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コード・ゼロ  作者: 黒雪
19/22

二人の長

七区内部が沈静化し始めた頃。本当の終止符を打つために紫苑は動き始める。その途中、同様の理由で外にいたコードセブン隊長、飛鳥と合流し、先行した雪那を追う事になるが・・・

 ・・・また遅れてすいませんでしたっ!

 「・・・どういう事?」

 風音は剱に怪訝そうな顔で問いかける。

 「まあ百聞は一見に如かず、なんて言うし、付いてくるならその時話そう。どうする?」

 剱がそう問うと、風音は二つ返事で返した。

 「私は行くよ」

 「・・・先輩」

 「たとえ非正規であろうと、コードセブンは七区の番人。ここで起こっている事は何であれ見ておきたい、かな」

 「・・・なら、私も行きます」

 風音に続くように、ミカヅキも応える。

 剱は深く訊かず、そうか、と言って頷いた。

 「なら急ぐとしよう。いざとなれば「保険」はかけてあるけど」

 剱は立ち上がると、先に走り始める。

 風音とミカヅキは剱の後に続いた。


 同時刻。

 「・・・街の方は粗方終わったな。だが、本当の意味では終わっていない、か」

 紫苑は街の外に来ていた。街の方を見ながら、紫苑は呟く。

 「俺がボケていなければ、まだ残っている・・・いや、残してるのか」

 街の外に出てからも、道は続いている。流石に補装されてはいないが、道と認識できる位には形を留めていた。

 元よりここは本島と橋で繋がっている人工島。他の魔人街とは異なり、新たな試みとして創られた、第七の能力者達の集う島。

 島に侵蝕区域が発生する前までは、その七区の範囲はまだ、もう少し広かった。

 ふと歩いていた紫苑の前に、悪魔の死骸が転がっていた。それは心臓を貫かれ、負傷部から凍てついた変死体だった。

 紫苑はそれをまたごうとして、動きを止めた。

 「これは・・・」

 辺りを見ると、それは一体だけでなく、複数体倒れており、交戦の跡がまだはっきりと残っていた。

 「まさか、雪那が・・・?」

 そう言って紫苑は街の方を向いた。

 「あまり離れてはいないが、ここでこの数がいたとすると・・・やはりいるのか。「使役者」が」

 一人呟いた後、紫苑は首を横に振った。

 「・・・だが、ここじゃないらしいな。仕方ない、さっさと移動するか」

 そう言って脚に力を入れようとして、直前で再び停止する。

 「・・・街の方になるべく注意が行くようにしたんだが。・・・「お前」はこっちに来たんだな?」

 紫苑が瓦礫の山を見透かしたように睨んだ。

その視線の先で、誰かが紫苑の言葉に反応した気配があった。

 「・・・気付かれていましたのね」

往生際悪く隠れる、等ということはせず、その場所から1人の少女、飛鳥が姿を現した。

「あーやっぱ飛鳥か。何やってんだこんなとこで」

「・・・え?い、いえそれは・・・って」

頓狂な問いを投げ掛けられて、飛鳥は一瞬それを真に受ける。

「それは此方の台詞というものですわ霧ヶ峰 紫苑!どうして貴方がここに!?」

だが飛鳥は直ぐに自身の問いを返した。

 「・・・ま、お前がここに居る理由は分かりきってるしな。コード・セブン隊長さん?」

 「・・・紫苑、貴方も「訳あり」、のようですわね」

 コードセブンである事を示唆されても、飛鳥は驚くことも、怯んだ様子も見せず、毅然と紫苑の眼を探るように見つめている。

 「・・・鎖、光を喰らう狼の紋章・・・聞いた事がありますわ。ですが何故」

 「あー、それは心の中に置いておいてくれ」

 飛鳥が言おうとするのを、いつの間にか飛鳥の目の前に移動していた紫苑が飛鳥の口に人差し指を当てていた。

 「!?な、な・・・!」

 急な紫苑の行動に、飛鳥は顔を赤くして、言葉に詰まっていた。

 「でさ。どのみち利害は一致してるんだろ?面倒な話は後にしようぜ」

 「う・・・そ、そうですわね。雪那を追わないと・・・」

 「ん?もしかして置いていかれたのか」

 「・・・二手に分かれていただけですわ。途中で貴方を見つけたので、様子見をしていたのですけれど」

 冗談めかした紫苑の言葉に飛鳥は吐き捨てるように言った。

 「なるほどな。・・・ん?ならお前はまだ使役者を見つけてないんだな」

 「はい・・・?まあそうですわね」

 「「・・・」」

 二人の間で静寂が流れる。

 「おそらくこの辺りに悪魔がこれだけいるのは、撤退時に時間稼ぎするためだよな?」

 「ふむ、その可能性はありますわ」

 「で、それはつまり使役者にあたる奴は悪魔自体にも干渉できる能力を持つと」

