15話 「信頼と価値観」
あれから数時間が経ち、私達はゲテルグルブに到着していた。
「ほーう、かなり賑わっているなぁ!」
「これなら僕も商売できるかな~」
ミロクさんの商売なんて怪しい以外の何物でもない、
どうせ碌なもの売らないんだろうなぁ。
「それじゃあどうする?全員それぞれ別行動するか?」
カイザの提案に皆同意し、
とりあえず私はデリトさんと行動することになった。
「この町は賑わいに反してルーラーよりも荒んでいる、私から離れるなよ?」
「わ、わかってます」
なんだろう、
この人がゼノさんを殺したと思うとどうしても仲良くなれそうにない。
デリトさんは悪い人じゃないとは思うけれど、価値観で物事を判断しているような気がする。
人情が足りないというか…
「女二人組なんて大丈夫かァ?」
「舐めてくれるな、お前たちが全員かかってきても負けない自信はあるよ」
「くぅ~!流石デリトの姉御、僕を倒しただけはあるねぇ~」
「お前はアイテムに頼りすぎだ」
「そんなぁ~!」
普段はクールで何事にも動じず、楽しいとか嬉しいとかを表情に出さないけれど。
仲間と話している時のデリトさんは、
なんだかちょっと楽しそうだった。
「さてジョークもこれくらいにして、早速情報収集に向かうとしよう。待ち合わせは西の広場だ」
「了解」「おう」
こうしてそれぞれ持ち場へと散った、
私はデリトさんの後ろを歩いている。
背後をとられると何をされるかわからないから…
「あ、そうそう」
突然デリトが立ち止まり振り返る。
「ここの通り、結構危険だから気をつけろ」
それだけ言うと前を向きまた歩き出す。
(どうしてわざわざ危険な通りを通るんですか…)
そんな文句を考えていた矢先、
私の視界が闇に包まれた。
「むぐぅ!?」
声が出せない、
何かを咥えさせられているようだ。
暗いのは何かをかぶらさせられているからだ、ということは…
(私、早速誘拐されちゃったんですかぁ!?)
あんなにデリトさんが注意してくれていたのに、それなのに私ってやつは。
きっとデリトさんは助けに来ない、足手まといに近い私を助けてもメリットが無いからだ。
「ヘヘッ…アニキ、今回の女は結構上玉じゃないですかい?」
「おうよ、こいつは急いでアジトに戻ってお頭と味わうとしよう」
味わう…?
えっとかなりマズい状況のようです…
「おい、乗せろ」
「はいよ」
視界は真っ暗で何が起きているのかはわからない、
でも身体が宙に浮いている感じがするということは…
(馬車に乗せられてる!?)
「ガゴン!」という音とともに動き出す、
どうやら走り出したみたいだ。
「おい、様子を見ろ」
カーテンが擦れるような音がした後、目隠しを脱がされる。
猿ぐつわも解かれてようやくある程度自由になった。
「始めまして~お嬢ちゃん」
「な、何なんですか貴方達は!?」
「んー?俺たちはね、お嬢ちゃんと仲良くしたいだけだよう」
仲良く?
どう見ても仲良くするような顔じゃないけど…
「あとでちゃあんと食べてあげるからねぇ~」
「た、食べても美味しくないですよ!」
男は笑った、そして元の表情に戻すと低い声で言う。
「食べるってのは、性的な意味の方でだよ」
「!!?」
やっぱりかなりマズい方々に捕まってしまったようで、
現在かなり絶望的な状況です。
「なぁ?アニキ」
あぁ、もうだめだ。
この後にきっと色んなことされちゃうんだ、コミケで売っている同人誌みたいに…
「ん?アニキ?」
男の表情が変わる、それと同時に青ざめていく。
「あ、アニキ!」
男がアニキと呼んでいた人物は消滅エフェクトと共に運転席から消滅した、
バランスの取れなくなった馬車はそのまま転倒する。
「うわぁぁああっ!!」
町の中だが、
人気のない場所だったので騒ぎにはなっていない。
隙を見計らって荷台からの脱出を図る。
「ち、畜生!いったい何が!?あが!?」
転倒した馬車の下敷きになりながらも、何とか抜け出せた男はすぐさま絶望のどん底へと落ちることとなる。
「やれやれ、ぼちぼち情報集めも出来やしないな」
倒れた馬車の荷台の上に立っていたのはデリトさんだった、
男にナイトメアソードの先を向けている。
「な、なんだお前は…!?」
「お前こそ私の可愛い連れを攫うだなんて、万死に値するぞ?」
男の顔に更に刃を近づける、
男は急いで立ち上がり一目散に逃げていった。
「全く、って…お、鳥馬車じゃないか。アイツらでもフォンを持っているんだな」
私のことよりも"鳥馬車"とやらが気になるようだ、
どうせそんなものだろう…
「あ、そうだそうだ言い忘れていたな」
え?
「"ケガは無かったか"?」
その時、
デリトさんの本当の優しさを垣間見た気がした。
「えっと…はい、ありがとうございました…」
ちょっとぎこちないお礼になってしまった、でもデリトさんに初めて心配してもらったのかと思うと普通じゃいられない。
「立てるか?この鳥馬車に乗って情報収集に行こうと思うんだが」
私は差し出された手を握って立ち上がる、
デリトさんは実は私が思っていた以上に人情深い人なのかもしれない。
ツンデレってやつ…かな?
「ま、警戒を解いて信頼を築くという作戦でもあったんだがな…」
「はい?」
「いや、何でもない」
荷台とともに倒れているフォンを立たせて手綱を握る、
その姿は凛々しい。
「ホラ、さっさと乗らないと置いていくぞ」
「は、はい」
私はデリトさんが少し好きになりました。
「そういえば、"鳥馬車"って鳥なのか馬なのか…わからないな」
私たちはゲテルグルブの町を走った。




