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Read New World  作者: りのあ
新世代編
52/55

26話 「ゲームと思い出」

 おかしな感覚である。

 部屋もそのまま、

 しかしながらゲーム内の仲間たちが今目の前にいる。


「これは夢か?」

「夢ではない、現実だ」


 いつも通り、不機嫌そうなデリトの声。

 確かにこれは現実のようだ。


 外を見ると空の色がおかしい、

 赤と黒が混ざり合ったような気持ちの悪い色をしている。


 町の住人は皆外に出て空を見上げている、

 正確には"空の上にある物"だ。


 天空高く浮かび上がるその姿、

 そこには天使の像が浮かんでいた。


 自らの胸元で両手を重ねた天使、

 まるで水を集めているかのような手の形。

 その上に立っていたのは紛れもないリンクだった。


「あいつ一体何をしやがった」

「恐らくスフィアの最終形態があれなんだろう。もとより現実に干渉することの出来るスフィア、その全ての力を合わせたスフィアがリンクの胸元のアレだからな」

「つまり僕たちの世界に飛び出してきた、的なことですね」


 そのうえ一つ厄介なことがあるとすれば、

 ゲームごと持ってきたことだろう。


 リンクは元々ゲームマスター、

 ゲームから離れることは出来ない。

 なのでゲームごとこちらの世界に持ってきたということだろう。


「これまたチートなイベントですこと」

「そんなこと言っている場合じゃないだろう、俺の召喚でもあれを仕留めるのは無理そうだぞ」

「ああわかって…ん?」


 外から何か声が聞こえてくる、

 歓声のような声の集まりだ。


 人々の視線の方向へ目を向けてみると、天使像へ向かって走っている影が目に入る。

 服装からしてプレイヤーだった。


「つまり俺たち以外も飛ばされているってことか」

「これはまた面白いことになってまあ」

「ミロクさん先ほどから空気読めていないです…」

「…同意」


 女性陣にディスられるミロクはさておき、

 俺たちもここで待っているわけにもいかないだろう。


「作戦は…『ガンガンいこうぜ』だッ!」

『ハァ!?』


 全員からすごい目で見られた。

 しかしそれでいい、

 パーティ全員にまだそれだけ気力が残っているということなのだから。


「いくぞ!」


 先陣を切り窓から飛び出す、

 リンクへの距離はそう遠くはない。


「ヒャッハー!俺が倒してやんぜ可愛い精霊さんよぉ!」


 リンクの元へと飛ぶ影が目に入る、

 あの口調それから攻撃方法。

 俺と路地裏で戦ったハイルとかいう男だ。


「喰らいな!『ダガー・レイン』!」


 リンクに向かって降り注ぐナイフの雨、

 しかしリンクは動こうとしない。


「『バリア・ブレス』」


 リンクがふぅと息を吐く、

 するとナイフは溶け落ちた。

 それどころか他のプレイヤーの攻撃まで無効化している。


「ギョエ!なんつーチートなんだヒヒ!」


 勿論リンクとて見逃しはしない、

 目の前のハイルを見つめるとニッコリと微笑んだ。


「邪魔です」

「ヒィ!?」


 ハイルの腹部にいつの間にか刺さっていた剣、

 その場から足を踏み外し、ハイルは下へと落ちていった。


(うわぁ、勝てそうにねぇ…やっぱりある程度手が読めるまでは見守っていようかな)


 そう思い自宅へと引き返そうとしたその時、

 リンクと目が合ってしまった。


 瞬間、背筋が凍る。

 こちらに気がついたリンクは軽く舌なめずりをすると、

 猛スピードでこちらへと飛んでくる。


 逃げようと思ったが、

 足が動くよりも先に逃げきれないということを悟った。


 大きな翼の生えたその姿はまさしく天使、

 精霊というものを超えた存在だった。


「ふふ、やっと捕まえました」


 気がつくと既にリンクは目の前にいた。

 俺の背中へと手をまわし、顔を近づける。

 必死に抜けだそうとするも身体に力が入らない、

 何かエネルギーを吸い取られている様な感覚だ。


「さあ参りましょう、世界の始まりへ」


 足が地面から離れているのが分かる、

 俺はリンクと共に飛んでいるのだ。


 

 間もなくして天使像に到着する、

 辺りは空中、逃げ場はない。

 そう思うとハイルの奴、よくここまで飛べたものだと感心する。


「やっと、やっとこれで一つになれるのですね…」

「一体何を言っている!…うぐ!?」


 また気がつかないうちに刺さっていた、

 今度は剣では無く触手だ。


 リンクの身体から生えている触手、

 それに何かを吸い取られているのだ。


 次第に足にも力が入らなくなり、その場に膝をつく。


「もう少し、もう少しで一つに…うふふ」


 触手によってリンクへと引き寄せられる、

 そのうち身体が何か熱いものを感じた。


 熱を持っている方向に目を向けると、

 一気に恐怖が押し寄せた。


「飲みこまれてる…?」


 左腕がリンクの身体に飲みこまれているのだ。

 体内へと吸収されているのが感じ取れる、

 痛くはない、しかし凄い熱だ。


「くそっ!はなせ!」

「ああ…!気持ちいい…!これが私の望んでいた事なのですね…!」


 勝手に歓喜に浸りやがって、

 どうしていきなりラスボスと一体化しなくちゃならないんだ!


