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14 ひみつ道具アリス

手賀崎家に来た2人はやっと母屋にたどり着いた。

歩いて5分ほどかかったが、趣深い純和風の庭を見ながら歩く時間は、2人にとって至福のものだった。


母屋も立派な造りをしていて、火の打ちどころがないほど素晴らしい家である。


あの神楽さんがこんなに素直な表情を人前で見せるなんて珍しいな。

そういう要が1番興奮していたのだが、、、


それ程までに門を入ってからの道や母屋は日本人の心をときめかせるものであった。


2人は客間に通された。立派な梁に美しい掛軸、もはや世界遺産にした方がいいんじゃないか?


暫くすると手賀崎が、お茶を入れて持ってきてくれた。

こいつこの見た目で女子力があるのか。


「粗茶っすけど。」


「わざわざすまんな、ありがとう。」


「それで何があったのかしら?」


忍は顔に影を落とすとゆっくり語り始めた。


「数日前から妹が行方不明になってまして。それの原因がおそらく俺なんすよ。」


「まだ見つかってないのか、、、原因ってどういうことだ?」


「それが、土曜日に妹と喧嘩してしまいまして、怒った妹が家出しちゃったんすよ。その後、今まで行きそうな所とか探し回ったんすけど見つからなくて。家出先で誰かに攫われたとかだったら完全に俺の責任です。今日も朝から探して、一旦家に帰ってきたところでちょうど先生たちがいらしたって感じっす。」


「そういうことか、ただ妹さんが誘拐されたからといって手賀崎の責任になるなんてことはないからな。」


「妹さんは何歳なのかしら?」


「今年で14になります。あと名前は手賀崎詩音っす。」


「反抗期ってとこかしら、この時期の女の子は色々大変なのよ。とりあえず分かったわ。こちらでも探してみるから。」


「そうですかね、確かに最近口喧嘩が増えたような気はします。すみません、ご迷惑をおかけしますがお願いします。」


「ちなみに恨みを買ったりとか何か心当たりはあったりしないか?」


「俺は恨みを買いやすい性格してるんで心当たりはたくさんありますけど、気になるといえばうちの道場を譲れって言ってくる連中がいるくらいですかね。」


コイツ恨みを買いやすいって自覚あるのか。それにしても、この道場を譲れと言ってくる連中かぁ確かに怪しいかもな。


「そいつらの話しを詳しく聞かせてくれないか?」


「分かりました。うちの学園の生徒も何人か在籍している新武闘派の金華山道場の連中っす。この土地の売却の話しを持ちかけてきたり、しつこいんっすよね。」


新武闘派って、武術と神術を組み合わせて戦う流派のことだよな。

手賀崎流は昔ながらの身体能力のみを使って戦う流派って言ってたから、組織的に対立しているって感じか。


さらには、うちの学園で手賀崎に負けて逆恨みしている生徒が在籍しているとすれば、かなり信憑性が高まるな。


狙いはこの道場か土地ってところか。


「だいたい分かった、ありがとう。あといちおう詩音ちゃんの写真を見せてもらってもいいか?」


「要ちゃんってやっぱりロリコンなのかしら。」


神楽さんがサラッと恐ろしい一言を言ってきた。今は言っちゃあかんでしょ!よく空気が読めないと言われる俺でも分かるぞ。


それを聞いた忍も、写真を見せようとしていた手が止まる。


「ちょっと何言ってるんですか!違うからな手賀崎!」


必死の弁明を試みるも、手賀崎の疑いは晴れないようで今もゴミを見るような目で見てきている。


「神楽さん!もう、どうにかして下さいよ〜。」


結局、要は原因である神楽に泣きつくしか無かった。

神楽はそれを見て満足すると、また変なことを言い出した。


「さっきのは冗談よ、まぁ本当のところは分からないけどね。」


「本当に違うからな!」


そうしてやっと手賀崎は詩音ちゃんの写真を見せてくれた。

ただ、今も警戒はされているようだ。


この状態で、アリスと一緒に出かけてるところなんて見られたら、、、

俺の評価が完全に変態になってしまう。


ただ、詩音ちゃんは正直かわいかった。本当に手賀崎と血が繋がってるのか疑いたくなるような端麗な容姿に、中学生とは思えないほど発育のいい身体、金華山道場のやつらとか関係無しに変態に攫われた可能性もあるなぁ。


言っとくけど俺ではないからな!


「じゃあ私はうちに在学してるっていう金華山道場の生徒たちに話しを聞いてみるわね。要ちゃんはどうするの?」


「危険な可能性があるので、俺は手賀崎と一緒に探してみます。」


「そう、じゃあ私は失礼するわね。忍ちゃん、お邪魔しました。」


「うっす、門まで送って行きますよ。初めての人はだいたい迷うんで、」


家の中で迷うってどんだけ広いんだよ!

俺の家は1Kだっていうのに、しかも最近はアリスがうちに入り浸っているせいで、さらに生活スペースが奪われてる。


部屋余ってそうだし、居候させてくれないかなぁ。もしかしたら、手賀崎に弟子入りすればいけるのか!?

