ステージメイカー
メアと同時に、剱も行動を開始した。他とは離れた街の中心近くで、剱は瀕死の防衛軍を発見する。
事を進めようとする剱だったが、剱を警視するミカヅキと接触し・・・
遅くなって、すいません・・・
同時刻。
メア達とは離れた場所で二人の少年と少女が対峙していた。
辺りには殲滅された魔人の残骸が転がっている。
「・・・」
一人は剱。そしてもう一人の少女の方は。
「弁明は終わり?悪いけど、あまり悠長には出来ないわよ・・・!」
コードセブンであるミカヅキが剱に対して鋭い敵意を向けていた。
(どうしてこうなった・・・)
数十分前。
「さて、メアはそろそろ監視役達をやりに行ってる頃かな。俺達も動くか、紫苑」
時計を見ながら剱が言う。
「だな。メアにばっかやらせててもいけねぇし」
「本人はノリノリでやりそうだけど・・・まあそれはいいとして、俺は街の方で時間が来るまで魔人潰しでもしておこうか」
「んー・・・俺は外苑でも放浪しとけばいいのか?」
「そうだね。あ、確かあの雪那って娘、街の外に行ってたようだけど?」
「へぇ」
あっさりした紫苑の返答に、剱は白けた目で紫苑を見た。
「・・・」
「・・・え?」
視線の違和感に紫苑は疑問形で返した。
「流石紫苑だ。・・・うん、何も言うまい。それと、俺の予想だと数十体いる狂魔モドキを制御しているのは近くにいる監視者だけじゃないはず。おそらく全てを束ねる核の様な存在が、戦線から離れた所にいるはずだ」
「・・・まあ兎も角、それを潰すのが表の目標ってとこだな」
剱に疑問の目を向けつつ、紫苑は剱の後に続ける。
「ああ。というわけで頼むよ?」
「任せろ。そっちこそ上手くやれよな」
「当然。・・・それじゃ、また後で」
そう言って二人は拳を合わせ、それぞれ別の方向に歩いて行った。
紫苑が街の外側に向かったのを見届けながら、剱は街の中心部の方を見る。
その視線にあるのは一つのタワービル。
「・・・さて、事が動くまで俺の役割は無に等しいんだけど」
剱は背中に背負っているブレードを引き抜いた。
「どうせだ、この辺りに悪魔が入り込んでないか確認しておくかな」
屋根をほぼ無音で走りながら薄暗い街を探索する。
「もうすでに幾つか監視者の反応が消えている・・・仕事が速いな」
人の気は最早無と言っていい。そんな街の様子を剱は細かく移動を挟みながら観察していく。
その一部で、剱は脚を止めた。
「・・・ん、あれは」
屋根から軽い動きで街路に降りる。
そこには数体の狂魔モドキの死骸と防衛軍隊員と思われる者達が倒れていた。
剱はその一人に近寄り、体に触れる。
「・・・気絶しているだけか。致命傷・・・程ではないな。その内救護班でも来るだろ・・・けど」
今度は狂魔モドキの死骸に目を向ける。
「ここまで綺麗に相討ちにはならないな。何かしら後者の介入があったんだろうが・・・軍部の連中ならこのまま放置はしない・・・とすれば」
剱は立ち上がり、腕を慣らした。
「何者かが殲滅を完了した軍の奴らを襲い、そのままこの道を進んでいった、と。
・・・思っていたより事は早く進んでいるな」
腰に着けたロングバレルのハンドガンを抜く。
「途中で鉢合わせてもおかしくない、か?さて・・・なら早めに」
そう独り言を言い終えて、また動きを再開しようとした、その時。
「!」
剱に向けて光の矢が飛来する。
屋上に跳ぼうと発動した跳躍の能力を、回避に変換する。
若干ずれた軌道を修正するように、剱は続けざまに壁を蹴って屋上に戻った。
「躱された・・・!?不意を取ったのに・・・」
それを放った主であろう少女、ミカヅキは驚きの表情を浮かべていた。
「・・・威力が弱い。殺傷では無く無力化目的かな?」
光の矢の跡を見ながら剱は言う。
「・・・っ!」
呆気に取られていたミカヅキは、剱が声をかけてきたことに過剰な反応を見せた。
「ちょ、待って待って無言で弓を向けるのやめてくれないかなぁ?」
「敵に向ける言葉は持ち合わせていないわ」
そう一蹴すると、すかさずミカヅキは矢を放った。
「いやいや、敵じゃないってぇぇぇ!!!」
想像以上の速度を持ったミカヅキの放った矢を、剱はブレードで弾き撃ち落とす。
「・・・?何を・・・」