 「憶測ではありますが、ね。今、雪那はそれを探して」

 と言って、飛鳥は固まる。

 「・・・この悪魔が撤退用?」

 「ん」

 「つまり戦力は外にまだ保有していて・・・」

 「ん」

 「・・・雪那単騎では」

 「無理な量がいるかもしれねぇな」

 その瞬間、飛鳥の表情に動揺が浮かぶ。

 「あの子なら、と言いたいですけれど、戦力が把握できないと・・・」

 「出るのか?」 

 「当然ですわ!というか紫苑、貴方は何故・・・雪那とは面識もあるでしょう!」

 飛鳥の声が荒いものに変わる。

 それに紫苑はいつも以上に情動の無い平静な声で言う。

 「ああ・・・心配は勿論あるけどよ」

 けれど、と。

 「それ以上に、見てみてぇんだよ。雪那の強さってやつを」

 「・・・?」

 軽口で言っていない紫苑の言葉に、飛鳥は戯言、と返すことも出来ずに黙してしまう。

 「勿論応援に行かないとは言う気はねぇよ。行こうぜ」

 「・・・そう、ですわね。ですが紫苑、貴方の事は後でしっかり聞かせてもらいますから」

 「へいへい。分かってるよ」

 飛鳥が先に走り始める。

 「・・・その為に俺がここにいるんだからな」

 その所為もあって、紫苑の最後の言葉は、飛鳥には伝わらなかった。

 「しかしよー飛鳥。街の方はほっといていいのかー?」

 飛鳥の後に続きながら、紫苑は問う。

 「・・・白々しいですわよ紫苑。貴方がここに居るという事は、大方・・・剱も貴方の仲間でしょう」

 飛鳥は振り向かず、前を見つめて答えた。

 紫苑はくくっ、と喉を鳴らす様に笑う。

 「その位は察せるか。・・・と」

 飛鳥と紫苑が道なき道を進んでいると、数体の悪魔が道を塞ぐ。

 「紫苑、無視しまー・・・」

 飛鳥が止まって振り向く、その間に紫苑は既に跳躍して悪魔に肉薄していた。

 その勢いのまま紫苑は悪魔に膝蹴り、そしてダウンしたその悪魔を片手で持ち上げ、力任せに別の悪魔へ投擲する。

 「は・・・!?」

 初めて見る紫苑の戦闘方法に、飛鳥は唖然とする。

 「ここでも、か。これは一体一体というよりは一定の範囲全体に干渉してる感じかもな・・・と、飛鳥?こいつらは無視で良いんだろう?」

 「え・・・あ、はい、まあ・・・」

 たじろぎながら、飛鳥は応答を返す。

 「・・・神狼・・・」

 「お?なんか言ったか?」

 「・・・なんでも」

 「そーか?」

 あえて、紫苑は何も言わない。

 「・・・しかし俺もそうだが、隊長ってのは不遇なもんだなぁ」

 「は?何を」

 飛鳥は急に振られた話に白けた顔をした。

 「こんな誰もいない場所で、ただ淡々と役割だけを果たす。どうせ狂魔の殲滅もやってるんだろう、セブンは。誰かを助けて、感謝されて、名誉を得て?・・・そんなものも全然ない世界で、な」

 「・・・そうですわね。結局目立つために、名誉のために戦う人間なんてコードを持つ資格も、能力もないでしょう。私達はそんなものの為に能力を揮うわけではない。それは、貴方もでしょう」

 「・・・俺らって地味な仕事してるよなって言おうとしただけなんだが。真面目かよ」

 「なっ・・・!貴方が振った話でしょう」

 飛鳥は顔を紅潮させ、声を荒くする。

 「そうだね」

 「何を笑っているのですか!?」

 叱咤されてもなお紫苑はにやにやと笑っている。

 それに飛鳥は調子を崩され、溜息の後、肩をすくめて苦笑した。それを見た紫苑は満足げな顔をした。

 「そーそー肩の力抜いてけー。お前力み過ぎるとこあっから」

 「・・・紫苑」

 「しゃー息抜き終わりだ。さっさ行くぞ」

 紫苑が飛鳥に背を向ける。

 「・・・不思議な人・・・」

 ぽつりと飛鳥が呟く。

 そして二人の言葉が途切れた、その時だった。

 「「・・・!?」」

 その現象には紫苑ですら驚愕を示した。

 背筋を凍らせるような(物理的な)冷気が、暴風の様に吹いてきたのだ。

 「・・・澱んだ魔力、か。こりゃ、冗談になんねぇな」

 「雪那・・・!休みは終わりですわ。急ぎますわよ紫苑!」

 「あいよ!」


なんだかんだ・・・投稿を始めて一年経つんですね・・・。

と、今更気付いた黒雪です。どうせなので番外編でも書いてみようかな・・・とは思っていますが、まずは三作品を安定して書けるようになってからですかね。

次は零落者を出す予定です。そう遅くならないと思うので、そちらも見て頂けると嬉しいです。

それでは、最後までありがとうございました。


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