態度でずっと窓の外を見ているクール系女子もいる。
ホントに個性豊かというか、飽きが来なそうなクラスだ。
誰も自己紹介しないせいで、キョロキョロしてる子の顔がだんだん青ざめてきてしまったので仕方なく俺があてることにした。
「そこのさっきからキョロキョロしてる君、次お願いできるか?」
「えっ?ぼ、ぼ僕ですか?ぼ、僕なんかが名乗れるような名前はあ、ありません!」
「いや、名前くらい言えるだろっ!」
「ひっ!ご、ごめんなさい!僕の名前は…
ひっ!やっぱり無理ですっ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」
「あ、うん。なんかごめん」
どうして俺が謝っているんだろうか?というか、どうしてこいつも謝っているんだろうか?
とりあえず分かったのはこいつは恐ろしく、自分に自信がなく、自己評価が低いということだけだ。
以上。
いや、情報が少なすぎやしませんか?
名前くらいは教えてくれると思ったんだが…今のこいつに何を聞いても答えてくれそうにないな。
名前が分からないのは不便すぎるからキョロキョロしていたし、とりあえず俺の中でこいつはキョロちゃんということにしておこう。
キョロちゃんと仲良くなることは、このクラスで教師をやっていく上で、かなりの重要事項になりそうだ。
そんな事を考えていると、さっきからずっと静かにこちらを見つめ続けていた、謎が多そうな女子が不意に口を開いた、
「せんせ〜い?そのちから、どこでてにいれたの〜?」
このナゾ少女の言葉にいの一番に反応したのも手賀崎だった。
「っな!」
「おいっ!どういう事だよ!先生は無能力者って言ってただろっ!俺も力を感じ取れないし、適当なことばっか言ってんじゃねぇーぞっ!」
「さすが、しのぶちゃんはのうきんだね〜」
「のっ脳筋だとっ!おめぇ俺が1番気にしてることをよぉ〜よくも言ってくれたなっ!」
「気にしてんのかいっ!まぁまぁ、喧嘩はやめよう、な?」
「先生は黙っててくれ、こいつは言っちゃいけねぇ事を言っちまった。ここまで言われて引き下がってるようじゃあ手賀崎流の名折れだぜ!」
「あっ、はい」
てか、こいつどんだけ脳筋なこと気にしてんだよっ!安っ!手賀崎流安っ!ただ、脳筋って言われただけで使うのかよ!
手賀崎に、"脳筋"と言うのはNGと。
今日だけですでに2つのNGワードが見つかるとは、この調子でいったら1ヶ月くらいしたら手賀崎とは会話できなくっているのでは?
こんなくだらない事を考えている間にも2人の喧嘩はつづいている。
「わたしにけんかをうるんだ〜、しのぶちゃんまだわたしに、いちどもかてたことないのに〜
やっぱりのうきんはちがうねぇ〜」
「いっ今までは、おめぇが女だから、てっ手加減してやってたんだよっ!だが、今回はさすがの俺でもブチ切れだぜ!本気でやってやるよっ!表出ろやゴラァ!!!」
死ぬまでに言いたいセリフランキングのかなり上位にランクインしている
"表出ろやコラ"
をこんな簡単に使いやがった!
なるほど、こういう場面で使えばいいのか。こいつを見てると勉強になるな。
くだらないことを考えているうちに2人は外に出て行ってしまった。
2人につられて他の生徒たちも外に出て行く。
みんなの反応からするにこのようなことは日常茶飯事のようだ。
一応、今ロングホームルームなんだけどなぁ〜
先任の人はどうしてたんだ?ってか、普通はクラスの引き継ぎとかあるよな?
まさか、このクラスに耐えきれなくなってどこかに逃亡したとか?
後で、学園長に確認しよう。
外に出ると2人は少し距離を空けて向かい合って立っていた。
「さぁ〜いつでもかかってきていいよ〜」
「おめぇの敗因は俺を舐めきってることだぜっ!」
そう言って手賀崎は動き出した。
だが、そのスピードはとても無能力者が出せるようなものではなかった。10メートルの距離を勢いも付けずにたった一歩でつめるなんて、ただの人間が出来る事ではない。
ここにきて気づいたが、謎が多そうな女の子の名前を、手賀崎がキレたおかげで聞きそびれてしまった。
とりあえず名前を聞くまでは "ナゾ子" って呼ぶことにしよう。
えっ?
ネーミングセンスが壊滅的?
分かりやすい方がいいだろうが、分かりやすい方が!
手賀崎に迫られたナゾ子は顔色1つ変えずに後ろにバックステップをした。
が、手賀崎はそれを読んでいたようでさらにもう一歩踏み込み、一歩目よりさらに加速してナゾ子に迫った。
これには流石にナゾ子も驚いた顔をしたが、手賀崎の手が届きそうになったその瞬間、ナゾ子は、顔にうすら笑いをうかべ、いきなり真上に跳躍した。
手賀崎の突撃は虚しく空振りし、しかも勢いをつけすぎたようで、止まれずにおんぼろ校舎に突っ込んだ。
ドォォォーーーン!!!