「君と戦う気はこちらにはない。だからさ、その刺すような視線ちょっと和らげてくれませんかねぇ」
「弁明は終わり?悪いけど、あまり悠長に時間はとれないわよ」
「話聞こうか!?」
ミカヅキの冷たい言葉に剱は戸惑いの声を上げる。ミカヅキに最早聞く耳は無い。
「こんな惨状で、よくまあやり過ごせると思ったわね」
「・・・ん?」
ミカヅキにそう言われて、剱は思考する。
この惨状。ミカヅキがどこまで見ていたのかは知らないが、こんな惨状というのは下で転がっている狂魔モドキと、瀕死の防衛軍の事だろう。
仮に、剱が防衛軍を見つけた辺りからミカヅキが見ていたとして。瀕死の防衛軍に近付く剱。ミカヅキからすれば得体の知れない男が瀕死の防衛軍の近くで銃を抜いた画が見えたわけで。
「・・・ふむ、なるほど」
そして剱は一人で納得し、吐き捨てるように言った。
「否定材料が無いな」
「何を今更・・・」
「ただひとつ言わせて欲しい」
なおも口を開く剱に、ミカヅキは訝しむような目を向ける。
「・・・何?」
そんなミカヅキに剱は軽い口調で言う。
「君って結構可愛いね」
「・・・」
「ふっ、若干顔が赤くなってるよけど無言で能力使わないでくれるかなぁ!」
「・・・さっきから武器を向けられているのに余裕ね。私の初段避けたし・・・演技も一つの戦術なの?」
諭したようにミカヅキは言う。
「君もまぁ、褒められて赤くなるようなピュアな割には、面白い戦い方するんだね」
「・・・っ!」
ミカヅキは目つきを鋭くした。今にも剱に喰いかかりそうな勢いだ。
(やれやれ、少し予定と違うなあ・・・けどコード・セブンか。年下の可憐な女の子を傷つける趣味は無いけども・・・なかなか出来そうだ)
相も変わらぬ調子ながら、剱もようやく武器を構える。
「そうだね。こちらもそろそろ時間が少なくてね。直ぐに終わらせようか」
「舐めた事を・・・!」
ミカヅキが光の矢を放つ。今度は一本では無く、複数の光が異なる軌道を描いて剱を襲う。
「展開」
それを剱は障壁で防ぐ。
「力場・・・?それなら」
ミカヅキが矢を収束させ、放つ。
「・・・ん?」
それは障壁手前で拡散し、激しい閃光を放つ。
同時に、多方面から剱へ飛来する。
「拡張」
だがそれも全て、剱の障壁によって防がれた。
「・・・へえ、随分と防御重視な能力ね」
「ま、攻撃的ではないかな?だから武器とかに良く頼ちゃってさ」
剱は銃のトリガーに手をかける。
「こういう風に」
そして藍色の弾丸を放った。
ミカヅキは光で弾丸を焼こうとした、が、その弾丸は光を受け付けぬどころか、その光を分散させた。
「っ!?・・・きゃあ!」
その弾丸はミカヅキでは無く、ミカヅキが持っていた弓に着弾した。
「・・・な、に・・・今の・・・」
「ブリューナク。通称能力貫通の弾丸だよ」
特に渋る様子も無く剱は種を明かす。
「ブリュー、ナク・・・!?でも、あれは!」
「気を抜かない方が良いよ?」
剱は牽制するように続けてブリューナクを撃つ。
「っ!」
「君の前にいるのは敵、なんだろう?」
ミカヅキはそれに反応したが、ブリューナクを見てから何処か勢いが失せていた。
その様子を見て、剱は銃を構えたまま、妙に温かい声で言う。
「・・・これが怖いかい?怖いなら諦めればいい。さっきも言ったけど、俺はあまり戦う気ないからさ。別に」
剱がそう言った途端、ミカヅキの様子が変わった。
「・・・逃げるものですか」
「ん?」
「私は・・・私は・・・!」
何、とは言わずに、ミカヅキは自分の中で抑え込んだまま、ただ一つ、己を奮い立たせる様に叫んだ。
「・・・戦う。それ以外に、私の在る意味はない!」
「・・・なるほど、ね」
それを聞いて剱は口元を少し緩めた。
一方のミカヅキは、壊れた弓を放棄し、両手を左右に広げた。
「・・・?」
剱にはその行為の意図が一瞬理解出来なかった。
ミカヅキの周りに光が集まる。それはまるで光のヴェールの様にミカヅキの周りを舞う。
「!まさか・・・」
それを見て、剱の表情が急に険しくなった。
「・・・こんなところで使うのは不本意だけど・・・けど!」
その光に触れたミカヅキの服が、燃えて焼け落ちる。
ミカヅキ自身も、高熱によって脂汗をにじませている。
「ここで貴方を倒せないようなら、どの道いずれ果てる。それなら―――!」
