17話 「デリトの剣に潜む者」
現在、
全く持って理解できない状況に置かれている。
「あれ、seto様はどこでしょうか」
「いるわけないだろう、いつも通り世界樹で仕事中だ」
このカルマという女、デリトさんが呼び出したというのか。
プレイヤーを呼び出すなんて聞いたことが無い、
たとえ"ネイティブ"とかいうやつだったとしてもそんな呪文聞いたことが無い。
「カルマよ、アイツと戦えるか?」
「アイツではなく"クイン"と呼びなさい」
「ほう?相手のステータスやHPを見られないネイティブを良い様に利用しておいて、名前で呼べと?そんな人間に対してするようなことを人外的行動をするような奴にしろと?それは虫がいいんじゃないか?」
クインは自らの爪を噛み切ると武器を出し、構えた。
「口数だけは減らないようね」
「鎖鎌…ね、私とキャラが被りすぎよ」
カルマも武器を出す、見たこともないような大鎌を軽々と持ち構えた。
「デリトさんといい…見たこともないような武器だらけです」
「あぁ、あの鎌なんてどの武器ジャンルに含まれるか…全く持ってわからねぇ」
「大剣…とか?いや、太刀系…?いやいや鎖鎌の仲間ってことは…いやでも」
みんなの勝手な考察が始まる、
それとは裏腹にデリトさん達の戦いのほうは緊張状態にあった。
「行きますわよ…っ!」
「どこからでも来なさい、アナタなんて"断絶の時代"に比べれば相手にならないわ」
「くっ!」
クインが鎖をとり、鎌のほうを投げる。
しかし鎖部分に腕を絡められ返される。
「なら、このまま…!」
帰ってきた鎌を掴み、カルマの腕に絡みついている鎖をゴムのような動力源としてカルマへと一気に飛ぶ!
「切り裂いてあげるわ!」
カルマはピクリとも動かず、ただただその場に立っている。
「終わりよォ!」
クインは渾身の力を込め、カルマを切り裂いた。
カルマの胸、肩、足から血が流れる。
「フン、そんなチマッとしたような武器でとどめを刺せるわけないでしょう。馬鹿じゃありませんか?」
「へ?」
「あなたは後悔してください、ここで私にとどめを刺せなかったことを」
カルマが鎌を振り下ろす。
一瞬、本当に一瞬だった。
鎌が上から下に降りるまで、たったそれだけの間に攻撃したのだ。
「ウグッ!?」
背中から血が噴き出す、いくらエフェクトとはいえ青ざめるほどに。
その次には足が消滅する、しかも微塵切りになって。
「わかったかしら?所詮これがアナタの実力よ」
「フ…フフ…」
「?」
足を失くし、地面にひれ伏す形になったクインはそれでも笑う。
それに何か脅威を感じたカルマは後ろへと下がろうとする。
「手遅れよ!『リヴァン』!!」
『リヴァン』…!!
それは自爆魔法だった、
ヴァーン系呪文の中で何を間違ったのかMP消費ではなく自爆系に走った魔法。
「くっ!」
あたりが真っ白になる、
デリトさんがバリアをはってくれて私たちは守られた。
でも…
「カルマさん!?」
そこにカルマさんは居なかった、
吹き飛ばされてしまったのだろうか…跡形もなかった。
「そんな…」
「プッ!」
デリトが笑い出す、
何がおかしいのか。
カルマさんが吹き飛んでしまったというのに!
「いや、すまない。余りにも痛快だったものでな」
「何を…!」
「よく見ろ」
「え?」
デリトさんの剣から光が放たれたと思うとそこにカルマさんが現れた、
しかしさっきのようにハッキリはしておらずホログラフィックのように透けている。
「さっきのは具現化させたカルマだ、で爆発寸前に剣に戻した」
「よかったぁ…でもそんなスキル見たことがな…」
「そんなことよりギルマス、お前何か隠しているんだろ?」
先ほどよりも男は強く笑う。
半分は見抜かれたことを喜ぶように、もう半分は強敵に出会えたことに歓喜しているかの如く。
「よくぞ見破った!いいだろう、出してやるよ!」
先ほどのように手を鳴らすと玉座の後ろにある扉が開く、
そこから出てきたのは…
「相手をしてもらえ『フィリア』。」
黒髪の赤い目をした女の子だ。
身長もデリトと大差ない、幼女体型である。
手にはぬいぐるみを持ち、無片方の手には本が
「子供…?」
デリトも驚愕しているようで目を丸くしている、
こんな姿を見るのは珍しい。
「はじめまして『フィリア・ツェペシュ』と言います、以後お見知りおきを」
フィリアという少女はスカートの裾を持ち上げ、
礼儀正しく挨拶をする。
「"ツェペシュ"…吸血鬼をテーマにしたのか」
「ご名答、私は吸血鬼でございます」
ツェペシュ…?なんだそれ?
まぁ、デリトが知っているってことは何かあるのかな?
「フィリア、君が私の相手になるというんだね?」
「左様でございます」
笑顔もなく、声は無機質だ。
まるで人形の様だ、少女であるからなおさら人形に見える。
「フフ、面白い。吸血鬼が強いか私のほうが強いか…試してみようじゃないか」
「いやゲームマスターより強い奴なんているわけ…」
「しーっ!ミロクさんは余計なこと言わない!」
ギルマスは少し眉をピクリとさせた後、
話を切りだしてきた。
「そこのデリトというお嬢さんが強いのは十分にわかっている、話をしたときからな」
「ほう、伊達にギルマスはやっていないってか」
「フフ、そこでだ。ハンデとして剣を置いてはくれまいか?いや、戦うなとは言わない。ただハンデとして素手でやってほしいのだ」
素手だなんてふざけてるのか!
とカイザが怒声をあげようとしたがミロクが抑える、シロも必死に自分を抑えた。
「いいだろう、私はこの剣を置こう」
「デリトさん!」
「フフ、相手は少女。こうでもしてあげなくてはな」
少女の無表情に、
無表情ながらも驚いたような顔をした。
口を開いてポーっとしているような…
「どうした、闘わないのか?」
デリトの声で我に帰るように首を振る、
そしてぬいぐるみを更に強く抱きしめた。
「いくぞ!」
「コクン。 (頷く)」
デリトが拳を握り、走り出す。
「少女を殴るのは不本意だが…仕方がない!」
少女は左手に持っている本を開くと何か言葉を放つ。
「『ケルベロス』。」
突如、その本から無数の鎖が飛び出す!
「うおっと!」
器用にもデリトはそれをかわしてさらに前へと進む、
だが少女の鎖も攻撃を止めない。
「さて、このまま攻撃できそうだな」
デリトが更に加速しようとした、その瞬間。
「『ディアボロス』」
「何ッ!?」
デリトの足元に真っ暗な闇の鏡の水たまりが出来上がり、その中から無数の腕が出てくる!
「うぐっ」
デリトの腕を掴み、引き下ろす。
その場に尻持ちをつく形で体勢を崩す、そしてチェーンが絡みつき拘束する!
「味な真似してくれるねぇ…!」
「ありがとう」
デリトの頬を一筋の汗が伝う。
(女の子だと思って少々油断してたが…何が人形だ、こいつはとんでもない殺人人形だぜ…!)
少女が少しづつ近づいてくる、
デリトは痩せ我慢からか少し笑って見せる。
絶体絶命な状況だ。




