20話 「守護者の任務」
薄暗い暗闇の中、一筋の光が辺りを包む。
「デリトォォォオオオッ!!」
周囲は光に包まれ、何もかもが吹き飛んだ。
◆
俺たちはリンクからの依頼でとある基地に潜入していた。
勿論、宝石回収が最終目的だ。
「なぁ、このビートさんって人…本当に強いのか?」
「私を舐めないでほしいッスね~」
「じゃあ…もう少し離れてくれませんか…」
ビートの豊富なる胸によって俺の右腕へと"胸圧力"がかかり血が止まりそうだった。
「あれ~?ゼノさんもしかして照れてるッスか~?可愛いっスね~」
「なっ!?て、照れてなんかいねーよっ!」
「しーっ!お前たち何を騒いでいるんだ馬鹿者、見つかるだろ!」
思わず逆上してしまった、やっぱりこのビートという女とは合わない気がする。
しかも全然強そうじゃない。
「あーっ!今、弱そうって思ったッスね!?」
鋭さだけはあるんだな、だが全く持って今の状況に必要ない。
「わかったッス、そんなに私を疑うなら見せてやるッスよ」
ビートはデリトへとアイコンタクトによる確認をとり、ダクトから飛び降りる。
「なっ!?侵入者だ!侵入者だぁ!」
案の定見張り見つかる、しかもビート一人に対して数十人の兵と来た。
これはどう考えても勝ち目がない、NPCならまだしもこいつらは全員一般プレイヤーが兵として集まった奴らだ。
「ガンナー部隊!一斉射撃、よーい!放て!」
兵長と思しきキャラクターの掛け声によって一斉に攻撃が始まる、デリトに向かって魔力エネルギーの結晶となった弾丸が一秒に何千発と打ち込まれる。
「ゼノさん…私はここまで…ッス」
「ビートさん…!」
空中で撃ち落とされるビート、
その姿は見るもあっけなかった。
「…なーんちゃって」
空中落下中に一回転を決め、敵陣に向かい弓を構える。
「今のはどう考えてもフラグなんて立ってなかったッスよ…『フュージョン・アロー』!」
色鮮やかな光を放つ矢が敵陣を包む、誰一人としてかわすことはできない!
「スゲェ…一体、何レベまでレベリングしたらあんなに強くなるんだ」
「そういえばデリトさん、このゲームのレベルキャップってどのくらいなんですか?」
レベルキャップ。
簡単に言えばキャラクターレベルの上限だ、課金などで上限解放可能というゲームはレベルキャップが大抵設けられている。
ただ、実際はそういう意味で使われないこともあるので注意。このゲームではそういう使い方、というだけだ。
「このゲームにレベルキャップは無い」
「え…そんなことって」
レベルの上限のないゲーム、つまりレベルは100レベでも1000レべでも。あるいは10000レベなんてこともあり得るってことだ。
「なぁ、そんなことはどうでもいいから俺たちもそろそろ行くぜ!」
俺たちもビートのようにダクトから飛び降りる、地面には大量の兵士の武器だけが残っていた。
「ありゃ~お早い仕事で…」
俺たちが到着するのを待っていたかのように奥のドアが開く、飛び出してきたのは…ナイフ!
「フンッ!」
一番前に立っていたビートさんに軽く弾き飛ばされる、ナイフには毒の加工も何もしていないようだった。
「いや、お見事。」
手を一定の速度で叩きながらドアの陰から現れたのは黒い帽子に黒いコート、骸骨のような仮面をつけた男だ。
声で性別は判断できる、あっているかどうかまでは保証できないけど。
「誰だテメェ…」
「おっと、ご紹介が遅れました」
男は左手を腰へと回し、右手を胸元へと持っていく。
そしてそのまま一礼すると顔を上げて名を名乗った。
「Jokerでございます」
その場が一瞬で凍り付いた、危険視していた相手が向こうから現れたのだ無理もない。
「実を言いますと、レッドスコーピオンのアジトからつけさせてもらっていました」
「ほう?目的はなんだ?」
ビートに弾かれ、地面へと突き刺さっていたナイフがジョーカーの手元へと戻る。
「"面白そうなこと"ですかね」
全員、一斉に構える。
がビートが「先に行け」と目で合図をして俺たちよりも前に出る。
「全員、私に掴まれ!」
デリトの命令に従い、全員デリトに掴まる。
「逃がしませんよっ!」
ジョーカーがナイフを構え、こちらを塞ぐように攻撃する…が既にデリトはいない。
「遅ぇんだよ」
俺達ごと光速化したのだ、そのまま出口へと突き抜ける!
「ひゅ、ヒュー…やるねぇ…!」
ジョーカーもデリト達についていこうとする、しかしその足元には一本の矢が突き刺さる。
「アンタの相手は私ッスよ」
「オウ…クレイジーガール」
二人のプロプレイヤーが睨みあう。
◆ ― 基地/廊下 ― ◆
「…いい加減放せ」
全員デリトの移動の便利さに気が付き、掴まりっぱなしでいた。
一人、フィリアを除いては。コイツはただデリトに触っていたいだけだろう。
「い、いやぁ~僕は離れようって言ったんですよ?でもカイザさんが…」
「ぬっ!?俺のせいだと、否!ゼノがだな…」
「はっ!?いやいや、これの主犯格はフィリアだろ」
「デリト…ハァハァ」
どう考えてもコイツが一番ヤバい、もはや病気だ。
「ハァ…じゃあ、ここからは自分の足で歩けよ」
『え~』
「あ・る・け・よ?」
『は、ハイ!』
鬼神の如くキレたデリトの顔を見てしまった、
こんなのレイドボスとは比較にならないほどの恐怖だ。
「そういえばビートさん大丈夫かな…?」
◆ ― 世界樹/守護者の間 ― ◆
椅子はたくさんあるのに、そこには一人の男だけが座っていた。
「セト。」
セトと呼ばれる男に剣が喋りかける、
男はそれに対し無言で頷いた。
「俺を忘れず持って行けよ」
「わかってる」
世界はまた崩壊を始める…




