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コード・ゼロ  作者: 黒雪
20/22

黒雪姫

 ・・・約、二か月?本当に・・・申し訳ないです・・・。

 数時間前。

 飛鳥と別れた雪那は一人、己の感覚に任せて、街の外側を走っていた。

 「・・・街の内部はほぼ鎮圧された・・・それでもまだ残った魔人は統制を失っていない。・・・まだ管理者は退いていない」

 走りながらも、雪那は感覚を研ぎ澄ませ周囲を探る。

 「かといって機械でもない魔人を遠距離から操れるわけもない。だとするとこの辺りのはず・・・」

 雪那がいるのは街の外に無数にある廃虚。それは街から一定の範囲内に存在する。逆に一定以上離れると忽然と無くなっているのだが、その廃墟には崩れているものがほとんどだが、中には形状を把握できるまでに残っている建造物もある。

 魔人街の監視下から外れたそこは、外法者にとって身を隠すのに格好の場所だろう。

 幾つもの廃墟がある中で、雪那は足を止めた。

 「・・・ここか」

 雪那は眼の先の廃墟を見据えると息を殺して瓦礫に隠れた。

 「・・・この感じ、おそらく間違いない、かな。・・・先ずは隊長に連絡を・・・」

 と、雪那が通信機に手を伸ばした瞬間。

 一体の悪魔が隠れていた雪那を襲った。

 「・・・っ!?」

 とっさに雪那はそれを躱し、悪魔の周りに氷の刃を展開した。

 悪魔はそれにあえなく引き裂かれた。

 「・・・何故、この程度の悪魔に気付かれるはずが・・・!」

 引き裂いた悪魔には目もくれず、雪那は動揺を直ぐに抑え、悪魔が来た方向を警戒する。

 すると雪那を囲むように、悪魔が集まってきた。

 そして。

 「・・・対象、視認」

 「街の魔人の制御はもう切って構わん。対象を排除しろ」

 雪那が見ていた方の廃墟から二人の人間が姿を現した。

 その一人は、人間の姿を保ってはいるものの、その様は明らかに普通の人間の形相では無い。

 だが。

 「・・・!?女の・・・子・・・?」

 その原型は一見して幼い少女だと分かった。

 「・・・女一人、か。ふむ、例の「七の番人」とやらか?」

 そしてもう一人は簡易な武装をした男だ。

 その男は腕に着けられた時計を一瞬見た。

 「・・・?」

 「・・・さて、これ以上居座る理由は無い。だが追手が来ると面倒だ。・・・早急に片付けろ」

 「命令、了解」

 次の瞬間、雪那を囲んでいた悪魔が一斉に雪那に襲いかかった。

 「・・・っ!」

 雪那は氷の粒を、拡散させるように放つ。

 しかし直撃を喰らっても、悪魔の動きは鈍りすらしない。

 「!?」

 それは想定外だったようで、雪那は一瞬回避が遅れた。

 「・・・痛っ・・・!」

 小型とはいえ悪魔、直撃ではないにしろ、一体の悪魔の攻撃は雪那の腕を襲った。

 「個体で自立していない?・・・まさか、あの少女がこの悪魔を・・・あの魔人たちを統括しているという事・・・?」

 雪那は負傷部を冷やし、出血を止める。

 「・・・」

 雪那は地面に手をかざし、止まることなく雪那を狙う悪魔に冷気を放つ。冷気といっても、その温度は悪魔の足を凍りつかせるほどの低温。一時的に止まった悪魔の間を抜け、手元に形成した氷の剣を、雪那は少女の後ろにいる男に向けて振るった。

