27話 「叶えたいこと」
天使像は浮遊を続ける。
先ほど吸われた体力はまだ回復していない、
しかしここで退けば俺達は何もかも終わりだ。
「いきます」
目にもとまらぬ速さで繰り出される剣劇、
俺の動体視力では捉えることが出来ない。
攻撃を回避するのでやっと、
体力も恐らく一撃喰らえばワンパンだ。
「ならこれならどうだ!」
ゼノの姿が消える。
しかしリンクは動じない、
動じるどころか目を閉じたまま剣で何もない場所を薙ぎ払った。
「うおっ!?」
「当たりですね」
なんとか剣の腹でガードしたものの、
なぜか貫通ダメージが少々入っている。
HPゲージが HP:1500/2100へと変化している、
もろにロイアの攻撃を喰らった時並みだ。
「あっ、しまった!」
「貰いました」
ダメージ量に気を取られ、ガードが緩む。
リンクはそれを見逃さない、
とどめを刺すべく剣先を向けて突進してきた。
(これ…やばっ!)
「『リバイブ スラッシュ』」
突如、目の前に真っ黒い剣が現れる。
リンクの攻撃はその剣によって叩き落された。
謎の剣を持った男は俺の前に立つと突然笑い出した、
何がおかしいのかずっと笑っている。
しかしそれとは裏腹にリンクの表情が曇る、
物凄く焦っている様な表情だ。
「な、なぜ貴方がここに…」
「そりゃあゲームをやっているんだから当たり前だろ」
「…くっ!」
リンクはまた狂気じみたスピードで剣を振るう。
しかし男はその攻撃を軽々と見切り、かわした。
それどころか男は攻撃を受け止めるたびに隙を突くような攻撃、
カウンターを繰り出している。
「お前名前は?」
「え?」
「名前はって聞いてるんだ」
男は戦いながら俺に話しかけてくる、
リンクの攻撃を抑えながら俺と会話しているのだ。
器用極まりない。
「ゼノだ」
「そうかゼノ。お前デリトから貰った武器はどうした」
「これか?」
俺は自らの手に握ってある剣を持つ、
しかし男は首を縦には振らない。
「もう一つだ」
「もう一つ?」
「『デリトの思い』だ」
心に響く。
冷たく、鋭く突き刺さるようなその言葉。
俺はデリトの表情を思い出した、
言葉遣いを思い出した。
デリトとの思い出を思い出した。
「俺の手助けはここまでだ、俺が倒しても意味がない。お前が負けてどうしようもない時には俺がやろう」
「ああ、ありがとう」
結局誰かはわからない、
でも俺はこの人に過去にも助けられたような気がする。
後ろに立つジョーカーも静かに頷く、
ここからは俺の土俵だと。
「いくぜリンク、最終ラウンドだ!」
「そこの方を敵に回さずに済んだのは私としても幸運でした、貴方くらいなら何とかなりますからね」
「どうかな」
デリトはこの技名を教えてくれた、
光速で動けるこのスキル。
「『フラッシュ スタンス』!」
先ほどのように行動を読まれるわけにはいかない、
何故さっきの光速攻撃が読まれたのかわかった。
だからこそ勝機がある。
「ここです!」
リンクはまたも薙ぎ払う、
しかしそこにゼノは居ない。
「バーカ、後ろだよ!」
「っ!?」
全身全霊を込めた一撃をリンクに与えた。
「お前、俺の行動を無理に読もうとしていやがったな。俺の足取り、身体の角度からそれを予測した」
だから俺はフェイントをかけた、
真っすぐ突っ込むような足取りでスキルを発動。
その後、一気に後ろへと回ったというわけだ。
「はぁはぁ、これは少々危険ですね」
息を切らすリンク、
ダメージが入っているのがよくわかる。
デリトから貰ったこの剣の攻撃力は桁違いのパワーを誇っている、
名前は「ナイトメア ソード」と表示されている。
「ですが、戦いは剣だけじゃないんですよ」
リンクが微笑むと何か恐怖を感じた、
気がついた時にはもう俺の身体は後方へと飛ばされていた。
「『クロック・エディション』」
リンクがこちらへと歩いてくる、
しかし身体は動かない。
「これはマズいですねぇ!」
ジョーカーがリンクの前に立ちはだかった、
リンクは無関心そうな表情をし剣を構える。
「一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「なんだ?」
「いえ、貴方では無くゼノ様に」
俺?
