07話 「一押しの武器屋」
黒いマスクをつけた男がとある洞窟の前に立つ。
「ここが奴らの本部か、まぁ…様子見といこうか」
そう呟くと、
軽々と洞窟の表面である岩肌を走り、
頂上へと昇っていった。
「ここからなら、まぁ見えるか」
男はそこに座った。
◆ ―ラクスラズルシティ・路地裏― ◆
「ここは…?」
俺の目の前には路地裏が広がり、
その先には…
「ここが私の一押しよ、覚えておくのよ」
路地の突き当りには、
まるでそこの壁と一体化したかのような建物があった。
「お邪魔しまーす…」
俺は恐る恐る中へと足を踏み入れていく。
中にはカウンターがあり、
武器と防具が並んでいる普通の内装のようだが。
「アナライ!いるんでしょ」
デリトがカウンターの奥へと声をかけると、
中から男が出てきた。
「なんだぁ?デリトじゃねぇか」
(うっわ…背タケェ…)
初見でまず思ったのが「背が高い」ということである、
とにかく外国人のようだ。
「ん?コイツ誰だ?」
「え、えっと自分はゼノと言います!」
「私の弟子よ」
デリトが割って入るようにそう言うと、
アナライと呼ばれる男は大笑いした。
「ガハハハッ!デリトに"弟子"だって!?こりゃまた面白い組み合わせだなぁおい!」
「しょうがないでしょ、ちょっと気になったんだもの」
「またセトか?」
「ま、それもあるけどね」
ダメだ、
全く持って会話に入れない。
大体知らない人物の名前も出てるし…一体どういう関係なんだ?
「おい、ゼノ。ちょっとこのオッサンのとこに来い」
「俺はオッサンじゃねぇ!ったく…まぁいい、ちょっとこっちに来い」
おっかないなぁ、
絶対この人強いよ…
「ふむ、見た感じ普通のブレイバーのようだからサイズも普通の剣でいいか」
「いや、アナライ。ちょっと相談があってだな」
「なんだ?」
「実は…フラ…スが使…から」
何を話しているんだろうか、
よく聞きとれない。
「何ッ!?それは本当か!だとすれば…」
アナライは一度奥へと下がると、
一本の包みを持ってきた。
長さ的に剣か何かを包んでいるのだろう。
「コイツをお前に渡しておく、これで稽古をつけてやれ」
「ありがとう、世話になったわ」
デリトは包みを受け取ると、
そのまま店を出ていった。
「え!?ちょっ、俺の武器は?」
「コイツだ、受け取れ。」
アナライは一本の剣を投げてきた。
「これは…」
『ミスリルソード』 レア度:☆☆
攻撃力+15
効果なし
「まぁ、今の鉄の剣…よりはマシか」
「強い武器を持っていても攻撃力や技量が足りていなきゃ、装備出来ないだろ。そのくらいでちょうどいい」
といわれてもなぁ…
「アナライが言うなら間違いないぞゼノ。」
「デリトがそう言うなら…まぁ、いいか」
こうして俺は新しい武器を手に入れた。
「あ、そうそう。こいつを持っていけ、うまく使いこなせるかはお前次第だがな」
アナライは一枚の布を俺に向かって投げた。
「なんだ?この汚い布は」
「それ、大事にしておけ。いざとなったら恐らく必要になる」
デリトが言うなら間違いはないのだろう、
ここで嘘をつく理由もないだろうしな。
「オッサン!ありがとうな!」
「だからオッサンじゃねぇっ!!」
◆ ―草原フィールド― ◆
ゼノとデリトは草原のフィールドにレベリングに来ていた、
そこには見覚えのある姿も…
「ん?あの子は…」
奥のほうでモンスターに囲まれているパーティがある、
恐らくクエストを受注した際のパーティだろう。
根拠は僧侶姿の女の子がいるからだ。
「ありゃ、死ぬな」
「え?なんで?」
