09話 「長時間の待ち合わせ」
一度死亡したプレイヤーは世界樹で蘇生される。
また、
一定時間ならばプレイヤー内での呪文やアイテムによる蘇生も可能だ。
「いこうか…って、そっちは世界樹ですが…」
「いいんだよ、こっちであってる」
シロにはよくわからないが、
デリトが察したような顔で歩いているということは恐らくはこれで正しいのだろう。
「来たか」
シロ達の目の前にガタイのよい男が立ちはだかる、
思わず「うわっ!」と声を出してしまいそうになったシロだが必死に口を押えた。
「おう、待たせたなカイザ」
「あぁ、"かなり"な」
目の前でゼノと握手しているこの男、
シロとは初対面ではあるが悪意を感じない。
「ほう、ひどい姿になったものね」
「あぁ、うちのギルマスがとうとう俺を消しに来たもんでな」
カイザと呼ばれているこの男、
この屈強そうな男でも装備を破壊されて殺されるんだからきっと自分も消されるに違いない、それも"簡単に"だ。
「そんで、そこのお嬢ちゃんは」
「ひゃっ!?」
思わず声が裏返る、
ジロジロと見過ぎただろうか。
「シロって言うんだ、俺のパーティに新しく加わったヒーラーだよ」
「ヒーラー…回復役か、いいじゃないか」
とりあえず俺はカイザにもパーティ招待を送ってパーティに入ってもらった、
これでパーティは丁度四人だ。
「そういえばカイザの装備も揃えなくちゃな…」
「なら、"あそこ"でいいんじゃないか?」
「おっ!そうだな、シロの装備もついでに買おうか」
「アソコ…とは?」
ゼノは人差し指を唇に当て、「行ってからのお楽しみ」とだけ言うとそのまま歩き出す。
「全く、つくづくわからんやつよ」
「え?」
カイザが口を開き、
ゼノについて話し出した。
「俺と初めて会った時にもな、勝てないとわかっている勝負に首を突っ込んでな…最初は"馬鹿"だと思った。だが奴の強運とでもいうべきだろうか、今現在まで生き残ってるんだよ」
強運…
そんなもので生き残れるのだろうか、今まで何とか死の茨を潜り抜けてきたシロからするとにわかに信じ難いものがあった。
「ま、あなたたち二人にも言っておくけど…強運なんて続かないわよ、全ては必然だから」
「それって一体…」
デリトがコチラを睨むように見返すと、
静かに口を開く。
「"勇気"と"無謀"は別ってことよ」
氷でできた刃のように鋭く、
冷たく突き刺さるその一言はシロとカイザの脳裏に深く刻まれた。
「さ、無駄話してないで行くわよ」
すぐにいつもの表情へと戻るデリト、
がシロ達はいつも通りのテンションになれる気がしなかった。
◆ ―ラクスラズルシティ・アナライの武器屋― ◆
「アナライさん、またお邪魔しますよ~」
「あ゛っ!?ったく、一日に何回お前らは来店する気だ!」
怒ったように対応するアナライ、
だがその表情は喜色満面である。
「ま、アナライも客が不況だからな」
「んだとぉっ!?」
シロとカイザはしばらくの間入り口で呆然と立ち尽くしていたが、
アナライがガンを飛ばした瞬間に「ハッ」としたような表情をして店内を歩き回る。
「アナライさん、カイザに合う良い防具ってありますかね…」
「ん?カイザってあの男か?」
アナライは壁に飾ってある剣を見つめているカイザを指さす。
「そうです」
「おーい!そこのカイザとか言うやつ、お前ちょっとコッチこい!」
「えっ!?は、はい!」
カイザとは思えないような腑抜けた声を出してカウンターへと向かう、
アナライはカイザをジッと見つめてまたも奥へと下がっていった。
「おいおい、お前汗が凄いぞ」
「し、仕方がなかろう。奴は歴戦の戦士と見た」
気取ったようなセリフを言い、何とかキャラを持ち直そうとするカイザだったが、その表情は緊張と恐怖で固まっていた。
(ダメだこりゃ…)
しばらくしてアナライが奥から出てくる、
一つの鎧を持ちながら…
「これは…」
「お前のステータス上、装備上限が『防御値350』だったからな。そいつは『防御値350』ギリギリだ」
凄い、
相手のステータス上限ギリギリの装備を持ってくるだなんて。
基本、
装備というのは一定の数値にステータスが達していないと装備することができない。
たとえば指定防御力が100と記載されている装備は、
装備するプレイヤーの防御力が100もしくはそれ以上じゃないと装備出来ないのである。
「耐久値、防御力、効果…全てにおいて前の装備よりも各段に上だ…!!」
「だろうな、ウチに揃わないものは殆どねぇよ。」
アナライはカウンターへと座りなおす、
その顔はしたり顔で染め上げられていた。
「あ、そうそうあとシロの使えそうな武器とかって…」
「ん?あのテクターか、回復係にうってつけの装備なら沢山あるぜ」
今度はカウンターから出ると、
そばにあった杖を取り出した。
「ほれ、装備してみ」
シロに向かって杖を投げる、
それを「あわわっ」とぎこちなく受け取り装備するシロ。
「そうだなぁ…どれだけ強いかは」
アナライの手の平に一本の槍が出る、
瞬間!俺の脇腹を貫いた!
「何ッ!!?」
アナライは「ニヤリ」と微笑をこぼす、
なぜ攻撃されたのか理解が出来ないまま俺は後ろに積んである木箱へと背中から突っ込んだ。
「オラオラァッ!!さっさと回復しないと死んじまうぞォ!!」
アナライが次の攻撃をしようと槍を持ち替える、
そして攻撃へと移った!
「『ラ・ヒール』!!!」
シロの声とともに俺のHPがみるみるうちに回復していく、
あと一撃受けたら死んでいたであろう赤色のゲージから一気にもとの緑ゲージへと戻った。
「うおおっ!!」
眼前で矛先を止める、
剣の腹で払いのけるようにして間合いから身を投げた。
「ヘッ、上出来だ」
そうか、
これはシロの回復力を試すための攻撃だったのか。
「レベル10~20程度の仲間に対してなら全回復、または中回復くらいはできる回復量の杖だ。大事にしろよ」
シロは何が何だか状況を理解できず、
ただ「はい」と言って口を開けていた。
今回、アナライの武器屋で購入した武具は
『クラインテッドアーマー』
防御力+35
効果:一定割合のダメージを
『ヒーリングロッド』
攻撃力+15
回復力+30
である。
「うむ、中々に良い買い物をしたもんだ」
どうやらこの店の品ぞろえの良さや品質に、
カイザもご満悦のようだ。
「これである程度準備はできたな」
「あぁ、後はカイザに道案内してもらうだけだ」
これでとうとう"レッド・スコーピオン"の本部へと向かえる、
ギルマスとの決戦も近いな。
俺たちはラクスラズルを後にした。