「なぜ貴方は攻撃を喰らったのに生きているのでしょう、確かに一撃入れたのですが」
そういえばなぜ俺はまだ生きているんだ、
HPも気がつけば黄色ゲージまで回復してるし。
「わ、私がやりました!」
まるで犯人が自首するときのようなセリフを吐きながらマントがもぞもぞと動く、
マントの中から飛び出してきたのはシロだった。
「私が途中からゼノさんに『リヒルト』をかけていたんです!」
「なるほどテクターですか、これは目障りですね」
デリトが消える。
気がつくと今度はシロが吹き飛ばされていた、
ジョーカーそれを見てシロを助けに向かう。
「リンク…絶対に許さねぇからな!」
「ふふ、どうぞ。かかってきてくださいませ」
創世を改めて構えなおすリンク、
俺はナイトメアソードを振り上げ向かった!
「『グリード ブレイド』!」
「『スキル クラッシュ』!」
攻撃を防がれることくらいは予想の範囲内、
大切なのはそのあとにどんな攻撃を繰り出すかだ!
俺は間合いをとり、大きく息を吸った。
無音の町にはどんな声でも大きく響く、
ましてやこんな上空にいるんだ響くに決まっている。
「作戦X決行だ!!」
その発言から間もなく、
リンクのHPが減る。
「僕は戦い系じゃないんだけどなぁ~」
ミロクだ、
先ほどから像の陰に隠れてもらっていたのだ。
それに続くようにしてリンクが地面へと引き倒される、
腕には大量の鎖が絡みついていた。
地面に黒い波紋が浮かび上がりフィリアが浮き上がってきた。
「デリト殺した…お前、許さない」
フィリアの顔は怒りに燃えている、
魔本から覗く魔物たちの表情は殺意に溢れかえっていた。
「『アレキサンダー』!!」
遠方から太い光の柱がこちらへと飛んでくる、
柱は像の腕を破壊し俺たちを空中へと放り出した。
「この程度!」
リンクは鎖を破壊し羽を広げた。
落ちていく俺たちとは対照的に空へと飛び立つ、
しかし高度がそれ以上は上がらないのか一定の場所で浮かび続けている。
(どうやって攻撃する!)
その時、真下から何か巨大なエネルギーによって身体が押し上げられる!
「『スカイ インパクト』の逆利用だぜ!」
下にいた騎士の男、
その男の大剣から放出されているエネルギーによって押し上げられていた。
「来るな!」
リンクが攻撃を放つ、
しかしその攻撃は斬り落とされた。
「ロイア!」
「この場面、俺の剣の出番だろ!」
ロイアの大剣が唸りをあげる、
それと共に俺は更に上へと飛ばされた!
「ゼノ!壊世を使え、これで終わらせろ!」
リンクの片足に残っていた鎖、
それに掴まっている男が剣を投げてきた。
「これは…」
「『願ったなら、叶えろ』!」
剣を受け取った俺はリンクの目の前へと到着した。
「うおおおっ!」
「そんな剣、破壊してやる…!」
俺は手に持っていた剣をリンクに向かって投げた!
「創世!砕きなさい!!」
しかし、
リンクの剣によってその剣は砕かれた。
「ふふ、これで終わりね」
「くくく、ははは…!」
「何がおかしいの!」
俺は思い返していた。
デリトとのやりとりを、習ったことを。
それで見えたことがあった。
デリトが最後に教えてくれた技…!
「なっ、これは壊世じゃない!?」
リンクが破壊した剣は壊世ではなかった、
黒く光る狂気の剣。
―ナイトメアソードだった。
「喰らえ!『スウィフトソード』!!!」
リンクの後ろ、背中へと向けて壊世が出現する!
気づくのが遅く既に壊世はリンクへと突き刺さっていた!
「デリト…貴方は死んでまで私の邪魔をするのですか!デリトオオオ!!」
壊世は背中を貫通し、心臓を穿ちリンクを貫いた。
リンクの身体は崩壊を始める、
壊世はラストスフィアを砕きリンクの胴体へと食い込んでいる。
翼は散り、身体は灰のように崩れ去っていく。
「私は、外の世界を見たかった…それが望みだった、の…に…」
最後にデリトが俺の背中を押してくれた気がした。
―リンク、お前は願いってあるか?
唐突にどうしたんですかデリト?
いいからいいから。
私ですか?一応、あります。
じゃあそいつは叶わないな。
どうしてそう言い切れるのですか?
『私の願いが先に叶ったから』だ。




