12話 「決着」
炎を放つ、剣で斬る。
また放つ、そして斬る、これを繰り返しながらデリトは一歩ずつミロクに近づいていた。
「ハァ…ハァ!」
相手が恐怖しているのが確信できるくらいの息切れ、
俺もデリトと本気で生死を分けるような戦いをしていたらあのくらいの恐怖は軽く味わっていただろう。
「さて、お前のその宝石に少し興味が湧いた。そのアイテムについて情報を提供するならば見逃そう、従わないのなら無関係の我々冒険者を襲ったとしてここで斬る」
デリトが話している間もミロクは攻撃を止めない。
否、止めることが出来ないのだ。
ここで攻撃を止めたらその瞬間に消される、そんな恐怖で宝石を握る手に更に力が入る。
「"交渉決裂"だな」
一言。
その一言を口から発した瞬間、その場から姿を消す。
声という音より早く、1秒よりもっと早く相手へと向かって走る。
「なっ!?どこに行った!!?」
ミロクの視界にもうデリトの姿は無い、
たった今攻撃をしていた相手の姿が消えたのだからパニックにならない訳がない。
「まさか…さっきのコイツと同じ…」
ミロクがコチラを見つめる、
その瞳にはさっきまで俺と戦っていた時のような狂気的色は無い。
それどころかどこか助けを求めるような、後悔をしているような表情をこちらに向けている。
「こうなったら…」
ミロクが宝石を俺に向けた、
いつでも撃てる言わんばかりに宝石は輝いている。
「どこに居るのかわからない、が今僕に攻撃を仕掛けた瞬間にこの男を撃つ!」
部屋全体に向かって言葉を放つ、どこに居るのかわからないからだ。
「ふむ、とうとう人質までとるようになったか」
デリトは既にミロクの背後へと回りこんでいた、
それどころか倒れた本棚に座り込んで本を読んでいる。
「う、うわぁぁあああっ!!」
ミロクはまるでバケモノを見たかのようにデリトに向かって炎を乱射した、
乱射している割には弾は性格にデリトに向かっている。
「ほうこれは興味深いな…」
などと本を読みふけるデリト。
弾はデリトを貫通する、というかすり抜けている。
「な、なぜだ…!?」
俺はよく目を凝らしてデリトを見た、
するとあることに気がつく。
「あれは…」
デリトに炎が着弾する際に一瞬、
本当に一瞬だがデリト自体が点滅していた。
「そういうことだったのか…」
俺もついさっき偶然使えたような能力をデリトも使える、
だから弾を透かしているのではなく避けているんだ。
それも一発ずつ、正確に。
「ま、お前の場合は"偶然"じゃなくて"必然"だがな」
まるで俺の考えを読み取ったかのように微笑するとデリトはもう一度姿を消した、
勿論相手には理解できていない。
「当たらない、なぁ…」
ミロクは宝石を握っている腕を下ろした、
同時にデリトも姿を現す。
「チェックメイト、のようだな」
「えぇ…そうみたいですね」
ミロクは満足気の顔でその場に座り込んだ。
デリトも宝石を回収し、剣を納める。
「ゼノ、大丈夫か」
カイザが応急処置に入る、
HPが回復していくのが身体で感じられた。
「これで完全回復したはず…ッておいゼノ!」
なんだろう、
俺は回復が終わるとその場を走り去ってミロクの元へと走っていた。
そして…
「ぐっ!!」
ミロクの顔面に一発、
握りしめた拳を叩き込んだ。
「ゼノ…」
殴った時の反動で後ろへとよろめく、
それに反抗するように足に力を入れてもう一度ミロクへと叩き込もうとする。
「今のは…シロの分だ、そしてコイツはさっき殺した奴らの…っ!!」
咄嗟に目をつむるミロク、
がその顔に拳が触れることは無かった。
「シ…ロ?」
振り上げた俺の手首をシロが両手で必死に抑えていた、
振り切ろうと力を入れるも振りきれず。
俺は怒りを抑えた。
「どうして止めたんだ」
「綺麗ごとと笑われるかもしれない、でも怒りや憎しみだけで行動してほしくはない…です」
その悲しそうな表情を見たら怒りも失せる、
俺は腕をおろしてその場から離れた。
「ありがとう…ごめんなさい…」
ゼノの背中を悲しそうに見届けるシロ、
それに何かを感じているかのようにデリトは見つめていた。
◆ ― ルーラー・ズ・シティ/酒場 ― ◆
「そんでどうしてこうなった」
酒場によくある丸型テーブル、
その上に不機嫌そうに肘を立てて頬杖をつく。
「いやな、私はやめとけと言ったんだがな」
「嘘つけ、お前が宝石について知りたかっただけだろ」
パーティが大人数になるというのは時にデメリットがあるとはいえ、メリットのほうが大きいことが殆どである。
が今回はデメリットの方が大きい気がする、個人的偏見でだ。
「ということでヨロシク~」
俺の向かいに座っているコイツが話の発端だ、
内容は単純。
パーティに加わっている、ということだが…
「何でお前が加わるんだよ」
「そう嫌がらないでくださいよ~」
ミロクがパーティに加わってしまった。
どうしてこうなった、
ステ振り以上に間違ってはいけないモノだったのではないだろうか。
「さっきまで俺たちと殺し合っていた敵が、どうしてパーティになるんだよ」
「いや、僕はこれでも真面目な冒険者でしてね。儲けられそうなパーティだったら入りたいんですよ」
あんなことをしていて何が真面目な冒険者だ、
ただの人殺しじゃないか。
「そうそう、それについてだけど。あれは痛みはあるが死んだりはしないんだよ」
「信用ならないな」
「だってあれLv.1だし」
Lv.1…?
「Lv.1って言うのはあの宝石の危険度だと思ってもらえればいいよ」
「ほう?」
デリトが反応した、
ということはかなり重要なことなんだろう。
「あの宝石は『デリートスフィア』と言ってな、僕も本当に詳しいことは知らないんだが…この世に結構出回っているらしいんだ」
「というと?」
「"結構"と行っても合計20個という話だが本当かどうかは定かじゃない、あの宝石自体が謎の存在だからね」
デリートスフィアか…
気になるな。
「それで?お前のそのデリートスフィア、それはLv.1と?」
「あぁ、命や身体に関わるLvは5からだ。Lv.1は痛みを与える程度だよ」
Lv.5から生死に関わる、だとすればもうかなり危険な状況ってことか。
今回がLv.1のスフィアだったから良かったものの、
Lv.5付近だったらどうなっていたことか…
「というわけで、僕も情報が欲しいし一緒に行動させてもらうことになったから~」
色々と急展開すぎんだろ、
もう一度言おう…
どうしてこうなった。




