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Read New World  作者: りのあ
新世代編
54/55

終話 「繋がれた世界」

 足が浮く。


「うわあああっ!?」


 落下間際にリンクに攻撃を決められたのは覚えている、

 しかしこの後のことは考えていなかった。


 地面へと向かい再び身体が落下を始める。


「やば、これヤバイ!」


 もう単純な考えしか頭を通らない、

 "ヤバイ"それだけだ。


「ふん、手間をかけさせてくれる」


 突然、

 黒いコートの男が目の前に現れる。


「お前が装備したことによって意志共有が出来た、好都合だな」

「だ、誰だよアンタ…」

「そんなの後だ、今は…あれをとってこい!」


 腕を掴まれ、引き上げられる。

 空中であるにも関わらず身体が持ち上げられているようだ、

 俺は上へと投げ飛ばされた。


「あれは!」


 上を見て気がつく、

 リンクの持っていた剣が落下していた。


「このっ!」


 剣を掴み取ろうとする、

 が距離が少しばかり足りない。


(駄目か…っ!?)


 そんな時だった。


『少しだけ、力を貸します』

「え?」


 背後から声が聞こえる、

 顔は見えないが女性だ。

 それもリンクに似ている…


『さあ、その手を伸ばして…』


 無言で言われるがままに手を伸ばした。

 するとどうだろう、

 剣からこちらへと寄ってくるようだ。


「貴方は一体…」

『ゆっくりと瞳を閉じてください』

「いや、だからあなたは…」


 話が途中で途切れる、

 目の前が真っ暗になった。




「―っ!」


 次に目を覚ました時にはどこかのビルの屋上にいた。

 周囲はまだゲーム世界のままだ、

 天使像の破片も残っている。


「でも、あれ?」


 俺は元通りになっていた、

 リアルの身体ということだ。


「ゼノ!」


 勢いよく屋上の扉が開いた、

 そこには一人の美少女と男性がいた。


「誰?」

「私よ、シロよ!」

「おう。やっぱりリアルだと分からなかったか、カイザだ」


 一瞬目を疑った。

 カイザは案の定オッサンだったけど、

 シロはゲームのように可愛い女の子だったからだ。


「ゼノ」


 また誰かに話しかけられる。


「あんたは…」


 目の前に現れたのは、壊世とかいう武器を渡してくれた男だった。


「まだ名乗っていなかったな、セトだ」

「あんたが…セト…!?」


 今まで幾度となく聞いたその名、

 本人が目の前にいるとなると緊張してしまう。


「ゼノ、君の持っている剣で世界を元に戻すんだ」

「俺の願いで?」


 俺は左手に握っている剣の存在に気がつく、

 リンクの使っていた不思議な剣だ。


「そいつは創世、願えば叶う」

「願えば…叶う…」


 俺は創世を天高く振り上げ叫んだ。


「創世よ!この世界を元に戻せ!」

「いや、まぁ。そんなに力まなくても良いんだがな」

「えっ、そうなの…!?」


 恥ずかしい、

 主人公気分でやってたから。

 かなり恥ずかしい。


「そういえばセトさんはどうしてリアルの姿じゃないんだ?」

「俺はちょっと特別な因縁があってな、まあ一度死んでるし…これが終わったら消えるというか、なんというか」


 消える?


「ま、そういうこったな。お!戻り始めたぞ」


 セトの指さす方向を見る。

 ビルの破壊された部分は復元され、像は消え去っていた。


「凄いですね…ね、セトさ…」


 隣を見る、

 しかしそこにセトは居なかった。


「セトさん…」


 たった数十分余りの出会いだったけど、

 今までも助けられていた気がする。

 そう、デリトと出会った時も…


「さあて、終わった終わった!」

「ミロクさん達も下で待っていますよ」


 何の話だ?


「察しが悪いなあ、リアルで会ったらやることは一つだろ!」

「"オフ会"ですよ、オ・フ・会!」

「お、オフ会!?」

「ほら、行きますよ!」


 シロに手を引かれる、

 俺はビルの外へと引っ張り出された。


「よお!お待たせ!」


 カイザが大声を出す。

 俺は目の前にいた人達に目を奪われた。


「ミロクって言えばわかるかな?初めまして」

「…フィリアでプレイしてた。…よろしく」

「おーうっロイアだ!兄弟、またよろしくぅ!」


 沢山の人が俺を囲む、

 暑苦しいのは好きじゃないけど。


 これは嫌いじゃない…かな。


「デリト、ありがとう」


 俺は小さくそう呟いた。


 今までも時々見せてくれた女の子の面、

 弱気になっていた瞬間。

 いつもの格好いい姿、そんな記憶を掘り返しながら俺は笑った。


 涙が頬を伝った。




 ―あれから数週間。


『Read New World』を主体とした事件はとある会社の新商品のプロモーション、という設定で片づけられてしまった。

『RNW事件』という奇怪な名称を付けられて。


 あの現場にいて、なおかつリンクに殺された人達は帰ってくることは無かった。

 そんな被害者の親族はゲームの開発者を訴えようとしたが、

 不思議なことに開発者が未だ見つかっていないのだ。


 これでは親族も浮かばれないだろう。


「といってもあんなのはもうこりごりだけどな」


『ピンポーン』


 チャイムが鳴る、

 俺は急いで準備をして玄関に出た。


「ゼノにしては早かったですね」

「おいおい、その名前で呼ぶなって。俺には"瀬野 革"って名前がちゃんとあるんだからさあ」

「だってそっちのほうが呼びやすいんですもん~♪」

「ったく、人前で呼ぶなよ?シロ」


 玄関に鍵をかけ階段をおりる。


「あーっ!革こそ、IDで呼んでるじゃないですか!」

「まぁまぁ、そんなことより遅刻するぞ」

「誤魔化しましたね!?」


 俺たちは学校も違えば住んでいるところも違う、

 ただしシロの場合は特別で。

 運よく、と言っていいのかは分からないが家が近かった。


 故に、

 色々あって付き合っているといえば付き合っている。


「おっせぇぞ~!」

「悪い悪い」


 オフ会に参加するべく集まったみんな、

 何名かはわざわざ遠くから来てくれている。


「さあ、行こうか!」

『おー!』


 俺たちを繋いだゲーム、

 俺たちに色んなものを与えてくれたゲーム。


 そのゲームの名は…


『Read New World』

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