終話 「繋がれた世界」
足が浮く。
「うわあああっ!?」
落下間際にリンクに攻撃を決められたのは覚えている、
しかしこの後のことは考えていなかった。
地面へと向かい再び身体が落下を始める。
「やば、これヤバイ!」
もう単純な考えしか頭を通らない、
"ヤバイ"それだけだ。
「ふん、手間をかけさせてくれる」
突然、
黒いコートの男が目の前に現れる。
「お前が装備したことによって意志共有が出来た、好都合だな」
「だ、誰だよアンタ…」
「そんなの後だ、今は…あれをとってこい!」
腕を掴まれ、引き上げられる。
空中であるにも関わらず身体が持ち上げられているようだ、
俺は上へと投げ飛ばされた。
「あれは!」
上を見て気がつく、
リンクの持っていた剣が落下していた。
「このっ!」
剣を掴み取ろうとする、
が距離が少しばかり足りない。
(駄目か…っ!?)
そんな時だった。
『少しだけ、力を貸します』
「え?」
背後から声が聞こえる、
顔は見えないが女性だ。
それもリンクに似ている…
『さあ、その手を伸ばして…』
無言で言われるがままに手を伸ばした。
するとどうだろう、
剣からこちらへと寄ってくるようだ。
「貴方は一体…」
『ゆっくりと瞳を閉じてください』
「いや、だからあなたは…」
話が途中で途切れる、
目の前が真っ暗になった。
「―っ!」
次に目を覚ました時にはどこかのビルの屋上にいた。
周囲はまだゲーム世界のままだ、
天使像の破片も残っている。
「でも、あれ?」
俺は元通りになっていた、
リアルの身体ということだ。
「ゼノ!」
勢いよく屋上の扉が開いた、
そこには一人の美少女と男性がいた。
「誰?」
「私よ、シロよ!」
「おう。やっぱりリアルだと分からなかったか、カイザだ」
一瞬目を疑った。
カイザは案の定オッサンだったけど、
シロはゲームのように可愛い女の子だったからだ。
「ゼノ」
また誰かに話しかけられる。
「あんたは…」
目の前に現れたのは、壊世とかいう武器を渡してくれた男だった。
「まだ名乗っていなかったな、セトだ」
「あんたが…セト…!?」
今まで幾度となく聞いたその名、
本人が目の前にいるとなると緊張してしまう。
「ゼノ、君の持っている剣で世界を元に戻すんだ」
「俺の願いで?」
俺は左手に握っている剣の存在に気がつく、
リンクの使っていた不思議な剣だ。
「そいつは創世、願えば叶う」
「願えば…叶う…」
俺は創世を天高く振り上げ叫んだ。
「創世よ!この世界を元に戻せ!」
「いや、まぁ。そんなに力まなくても良いんだがな」
「えっ、そうなの…!?」
恥ずかしい、
主人公気分でやってたから。
かなり恥ずかしい。
「そういえばセトさんはどうしてリアルの姿じゃないんだ?」
「俺はちょっと特別な因縁があってな、まあ一度死んでるし…これが終わったら消えるというか、なんというか」
消える?
「ま、そういうこったな。お!戻り始めたぞ」
セトの指さす方向を見る。
ビルの破壊された部分は復元され、像は消え去っていた。
「凄いですね…ね、セトさ…」
隣を見る、
しかしそこにセトは居なかった。
「セトさん…」
たった数十分余りの出会いだったけど、
今までも助けられていた気がする。
そう、デリトと出会った時も…
「さあて、終わった終わった!」
「ミロクさん達も下で待っていますよ」
何の話だ?
「察しが悪いなあ、リアルで会ったらやることは一つだろ!」
「"オフ会"ですよ、オ・フ・会!」
「お、オフ会!?」
「ほら、行きますよ!」
シロに手を引かれる、
俺はビルの外へと引っ張り出された。
「よお!お待たせ!」
カイザが大声を出す。
俺は目の前にいた人達に目を奪われた。
「ミロクって言えばわかるかな?初めまして」
「…フィリアでプレイしてた。…よろしく」
「おーうっロイアだ!兄弟、またよろしくぅ!」
沢山の人が俺を囲む、
暑苦しいのは好きじゃないけど。
これは嫌いじゃない…かな。
「デリト、ありがとう」
俺は小さくそう呟いた。
今までも時々見せてくれた女の子の面、
弱気になっていた瞬間。
いつもの格好いい姿、そんな記憶を掘り返しながら俺は笑った。
涙が頬を伝った。
―あれから数週間。
『Read New World』を主体とした事件はとある会社の新商品のプロモーション、という設定で片づけられてしまった。
『RNW事件』という奇怪な名称を付けられて。
あの現場にいて、なおかつリンクに殺された人達は帰ってくることは無かった。
そんな被害者の親族はゲームの開発者を訴えようとしたが、
不思議なことに開発者が未だ見つかっていないのだ。
これでは親族も浮かばれないだろう。
「といってもあんなのはもうこりごりだけどな」
『ピンポーン』
チャイムが鳴る、
俺は急いで準備をして玄関に出た。
「ゼノにしては早かったですね」
「おいおい、その名前で呼ぶなって。俺には"瀬野 革"って名前がちゃんとあるんだからさあ」
「だってそっちのほうが呼びやすいんですもん~♪」
「ったく、人前で呼ぶなよ?シロ」
玄関に鍵をかけ階段をおりる。
「あーっ!革こそ、IDで呼んでるじゃないですか!」
「まぁまぁ、そんなことより遅刻するぞ」
「誤魔化しましたね!?」
俺たちは学校も違えば住んでいるところも違う、
ただしシロの場合は特別で。
運よく、と言っていいのかは分からないが家が近かった。
故に、
色々あって付き合っているといえば付き合っている。
「おっせぇぞ~!」
「悪い悪い」
オフ会に参加するべく集まったみんな、
何名かはわざわざ遠くから来てくれている。
「さあ、行こうか!」
『おー!』
俺たちを繋いだゲーム、
俺たちに色んなものを与えてくれたゲーム。
そのゲームの名は…
『Read New World』




