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コード・ゼロ  作者: 黒雪
21/22

黒を焼く白

 活動復帰。もうすぐ一段落つきそうです。


 「・・・雪那!?」

 冷気の方向へ着いた紫苑と飛鳥は、目の前の光景に愕然としていた。

 「・・・待て」

 咄嗟に飛び出ようとした飛鳥を紫苑は制止する。

 「っ!何故止めるのです!」

 飛鳥は険しい形相で紫苑を睨む。しかし紫苑の眼はいつもの浮ついたものでは無く、冷然としていた。

 「はい落ち着け。なら今お前があの間に介入して、雪那をどうにか出来るのか?」

 「・・・それはっ・・・!」

 指摘され、飛鳥は悔し気に奥歯を噛み締める。

 「なら・・・どうしろというのです。あのままでは・・・」

 「まあ、狂魔に呑まれていずれ死ぬな」

 「・・・!私はそれを望みません!」

 「俺だって望んでいない」

 だから、と紫苑は続ける。

 「今回は俺に任せてくれねぇか?」

 「・・・は?」

 紫苑はその眼を揚々としたものに変え、口の端を吊り上げた。

 「・・・出来るの?」

 その笑みに飛鳥は希望と疑心を含んだ表情で訊いた。

 「さーな。・・・あれは完全な狂魔じゃない。いや、完全体よりやばいかもしれんが、あれを抑え込むことは出来る」

 「・・・本当に?」

 「多分。おそらく」

 「・・・」

 飛鳥が、紫苑に落胆の眼を向ける。

 「・・・雑談してる暇じゃないな。さて、期を窺わねぇと・・・」


 目の前の現象に、男は戦慄を覚えた。

 複数体の悪魔が雪那に、否、正しくは雪那の纏った黒い冷気のヴェールに触れた瞬間、粉塵と化したのだから。

 「このタイミングで狂魔化したか。ちぃ、質の悪い・・・」

 流石に男も狂魔の力は知っている様で、その顔から余裕が消える。

 「・・・まあいい、データが回収出来れば十分だ。・・・あれの足止めをしろ」

 「了解」

 そういうと男は、少女を盾に逃走を図る。

 「・・・ない」

 「!?」

 本来人語をまともに操れはしない筈の狂魔化した雪那から、小さい声が漏れた。

 「・・・逃がしは、しない」

 既に光を失った眼で、雪那は小さく、されど圧を感じさせる声で言った。

 同時に辺り一面が、黒い冷気によって一つの空間を作った。

 「・・・何だ、この能力は・・・!」

 雪那が手をかざす。

 冷気が収束し、圧縮され、黒い氷の槍を模る。

 それは、常人の作りだせ得る物をはるかに越えて長く、強靭だった。

 「塵と化せ」

 柱、と言っても相違ない程の槍が男を対象にして、放たれる。

 人など容易く屠りそうな氷の槍。

 それを、少女は巨大な腕の様に変貌した髪で砕く。

 少女の方も先程までと様子が違う。その眼は明確な殺気を持ち、その肌は部分的に黒く変色している。

 「まさか、ここで使う羽目になるとはな・・・」

 後方で、男が呻く。

 狂魔の類、だろうか。

 「そいつを殺せ!」

 男が命じると、少女は雪那へ食らいつくように襲いかかる。

 「・・・邪魔」

 再び雪那が手をかざすと、少女の足元が急速に凍りつく。

 それは規模を増し、少女の胴体まで封じ込めた。

 「・・・!」

 「邪魔をするなら・・・貴方も、壊す」

 雪那の右腕が氷で造形された巨大な爪を纏う。

 その動きにもうためらいなど消えていた。

 雪那が構えを取った、と同時に。

 黒い冷気の壁に、穴が開いた。

 轟音と共に、雪那の目の前に飛び込んだ紫苑が、雪那の手を弾いた。

 「・・・!」

 紫苑が目の前に現れた瞬間、僅かに雪那の動きが鈍った。