後でゆっくりと検討しておこう。


「あら、わざわざありがとうね。でも、大丈夫よ〜、私は少し特別だから。」


「そうっすか、じゃあ色々と頼みます。」


「頼まれたわ、じゃ要ちゃん、忍ちゃんまた後でね。」


そう言って神楽さんは客間を出て行った。

神楽さんのことだから、客間を出た瞬間に瞬間移動して、おそらくもう学園に着いているだろう。


人数がいきなり変わったことによって、2人とも黙っていたため、少し気まずい雰囲気が出来上がってしまった。


「じゃ、じゃあ俺たちも探しに行くか。」


沈黙を先に破ったのは要だった。ただ、少し緊張したことによって声が震えてしまってはいだが、


今回もアリスに頼った方がいいかもしれないなぁ

生贄は俺の休日か、、、


生徒の妹が行方不明になって全力を尽くさないのも担任としても人としてもダメだろうし。


まぁ、人の命には変えられないしな、それよりも、手賀崎から完全にロリコン認定されそうな方がよっぽど怖い。


「手賀崎、今からある人を呼ぶから変な目で見るのだけはやめてくれ。」


「は〜、分かりました。」


誰もいない空間に向かっていきなり呼びかけることのおかしさにやっと気づいたのか、要はあらかじめ忍に言ったようだ。


「アリス!ちょっと来てくれ!」


天井に向かっていきなり叫び出した要を見て、忠告はされていたが、忍は引き気味であった。


「なに?」


今日は週末にサービスしたおかげで少し機嫌が良いようだ。


忍はというと、いきなり現れたアリスにびっくりして座椅子ごと後ろに倒れていた。


「そこで倒れてる手賀崎の妹が行方不明になっちゃってな、探すのを手伝って欲しいんだ。」


「ちょっと待って下さいよ!いきなり現れたみたいっすけど、この子は誰っすか?」


「あぁ、コイツはアリスだ。俺の知り合いで、色々と助けてもらってるんだ。」


「何よ!コイツ呼ばわりなわけ、手羽先とかいうあんたもなんだか暑苦しいわね〜。」


「なんなんすか?この生意気なおチビちゃんは?」


おっと、アリスと手羽先じゃなくて手賀崎は相性が最悪のようだ。

どっちも沸点が低そうだもんなぁ。あぁ、手羽先食いたくなってきた。


要は2人をなだめるために、手賀崎に近づいてアリスには聞こえないように耳元で話した。


「まぁまぁ、アリスはこう見えてもすごいやつだから手賀崎は尊敬しないとダメだぞ。

あと、アリスはチビに過剰反応するから、次言ったらマジで死ぬよりもすごい苦痛を味わうはめになりかねない、気をつけろよ。」


手賀崎は不満な顔をしていたがなんとか納得はした様子だ。


要は次にアリスに近づいて耳元で話し始めた。

アリスは顔を赤くしていたが、要は全く気づいていなかった。


「アイツはお前と違って怒りやすいんだ。アリスはもう大人だろ?ここは、寛大な心をもって手賀崎に接してはくれないか?」


アリスは耳元で要に囁かれたことによって思考できない状態になってしまっていたが、頷いてはいるようだ。


はぁ〜、なんで俺がこの2人の仲をとり持たなくちゃいけないんだよ、

疲れるしアリスには早めに帰ってもらおう。


「それで、その子の妹を探せばいいのよね?でも、ちょっと難しそうね。」


それはそうだ、アリスの力がいくら凡庸性が高くても、この広い世界から全く知らない1人の人間を見つけ出すのは、難しいだろう。


「そうね〜、その子の血を使えば何とかなるかもしれないわね。」


「血ならいくらでもあげますんで、、、」


「一滴で良いわよ。ここにお願い。」


アリスはそう言うと、自分の小さな手のひらを手賀崎の前に差し出した。


手賀崎は、どこからか針を持ってきて指の腹をさして出血させた。


垂れた血はアリスの手に触れる前に空中で止まると、それがだんだんと針の形に姿を変え、気づくと美しいコンパスが出来上がっていた。


「このコンパスは、あなたが今1番探しているものの方角を指し示してくれるわ。これを使えば妹さんを見つけられるはずよ。」


あれ?この設定、どっかの海賊映画で見たことあるような気がするんだが、気のせいだろうか?

気のせいということにしておこう。


渡された手賀崎は、本当にこれで見つけられるのかまだ半信半疑のようだ。


「さすがアリスだな!ありがとう。じゃあ、後はこっちで何とかするからゆっくり休んでくれ。」


「なんかノケモノ扱いされている気がするけど、まぁいいわ、じゃあまた後でね。」


よし!アリスを早々に帰らせることに成功した。アリスのコンパスがあれば、すぐに見つかるだろうしなんとかなったな。


ただ、ほんの数日前に猫型ロボットの秘密道具のようにアリスを扱うのを止めようと決意したはずの要はどこに行ってしまったのだろうか?


「よし、とりあえずそれを使って詩音ちゃんを探しに行こう。」


「そうっすね。行きましょう。」


忍はともかく、要はもう事件を解決したかのような足取りで詩音を探しに行くのだった。


読んで頂きありがとうございます。

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