光のヴェールが形を変え始めた、その時。
「止めるんだ」
その時だけ、剱の声が鋭いものに変わった。
そして剱はブレードを振るう。その刃は幾重にも伸びて、光のヴェールを切り裂き、霧散させた。
「・・・!?」
それはミカヅキにとっては想定外の事だった。
光のヴェールが剥がれたのを確認すると、剱はミカヅキへ向かって走る。
「・・・は・・・」
ミカヅキはよろめいて、屋根から崩れ落ちそうになった。それを剱は支えに入る。
「出過ぎた真似は良くないね。・・・けど、そうだな。それでこそ、か」
「なにを・・・して・・・」
精神力を使いすぎた所為か、ミカヅキはぐったりした様子で剱の腕にもたれている。
「敵じゃないとは言ったはずだけどね。けどまあ悪乗りした分良いもの見れたよ」
「は・・・?」
ミカヅキに話す剱のその姿に、先程までの鋭さは無い。
そしてミカヅキを抱えたまま、剱は建物の影に隠れる。
「!」
その行動に、ミカヅキはピクッと肩を震わせた。それを見て剱は苦笑を浮かべる。
「大丈夫、変なことはしないから。そんな愚者では無いから安心して」
そう言って、そこに剱はミカヅキを寝かせた。
「しかし俺が紫苑みたいな真似をすることになるとは。・・・まあ、ある程度防音と遮光は施していたけど、さっきのに気付いた人がいるかもしれないからね。少し移動させて貰ったよ」
「貴方は・・・」
途切れ途切れの息をしながらミカヅキは剱を見た。何を言わんとしているかはおおよそ見当がつく。
「誰か、って?そうだね・・・もうすぐ分かるよ」
ミカヅキの汗を拭い終えると、剱は元来た方向を眺める。
ミカヅキもつられてその方向を向いた。
そこから現れたのは特徴的な白と黒の髪を持った少女、風音だった。
「ミカヅキちゃん!大丈・・・夫・・・」
風音は倒れたミカヅキの方に駆け寄ってきたが、剱が視界に入った途端、動きを鈍らせた。
「いいタイミングだね」
「・・・剱、君?どうしてここに・・・」
「え・・・せん、ぱい・・・知り合い、なんですか?」
少しずつ呼吸を整えたミカヅキは、ようやく状況を理解し始めていた。
「あ、うん・・・高校の同級生、だけど」
「えっ・・・!?」
「一応誤解は解けた?」
驚愕をあらわにするミカヅキに、剱は微笑を浮かべながら言った。
「誤解・・・?えっと、何があったの?それに、剱君、貴方は・・・」
流石に状況が読めないといった様子で、風音は二人を交互に見ている。
「今は多くを語れない。けどまあ、とりあえず最低限話すよ」
「な、何で最初に言ってくれなかったんですかっ!」
一通り説明すると、回復したミカヅキは声を荒げて言った。
「ん、敵じゃないって言ったんだけどねぇ」
顔を紅潮させながら食いかかってくるミカヅキに剱は軽く笑って流している。
「ま、まあ剱君らしいね・・・」
風音はどちらを肯定するでもなく、苦笑いを浮かべている。
「そ、そんな・・・じゃ、じゃあ最初から・・・それに最後なんて・・・」
「まあ可愛いってとこ含めて本当の事しか言ってないよ?」
「―――っ!」
ミカヅキの顔はますます赤さを増していく。
「へぇ・・・剱君ってミカヅキちゃんみたいな子が良いんだ・・・?」
「あれ、なんだろう背後から殺気が」
「先輩までからかわないで下さい!」
羞恥に耐えられない様子で、ミカヅキは嘆く。だが風音にからかっている様子はほとんどない。
「・・・こほん。ええと、話を戻すけど、剱君はこれからどうするの?」
「ああ、そうだった。少し急がないとね・・・俺は今からあそこに向かう」
そう言って剱は後方を指さす。そこには先程も剱が眺めていたタワービルがあった。
「?どうしてそんな場所に行くんですか?」
魔人は外側に集中しているのに、とミカヅキが続ける。
「・・・そうだね、君達も見ておいて良いかもしれない」
剱の声が神妙なものに変わる。
「この茶番のくだらない一末をね」
どうもモンハンの世界から帰ってきた黒雪です。若干帰れてないですけど。
言い訳というか、遅くなった理由はこれ一つです・・・。
イヤーオモシロイデスネモンハン。
ほんと、三週間もすっぽかして、すいませんでした・・・。
こんな調子ですが、これからもこまこま見て頂けたら嬉しく思います。
それでは、今回もありがとうございました。