壁を突き破って中に突っ込んでいった。
いくらボロくてもまさか壁を貫通するとは思わんかったわ。
校舎に大穴が空いてしまった訳だがこの責任は誰がとるのだろうか?
まさか俺じゃないよな?いやいや、まさか…
よし全力で手賀崎に責任を押し付けよう。
手賀崎の自滅で終わったと思ったら、擦り傷程度しかない余裕そうな様子で、手賀崎が自分で開けた穴から出てきた。
「おいおい、大丈夫か?」
「いや〜やっちゃったぜ〜、責任はしっかりとるから、先生どうか許しくれ!」
「お、おう。いや、なんかすまん…」
「なんで先生が謝るんだよ!悪いのは全部俺だから」
「いや、こっちの話。」
男っ!いやむしろ漢っ!責任押し付けようとか考えてた俺はなんなの?
これからは手賀崎のことを師匠と呼んだ方がいいのでは?
後でじっくり検討しよう。
手賀崎はまだやる気のようで、すぐにナゾ子の方へ向き直った。
「まだやるの〜?なんどやってもかわらないよ〜」
「うっせぇ!俺はまだまだやれるぜっ!」
「つきあわされるほうのみにも、なってほしいんだけどな〜」
「いくぜっ!」
手賀崎はナゾ子の言葉を無視してまたもや突っ込んでいった。
さっきと全く同じ構図になるが、今度はナゾ子が手賀崎の前から消えていた。
手賀崎は見失ったようで、驚いた表情をしていたが、すぐに後ろからの強烈な気配に気づいたようだ。
手賀崎は素早く振り返り、その勢いで殴りかかろうとする。
「なっ!?」
振り返ったそこには、誰もいなかった。
そこで、手賀崎は、再び背後から強烈な殺気が、放たれていることに気づいた。
だが、気づくのが一瞬遅く、背中をナゾ子の強烈な回し蹴りが襲った。
手賀崎はまともな防御も出来なかったようで、かかとと頭がくっつくんじゃないんかってくらい体をくの字にして吹っ飛んでいった。
怖すぎる…
能力者でもない少女がただの蹴りだけで人を吹っ飛ばすなんて、誰が聞いても冗談だと思うだろう。
あ、手賀崎の心配するの忘れてた…
手賀崎は、くの字に折れ曲がったまま、どこかへ飛ばされていった。
どうやら、先ほど自分で空けた校舎の穴へと消えていったようだ。
ナゾ子の様子からして、死んでるってことはないだろうが、流石に心配だ。
凄く心配してますよ、はい。
先ほどは、すぐにぴんぴんした様子で出てきたが、今回はそういう訳にもいかないようで、穴が開いた校舎からは、なんの音も聞こえない。
とりあえず穴から様子を伺ってみると、校舎の反対側の壁にも穴が空いてしまっていた。
どうやら校舎を貫通して外に出てしまったようだ。
校舎の中を通って、グラウンドと反対側に出ると、手賀崎が腰をピクピクさせながら倒れていた。
意識はあるようだが、動けないでいるようだ。
「大丈夫か?」
「お、俺の大事なところが…」
「大事なことろ?どっか折れてるようなら病院連れてくぞ?」
「金玉ですよっ!壁にもろに直撃した…」
チーーーン
背中から腰あたりを蹴られたから、大事なところを突き出すような姿勢になってしまったんだろう。ご愁傷様です。
まさか、ナゾ子はコレを狙ってやったのか?そうだとしたら怖すぎる、男の敵すぎる。
「とりあえず保健室行くか?ここでずっと倒れてもらっても困るし、ベットで休め」
「わ、わかりました。ただ、ホント慎重に運んで下さい。マジでお願いします」
「それにしても情けないな〜、あんだけたんか切っといて、手も足も出ないとはね」
「くっ、、、グーの音も出ないです」
「とりあえず少し待っててくれ、他の子たちを帰らすから」
また穴を通って校庭に出ると、生徒たちはちょうど校舎に入ろうとしていた
「おーい、みんなちょっと聞いてくれ!俺は手賀崎を保健室に連れてくから今日は解散!
また明日な〜、気をつけて帰れよ〜」
「ちょっとやりすぎちゃったかなぁ〜せんせ〜い、しのぶちゃんだいじょうぶだった〜?」
「おっおう、なんとかな、次やるときはもうちょっと手加減してやってくれ」
ナゾ子はさっきの発言といい、実力といい要注意な生徒だということは分かった。
「そ〜よかった〜」
ナゾ子は薄ら笑いを浮かべながら言った。その瞬間ゾッとした気がしたが、気のせいだろう。
とりあえずナゾ子を怒らせたら、マジで殺されそうだ。この子は笑顔で人を殺せるタイプの人間だ。
そんな会話をしているうちに、他の生徒たちは帰り支度をするために、校舎に入っていった。
生徒たちの帰りを見届けると、穴を通って手賀崎のところへ向かった。
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