 全身全霊を込めるが抜け出せない、

 いわゆる"積みゲー"だ。


「『フラッシュ スタンス』」


 瞬間、

 目の前を何かが過ぎった気がした。

 いや気ではない、過ぎったのだ。


「うわっ!」


 触手が全て斬り落とされ身体に自由が戻る、

 しかしそこは空の真上で、俺は踏み外し地面へと急降下を始めた。


(これ死んだ!)


 近づいてくる地面を見る、

 自分はどのタイルで死ぬんだろう。

 どのような痛みなのだろう、そんなことばかりがコンマ単位の速さで脳を駆け巡った。


 しかし着地したのはタイルでは無かった。


「オッス!」


 目の前にいるのは大きな鎧を着た西洋の騎士、

 大剣を背負っている騎士だった。

 地面に衝突する前にその騎士に受け止められたのだ。


「いやあなんというか、間一髪だな!」

「あんたは一体…」

「そんなことより、ほら見てみろ。デリトが戦ってるぜ?」


 リンクのほうを見上げる、

 そこには剣を振るうデリトがいた。

 今まで戦うときには動きもしなかったリンクも走っている、

 それだけデリトが強いということだ。


「だがマズいな…」

「え?」

「あのままじゃあデリトは…ん?」


 騎士はデリトは別の方向を見つめた、

 その方向には何か白い煙がのろしのように立っている。


「おっと!時間だ、悪いな坊主。また会おうぜ」


 騎士は俺を降ろすとものすごい勢いでその場を去っていった。


「なんだったんだ…あ!そんなことよりデリト!」


 もう一度デリトのほうを見る、

 まだ負けてはいないようだが苦戦を強いられているようだった。


「リンク、お前の狙いはこれだったのか!」

「デリト、貴方と殆ど違わないでしょう?」

「口の減らない精霊だなぁ!」


 更に戦いは火力を上げる、

 町にはリンクの剣とデリトの剣がぶつかり合う音だけが響き渡っていた。


「甘い!」

「!?」


 リンクの剣が折れる、

 破片がその場へと突き刺さった。


「チェックメイトだ」

「…ふふ」

「ん?…!!」


 何を笑っているのか、という表情でデリトが数秒の隙を見せたとき。

 その一瞬で勝負が決まった。


 デリトの口から大量の血液が漏れ出す、

 リンクが突進するようにデリトへと剣を突き立てたのだ。


「お前、まだ何か武器を…」

「ご明察。見覚えがあるでしょう?」

「!!」


 リンクの持っている剣、

 自らの腹部に刺さっている剣を見たときデリトの顔は青ざめた。


 神々しいまでに白く輝くその剣、

 剣の名は…


「『神刀 ―創世―』…!!」

「はい。素晴らしい回答でした」


 剣が引き抜かれる。


 デリトは何も抗うことが出来ないまま、

 その場へと倒れた。


「デリト!」


 急いでデリトを助けに行きたい、

 しかしあんな空高くまで飛ぶスキルは…


「私のキック力をご覧に入れよう」

「え?」


 後ろから声がした、

 振り返るよりも早く俺の身体が持ち上げられる。


「ワンステップ、トゥーステップ。スリーステップ!」


 住宅を蹴り、ビルを蹴り。

 わずか数秒で天使像へとたどり着いた。


「ジョーカーさん…」

「例には及ばんよ、貴方の連れにも楽しませてもらったしね」

「??」


 何のことかはわからないが、これでデリトの元へと助けに行ける。


 俺はデリトへと駆け寄り、抱き起こした。


「デリト!おい、しっかりしろ!」

「ああ、ゼノか。やれやれ…私としたことがとんだ失態だな、ハハ」

「そんなこと言っている場合じゃないだろ!待ってろ、今回復アイテムを…」


 運よくウィンドウも機能する。

 俺がウィンドウを操作し始めると、その手をデリトが抑えた。


「ゼノ。私楽しかった、みんなと一緒に色々なことが出来て。色んなプレイヤーと出会えて…」

「ああそうか、じゃあもっと一緒に冒険をしよう!」

「ううん、これでいいの。これは私への報い、昔犯したことへの罪償い」

「何言っているんだ!早く回復しないと!」


 デリトは持っていた剣を俺へと渡す、

 黒く光る細身の剣だ。


「これは私からの弟子卒業プレゼント、大事にしてね」

「今はそんなことを言っている場合じゃあ…」


 デリトが涙を流す、

 初めて見たデリトの涙。

 それに驚いている俺の口元へとデリトの唇が重なった。


「ゼノ…ありがとう…」


 そうデリトは微笑み、

 身体が無数の粒子となって消え去った。


「うああああっ!」


 俺はその場に膝から崩れた。


「劇は終わりましたか?素晴らしい舞台でしたね」


 血液が沸騰するような思い、

 デリトから貰ったこの剣に全てを込める。


「リンクぅううあああっ!!」


 リンクも剣を構える、

 俺は正面からリンクへと向かって走った。


 剣が重なる、

 重さが伝わり手がしびれる。


「あらあら、イケナイ子ですこと」

「何だ、何が望みでこんなことをしてやがる!」

「過去のことも知らないような人に、それを教える筋合いはありません」


 一撃ごとに火花が散り、風があれる。


「何か知らねえが、テメェの腐った目的、俺が終わらせる!」


 戦いは最終局面を迎える。

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