 しかし、それを少女の刃の様に硬化した髪が、氷の剣を砕いた。

 そしてその何本もの伸びた髪が、雪那を捉える。

 「くっ・・・!」

 悪魔の行動を制限し、少女の攻撃を防ぎ、距離を取る。

 「ふん、こちらを狙うか。命令している俺をやればこいつの動きが止まると思ったのか?」

 男は雪那を嘲るように言った。

 「いや・・・そうか、どちらかと言えば・・・こいつを「狙えない」と言った方が正しいのか?」

 「・・・!」

 それを聞くと、雪那の眼は一層険しさを増した。

 その反応に男は合点がいったように余裕の笑みを浮かべると、少女の動きを止めた。

 「当たりのようだな。なるほど、まさか「惨劇の奏姫」が七の番人とは」

 「・・・っ何故・・・それを」

 「裏では知らない者の方が少ないと思うがな?ああ、表ではすぐに沈静化したらしいが。大方過去の自分と重ねてー」

 「黙れっ!」

 雪那が普段見せぬ怒声で叫ぶ。

 男が言い終える前に、雪那は氷の槍を男に向かって放っていた。

 男も能力者のようで、男はそれを自身の能力で防ぐ。が、雪那の氷槍は男の能力を超えていた。

 少女がいなければ確実に当たってはいただろう。

 「ほう、流石に威力は強いな。・・・だが一つ言っておく」

 男は雪那と距離を開ける。

 「俺をやった所で、こいつは命令を遂行し続けるぞ?」

 「!」

 「つまり、こいつを止められない限り、お前に勝機は無い。我々は止められないぞ?」

 「・・・っ!」

 しかし雪那は男を狙って氷の刃と剣を生成する。

 「・・・さて、雑談の時間は終わりだ。殺れ」

 「了解・・・」

 男が命令すると、周りの悪魔も再び動き始める。

 怒りに染まった眼で、雪那は男に向かって跳躍する。最低限度の回避だけで、小さな被弾は最早考えていない。

 当然少女が男を庇う様に雪那の前に立ち、雪那の攻撃を弾く。

 「あくまで俺を狙うか。・・・七の番人とはいえ所詮は青いな。情は捨てきれんか」

 「それ以上・・・その口を開くなっ・・・!」

 雪那の剣に触れた少女の髪が凍結し、崩れた。

 少女へ追撃はせず、男だけに狙いを定める。

 だがその刃が男に届く前に、一つの黒い塊がそれを遮った。

 「っ!?」

 それは、生きる屍と化した悪魔だった。捨て身同然で、悪魔は雪那に飛びかかっていた。

 「・・・邪魔・・・っ!」

 悪魔を弾き飛ばし、男への攻撃を強行しようとした、が、あまりにも隙が多過ぎた。

その隙に、少女の再生した刃が雪那の腹部を切る。

 「あ・・・ぐっ・・・!」

 否応にも退避を強要され、雪那は横に大きくのけぞる。

 しかし傷の激痛からか、その足取りは先程より重い。

 その所為で、数体の悪魔の攻撃を、雪那は流しきれない。

 「・・・う・・・ああああぁぁぁっ!!!」

 悪魔の斬撃が、雪那に突き刺さる。

 あまりの激痛に、雪那は悲痛に叫ぶ。

 「・・・ふん、相手が悪かったな。まああれだけの失敗作の中で数少ない成功例だ。性能は上々だな」

 傷口から、止めどなく鮮血が流れる。もう意識を保つのも、雪那には厳しい状態だった。

 「・・・さて、そろそろ時間だ。街の方の駒はもう鎮圧されたようだし・・・殺れ」

 (こんな・・・ところで・・・)

 四肢に力を入れようとしても、出血の所為でそれも出来ない。

 少女が悪魔を使役し、雪那に止めを刺そうとする。

 (ごめん、なさい・・・皆っ・・・!)

 『何時まで畏れているの?』

 (!?)

 唐突に脳に直接声が響いた。

 『「彼」に会えたのは幸運だったのに』

 その声に、感覚に、雪那は何処か覚えがあった。

 まるでその声に心を「黒く染められるかの様な」感覚を。

 (誰・・・なの・・・)

 『力が足りなら使わせてあげる。今の貴方わたしじゃ、私は使いこなせないでしょうけど』

 雪那の問いに対する答えは無い。その代わりのように。

 『今死ぬよりいいでしょう?』

 雪那の思考は薄れ、その声に引きずり込まれた。

 「終わらせろ!」

 そして悪魔の群れがうつ伏せになった雪那へ襲いかかる。

 悪魔の腕が、雪那に触れた、その瞬間。

 雪那から膨大な黒い冷気が放出された。雪那の周りにいた悪魔はその冷気に飲まれ、凍りつき、朽ちるように崩れた。

 「何・・・!?」

 雪那はゆっくりと身体を起こす。

 黒い冷気が、まるでドレスのように雪那に纏わりつく。

 顔を上げた雪那の眼に、もう光は灯っていなかった。

 

 なんだか零落者ばかり話を考えていると、今度はコード・ゼロがおろそかに・・・。現在零落者、クリブラも同時進行で書いています。なるべくペース上げていきたいと思っていますので、こんな感じですが、どうかこれからもよろしくお願いします。

 それでは最後まで、ありがとうございました。

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