 「雪那、それ以上呑まれるな。こいつを殺せば、お前は戻れなくなる」

 紫苑は武器を持っていなかった。

 雪那の斬撃を、素手で弾いた、という事になるが。

 「・・・貴方まで、邪魔をする!」

 「雪那・・・」

 攻撃を再開しようとする雪那に、紫苑は悲観するように呟いて。

 「すまん」

 そう言うと、構えを取った。

 そして、雪那へ拳を向ける・・・前に、紫苑は体を百八十度ひねると、少女と、男がいた方向に拳を振るった。

 その、たったの一撃で。

 地面は波打つように抉れ、膨大な衝撃が冷気の壁ごと少女と男を吹き飛ばした。

 「・・・!?」

 「ほんとなら、あんまりしたくなかったんだが。・・・お前があれを殺すよりましだろ」

 その衝撃の奔った範囲からは、異様に白い炎が上がる。

 「・・・さて、未練は無くなったろ」

 そして、炎が上がると同時に紫苑の周りからも、否。紫苑から溢れるようにして白いオーラが紫苑を包み始める。

 紫苑の眼が、紅に染まり、髪は白銀を帯びる。

 雪那とは相対し、そのオーラは辺りを焦がす程の熱量を持っていた。

 「来い雪那。悲痛も、憎悪も、罪悪も。その狂った力に乗せてくるといい」

 そう言うと、紫苑は雪那に向かって歩き始める。

 「なんで・・・っなんで!」

 瞬時に、氷の大剣が紫苑に向かって振るわれる。

 だが、紫苑に触れる直前、それは塵となり、霧散する。

 「どうして・・・殺した!」

 自分の感情の矛盾にすら気付かず、雪那は叫ぶ。

 「・・・そうか。やっぱ、まだ雪那は雪那なんだな」

 この状況ででも、紫苑は少し安心したように微笑を浮かべた。

 「・・・っ来ないで」

 雪那が手をかざす。しかしやはり紫苑の纏う焔がそれを弾く。

 「雪那。お前は・・・お前なら、きっと・・・」

 紫苑が雪那に手を伸ばす。

 「・・・雪那、戻ってこい」

 「あ・・・う・・・」

 微かに、雪那の眼に光が戻る。

 だが。

 正気を取り戻そうとするのを、拒むかの様に。

 冷気が刃となって紫苑を襲った。

 「・・・ッ」

 「あ・・・駄、目・・・止めて・・・」

 雪那が呻く。しかしその言葉に反して、冷気は紫苑を拒み続ける。それはまるで、紫苑を畏れるかのようだった。

 紫苑はそれを避けなかった。

 刃が紫苑の腕を切り裂く。

 紅い鮮血が、にじみ出る。

 「雪那」

 「せん・・ぱい・・・」

 かすれた声で、雪那は紫苑を呼んだ。

 「私は・・・この力を持つべきじゃ、なかった・・・」

 「・・・」

 「少ししか、先輩の事・・・まだ、知れていませんが・・・一つ、聞いてくれませんか・・・」

 それを聞くと、紫苑は無言で返した。

 雪那は、自分を必死で抑え込みながら、紫苑に近付いた。

 「私を・・・殺して、下さい。私がまだ、人である内に・・・!」

 それは、雪那が彼女の中での、最善の答えだったのだろう。

 「・・・そうか。ま、聞けねぇけど」

 「え・・・」

 そう言い放つと、紫苑は負傷した腕で、雪那を押し倒した。

 「・・・!?」

 「・・・俺も、お前の事を知ってる訳じゃねぇけど。

 きっと、俺達が会ったのは偶然じゃなかった」

 「・・・?」

 その雪那を見る眼は、落ち着いていた。

 「・・・本当なら、さっきので御して欲しかったんだが」

 そっと、紫苑が雪那の胸元に手を置いた。

 その瞬間、雪那から、先程よりも猛烈な冷気が紫苑に放たれる。

 「な・・・!?」

 だがそれはもう、紫苑を止める力を持っていなかった。

 「悪い。・・・死ぬほど痛いかもしれないが、耐えてくれよ」

 「え―――」

