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Read New World  作者: りのあ
新世代編
51/55

25話 「スフィアの行方」

 世界樹。

 その根元に奴は居た。


「やぁやぁリンクさん、初めまして」


 槍を背負うその姿はリンクにも見覚えがあった。

 直接的には会っていなくとも間接的には関わっていた、というより関わらざるを得なかった。


「ギル様…ですか」

「こんな悪役プレイヤーにもちゃんと"様付け"するとは、流石女神さまだなぁ?」


 挑発的なことを言うようにギルが話を続ける。


「気取るのも大概にしな、アンタはあのゼノとかいう奴らを利用していた。だろ?」

「何の話か分かりません」

「分からなくたっていいんだよ、そいつを叶えるのが俺の仕事なんだからなぁ」


 リンクの眉がピクリと動く、

 ギルはそれを見逃さなかった。


「条件は…」




 ◆ ― 基地/出口 ― ◆


「やるなぁ…強いね君」

「あんたこそ、中々っスね…!」


 弓を引き、それに合わせて移動を始める。

 矢をかわし蹴りを放つ。


 シールド・アローで相殺し隙を狙う、

 この繰り返しが約30分間も続いていた。


「これでも喰らうッス!」

「遅いねぇ!」


 ビートの放った矢を身軽にかわし再度距離を詰める、

 その足はスキルの光に輝いていた。


「ワンステップ…」


 地面を一蹴り、

 矢の合間を縫い一気に間合いを詰める!


「トゥーステップ!」


 ビートの懐へと入ったジョーカーはサマーソルトを放つかの如く上へと蹴り上げた、

 ビートの身体は重力を無視しているかのように勢いよく上へと舞い上がる。


「ラスト、スリーステップ!!」


 背後の壁を駆け上がりビートの更に上へとジャンプする、

 そしてビートの水落ちへとかかとを落とした!



 砂ぼこりが舞い地面がえぐられている。

 ビートのHPゲージは既に赤へと突入していた。


「もう一撃…ぬっ!?」


 ビートへと向かい落下するジョーカーに無数の矢が突き刺さる。

 平行を保てなくなった身体のバランスは不安定のまま地面へと飲みこまれた。


「こっちこそラストッスよ…」


 弓を引く手に力が入る、

 やがて弓先の矢が虹色へと変色した。


 スキル発動時の光が身体を包み込みジョーカーへと矛先を向ける、

 ビートのMPが一気に減りスキルは発動した!


「『フュージョン アロー』!」


 色とりどりの矢が四方八方へと飛び散る、

 しかし闇雲に放たれているのではない。

 逃げ場を失くしているのだ。


「何ッ!?ま、まさかこれを狙って…!」


 ジョーカーのHPは今までの戦闘で既にわずか、

 一撃でも受ければ死亡確定だった。


「く、クソッ!…潔く死ねというのかっ!」


 ジョーカー足に力を込め、ビートへと全力で飛んだ!

 一本目、回避。

 二本目、回避。


 次々と矢を回避しながらビートへと向かって走る!


「残念だけどジョーカーさん、アンタの負けっすよ」


 ジョーカーの背中に矢が突き刺さる。

 それに続くように残りの矢も全て突き刺さった。


「だって…」



『この技、かわせたプレイヤー。今までに一人しかいないんスから』


 ジョーカーの顔が歪む、

 怒りでではない。喜びでだ。


 美しい矢の破片エフェクトと共にジョーカーの身体も散っていった。


「ビート!」


 声に驚き振り返る。

 そこにはデリトを担いだゼノと仲間たちがいた。


「急いで世界樹に戻るぞ!」

「…なんか訳アリっぽいスね」

「向かう途中に話そう」


 ゼノ達は基地を後にした。



 世界樹の葉はいつも通り輝いている。

 緑というよりも青に近く、透き通った水のように美しい。


 精霊としてそこに立つリンクもまた人気がある。


「お帰りなさいませゼノ様」


 いつものように礼儀が正しい。

 軽く会釈し、こちらへと笑顔を振りまく。


「お前、ここにギルが来なかったか?」

「来ました」

「どこに行った」

「貴方達を追いかけていきました」


 俺たちを追いかけてか。

 大方すれ違いにでもなったか、

 ならまだ時間は稼げそうだな。


「じゃあ、いくぞ」


 カイザが先陣を切り世界樹の間を出る。


「さて、どうしたものか」

「とりあえずアナライさんのところで装備でも揃える?」

「…そうする」


 カイザ達はテレポートクリスタルを使った。


「そういやゼノとデリトは?」

「あ、忘れてきた」

「…えぇ」




「…さて、茶番はここまでだ。出て来いよギル」


 ゼノは背中の剣を抜き世界樹のほうへと向けた。

 世界樹の影からは案の定ギルが姿を現す。


「やれやれ、ばれちゃってたか~」


 歯が鳴る、

 ギルに対しての怒りがまた燃え盛っている。


「おかしいと思ったんだよ、てか誘ってたんだろ?リンクの前に蘇生(リスポーン)するってのに俺たちを追いかけてくる訳がない、子供でも分かるぞ。」

「まぁなぁ?だってお前らが帰ってくることで俺の作戦は成功に終わるんだからなぁ!」


 リンクがギルへとスフィアを渡す。


「リンク…?何やってるんだよ、おい!」


 ギルは受け取ったスフィアを石板へとはめ込んだ。

 石板にはめ込まれているスフィアは数が増えている、恐らくガーディアンとかいう奴らが集めてきたんだろう。


 石板が光り出し真ん中の穴に光が集まる、

 他のスフィアは砕け散り消滅した。


(あれが対消滅?)


 しかし一つだけ残っていた、

 何もなかった真ん中の穴に一つ。

 新たなスフィアが生み出されていた。


「これで分かったろ、ここにいるリンクちゃんは~最初からこいつが狙いだったんだよ~」


 そんな馬鹿な。

 俺たちは利用されていたっていうのか、

 あのリンクが?まさか、そんな。


「嘘だろリンク?なぁ?」


 リンクは何も言わずに俯く、

 どうやら俺の想像は砕かれてしまったようだ。


「そんじゃまぁ、ラストショーといこうかぁ!!」


 ギルはリンクの目の前へと移動しスフィアを突き出す、

 リンクの胸にスフィアは飲みこまれた。


「キヒヒ、俺の野望は崩れた。だからこの世界はリセットだぁ!」


 リンクの胸に埋め込まれたスフィアが光る、

 身体中に根のような物を張り巡らせ魔力が溢れだす。


 空は赤く染まり雲が立ち込める。

 世界樹が枯れ、地面が崩れる!


「ヒヒヒ…うっぐっああ!」


 ギルは地面へと飲みこまれ、消え去った。


「デリト!」

「あぁこいつはマズいな…!」


 剣を納め、走り出す。

 とりあえず世界樹の間から出なければ!




 ―足をとられる。


 …と思いきや頭痛が走った、

 病的な痛みではない物理的な痛みだ。


「起きろゼノ。」


 目の前にいたのはデリトだった。

 顔を覗き込むようにしてこちらを見ている、

 俺の下敷きになっていたのは俺のベッドだった。


「つまりここは、俺の部屋?」


 目の前にはパソコン、ゲームの山。

 開封後の『Read New World』のパッケージ。


 完全に俺の部屋だった。


「おい!ゼノ!」


 窓を突き破りカイザが入ってきた、

 シロ、フィリア、ミロクもいる。


「ってぇことは…」


 俺は自分の姿を確かめた、

 ゲーム内の姿のままだ。


「どうやら現実に飛ばされちまったみたいだな」


 …マジかよ。

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