「戦い方が下手だ、というか第一にモンスターと戦っている奴らの表情とHPを見てみろ」
あ、本当だ。
確かに震えている、女の子は一生懸命戦っているのに…
「おい!シロ、お前の回復が弱いからこうなるんだよ!」
「そ、そんな…」
「どけっ!邪魔だ!」
シロと呼ばれるそのキャラは他のパーティメンバーに突き飛ばされた、
その後も罵倒などが飛び交っていた。
「アイツら…」
「まぁまて、手を出すな」
「でも…」
「もうちょっと待て」
みるみるうちにパーティ全体のHPが減っていっているのがわかる、
それはシロも同様だ。
「おい、早く助けないと…!」
するとデリトは「フッ」と微笑すると、
シロに向かって叫んだ。
「おい!そこの女、『リヒルト』くらい覚えているはずだ!ソイツを自分だけにかけろ!」
シロは一瞬戸惑ったようだが、
すぐに言われた通りに自分に呪文をかけた。
『リヒルト』リキャスト:1分
ヒール系のスキルを上げると序盤で習得できる回復魔法、
効果はヒールと同じ分の回復量の回復が使用者に毎ターン自動でかかるというものだ。
「あっ!テメェ、自分だけ助かろうとか…ふざけんじゃねぇっ!」
勿論、
パーティーメンバーも黙っていない。
「おいおい、戦い中に敵に背を向けちゃいかんだろ阿呆」
「何ィ!?」
シロに斬りかかろうとしてた男一人にデリトが警告をする、
が遅かったようだ。
「ぐわぁぁああっ!」
デリトの発言どうり、
後ろから敵に攻撃されて消滅した。
「こ、コイツ!」
ほかの仲間はすぐに敵へと向き直り、二の舞は踏むまいとしたようだったが…すでに手遅れだった。
『うわぁぁぁああああっ!!』
ほかの二人も敵にとどめを刺された、
まぁこれで倒せていたら苦労はしていないだろうしな。
「うぅ…もうだめ…」
シロと呼ばれていたその娘は敵の前に膝から崩れ落ちた、
目に希望の光は無い。
「グォォォオオオッ!!」
プレイヤーの背丈の二倍はあるであろう鬼のような見た目をしたモンスターは、
棍棒を振り上げ、落とした!
『グシャッ!!』
鈍い音が鳴る、
何かが崩れたような音だ。
「ふむ、コイツは本当に鈍足だな」
気がつけば、
鬼のような敵が持っていた棍棒は消滅エフェクトと共に木っ端みじんとなった。
「とどめだな」
デリトが一瞬消えたように俺には見えたが、
もう一度瞬きをした後には元の位置へと戻っていた。
「何が起こっているのか全然理解できないんだよなぁ…」
敵もいきなり消滅した、
デリトが何をしたのか俺には全然わからなかった。
「おい、女。大丈夫か?」
「え?あ、はい…」
デリトは座り込み唖然としているシロに手を向けた、
それ掴み立ち上がる。
「あなたたちは…?」
「俺はゼノだ、よろしく」
「その師よ、覚えておきなさい」
女の子はお礼を言うと、
スカートの土をはらって話を続けた。
「私の名前は"シロ"といいます」
「知ってる」
「えへへ…そうでしたか…。えっと、この度は助けていただき有難うございました」
シロはちょこんと頭を下げる。
「礼ならそこの馬鹿に言え、私は助ける気はほとんど無かったからな」
「いや、いいよいいよ」
シロという女の子はポーションを飲むと、
町へと向かって歩き出した。
「あ!そうだ、シロさん。もしよかったら俺たちのパーティーに来ないか?」
「なっ!私は面倒を見きれんぞ」
「俺が見る!な?だからどうだ?」
シロは一瞬困ったような顔をすると、
首を縦に振ってくれた。
「よし、決まりだ。」
こうしてパーティーメンバー兼回復役が1人増えた。