 紫苑が言い終えると、流血が、印を形成し始める。

 それが、雪那に触れた瞬間。

 「―――っ!!!」

 言葉に出来ない激痛が、雪那の全身に走った。

 紫苑の腕に、冷気が吸い込まれていく。

 痛みの激しさ故か、雪那は悶えながら、紫苑の腕を掴む。それは、少女の力とは思えない程に強い。

 しかし、紫苑の腕はその程度では動きはしなかった。

 血の印が色褪せていくと、同時に雪那の手も力を失っていくように弱くなる。

 「・・・はぁ。この調子なら収まりそうだな」

 やがて印が消えると、雪那の手は力を失って、その場で倒れ込んだ。

 「・・・暫く眠っているといい。さて後は」

 雪那が気絶した事を見ると、紫苑は立ち上がった。もう白銀の髪も、元の灰色に戻っている。

 そんな紫苑の横腹に。

 「ぐべぇあっ」

 重量のある強烈な蹴りが入った。

 その方を見ると、飛鳥が肩を震わせて、紫苑に静かな怒りを持った眼で紫苑を睨んでいた。

 「・・・雪那に、何をしているのです・・・?」

 「いや、ちょ、別に他意はねぇって・・・」

 蹴られた腹部を押さえながら、紫苑は弱々しく言う。

 「・・・ふん。それはそうと、雪那は大丈夫なの」

 「ああ、それに関しちゃ心配すんな。・・・ま、ちょっと強引な手段だから、また発症する可能性はゼロじゃない、が」

 紫苑が答えると、飛鳥は雪那に近付き、抱えた。

 「・・・それと、あの二人は・・・」

 飛鳥が、紫苑の後ろで抉れた地面を見た。一面を覆っていた白い炎は未だ耐えることなく燃えている。

 「・・・」

 何も答えない紫苑に、飛鳥は俯く。

 「ま、生きてるけどな」

 「え・・・!?」

 そう言って紫苑が手を炎に向かって手を掲げると炎は容易く消えた。

 「元々これは物理的に害はない。精神的に相手を束縛する「檻」みたいなもんだ」

 「・・・あえて深くは問いませんけど、つまり二人は生存している、と?」

 飛鳥はまだ少し怪訝そうな顔で言う。

 「いや、男の方だけ、な。見た感じあいつは街の連中とは根本が違いそうだし、情報持ってそうだから」

 「あの、少女の方は・・・」

 「・・・手遅れだ。何らかの能力で人の形を留めていたんだろうが、あれは完全に悪魔化してたよ」

 「・・・っ」

 抉れた地面で、傷だらけで倒れている少女に、紫苑は近寄った。

 もう、その体は冷たくなってしまっている。

 「・・・すまない」

 「紫苑・・・」

 悔いるように、ぽつりと紫苑は呟いた。

 「・・・アクセス」

 紫苑が唱えると、聞きなれた少年の声がどこからともなく聞えてきた。

 『紫苑か。どう、そっちは片付いたのかな?』

 剱の声だ。

 「ああ・・・なんとか、な。裏で手ぇ回してた奴も捕縛した」

 『・・・。了解。こっちももう直に終わるよ』

 「そうか。じゃ、「最後」は任せる」

 『おーけい。・・・じゃ、終わらせてくるよ。随分とギャラリーが増えたけど』

 剱が皮肉めいた事を言うと、紫苑は笑って返した。

 「クク、そりゃよかったじゃねぇか」

 『・・・はぁ。ま、いいよ。こちらが終わったら、何処かで落ち合おう』

 「了解」

 通信が切れる。

 「・・・さ、帰るかね。終末を見届けに」

 

 


 久しぶりのコードゼロ。読み返してみるとやっぱりこれも雑な所が多いなあと。

 流石にこれまで書き直していたら先に進まないので、二章からはもう少し研究していこうかと思います。

 次は後日談、になるでしょうか。

 それでは今回もありがとうございました。

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