06話 「近づく運命」
ゼノが修行を始めて1時間が経とうとしていた、
普通1時間もかかるか?と思うかもしれない。
だが、
思ったよりもこれは中々に難しい修行で少しでも気を抜けば残りHPが300を切る。
現時点での俺のステータスはLV8のHPが700ちょっとである、
武器の扱いにも慣れて新しい技も一応習得した。
「今47匹狩ったから、あと3体!」
あと三体のブルートを倒せばこの修行も終了だ、
とりあえずは休憩がてらログアウトしようと思う。
「3…2!よし最後だ!!」
俺は最後のブルートに剣を突き刺し、
修行を終了した。
「ハァハァ…おう、デリト!狩り終わったぞ!」
「そう、じゃあそろそろ次の段階ね」
「いや、一旦ログアウトするよ」
そういって俺はメニューパネルを表示する、
デリトは一瞬コチラを見た後「クスッ」っと笑った。
「え?」
俺は指の震えを抑えきれなかった、
一瞬にして俺の"修行達成"という達成感は絶望へと変わった。
「な、無い!ない、ない!どこにもない!!」
ログアウトボタンがないのだ、
メニューの操作をチュートリアルの女性から受けた際には確かにあった。
今見てみればどうだろうか、
キレイさっぱり無くなっている。
「残念ね、あなたはログアウト出来ないわ」
「んなっ!?なんでログアウトできなくなってるんだよ!」
わからない、
どうしてログアウトボタンが消えたのか。
「そ・れ・は、私が消したからよ」
「は?お前にできるわけないだろ、第一ゲームマスターじゃないんだから」
「それができるんだなぁ、別にゲームのシステムを呼び出す手段を一つ消すというのは悪の力ではない。だから私にもまだ残ってたのよ」
デリトが何を言っているのかわからない、
残っていた?このゲームの前作ではみんなゲームシステムを改ざん出来たって言うのか。
「と、とにかく!俺は現実に戻らなくちゃ!」
「アナタ、最後に食事をとったのはいつ?」
「え?いや、今日だけど…」
デリトは少しブツブツと独り言を話したのち、
俺にひとこと。
「あなたがログアウトできるのは食事と水分補給のために2日後よ」
「はぁっ!?ふざっけんなよ!!」
「じゃないと間に合わないでしょ」
間に合わないって、
俺のレベル上げか?
そんなの後からでも…
「"後からでもできる"って?間に合わないから今こうしてるんじゃない」
「それは…」
「この世にゲーム廃人が居るように、そのくらいはしないと本気で強くはなれない。アナタも強い意志を持ってギルマスに挑むんじゃなかったの?」
確かにそうだ、
俺はカイザのところのギルマスを倒すと決めた。
その意志は曲げたくない!
「わかった、ただしちゃんと2日後になったら返してくれよ」
「了解。」
デリトはそのまま出口へと向かい始めた、
ふと足を止めてこちらを向く。
「あ、そうそう。あなたに一つ何か"格言"のようなものを師匠として与えたいわね…」
「はぁ?」
デリトは数秒の間無言になると、
「ハッ」とした顔で声に出す。
「倒された相手の言葉を使うのはなんとなく尺だけど…」
「…?」
「『"願ったなら叶えろ"』…ってとこかしらね」
なんじゃそりゃ、どこの名言だよ。
それに倒されたって、デリトくらいの強さの奴が一体誰に…
「おーい、置いていくぞ」
「あ、おい!待てって!」
デリトが先導し、
俺が後を追う。
"悪くない"
◆ ―ゲテルグルブ― ◆
ゲテルグルブの町はそれなりに賑やかである、
市場もあり人ゴミもある。
確かに賑やかではあるのだが…
「お母さんー!」
少女が市場を走る、
恐らく母親とはぐれてしまったのだろう。
「いてっ!」
少女は走るのに夢中で、
前の男性とぶつかってしまった。
「あぁん?」
「おい、ゴルどうした?」
「コイツ見ろよ、NPCの少女だぜぇ…」
少女は急いで立ち上がり走り去ろうとした、
本能が危険だと察したのだろうか。
「おっと待ちな!謝罪もなしに逃がすと思ってんのかよ」
すぐに腕を掴まれ、
引きずり戻される。
「いやあっ!放して!」
女の子を助ける人は誰も居ない、
男たちはそのまま路地裏へと向かう。
「このリンゴ美味しいですねぇ…ん?」
ただ一人を除いては。
「奥さん、あれは?」
「あぁ、あれかい。あれは「レッド・スコーピオン」っていうギルドでねぇ、この町を取り締まっているのさ」
「奥さん、お題は置いていく。釣りは要らない」
男は目の色を変えて路地裏へと向かう、
店員の制止は無視だ。
「へへ…お嬢ちゃん、冒険者がどれだけ強いかは知っているよなぁ?」
「いやっ来ないで!」
男は少女の服をむしり取った、
NPC故に服などの装備品の耐久力は皆無だ。
「キャァアアッ!!」
「騒いでも誰も助けねぇよ!」
『どうかな?』
「何ッ!?」
男は咄嗟に後ろを振り向く、
が声の主はいない。
「どうぞ、お嬢さん」
少女のほうを見ると、
いつの間にか男が少女に自らのコートを着せていた。
「てめぇ!死ねや!!」
「フッ」
男は微笑すると身軽に壁を走り、
ゴルと呼ばれる男の後ろへと舞い降りた。
「1(ワン)ステップ」
ゴルの足を蹴り、
体勢を崩させた。
「2(トゥ)ステップ」
すかさず、
体勢を崩したゴルを高く蹴り上げる。
「これで…」
勢いよく壁を駆けのぼると、
ゴルの空中へと浮いている身体へとかかとを落とす!
「3(スリー)ステップ!!」
ゴルの身体はもう一人の仲間のほうへと勢いよく落ちていき、
衝突するとともに消滅した。
「HPが少ないなぁ」
男は少女にリンゴを渡すと、
急いでその場を離れた。
「カッコいい…」
少女は男に見とれていた…
◆ ―ラクスラズルシティ・商店街― ◆
「へぇ、商店街なんてあるのな」
「まぁね、ラクスラズルはいろんな意味で特別だからね」
どうしてこのゲームはラクスラズルが特別なのかはわからない、
だがデリトにも思い入れがあるのだろう。
「そういえばお前は帰らなくていいのか?」
「私は帰る必要がないからな、結構退屈だし」
一体、どんなところにいたのだろう…
「さて、着いたぞ!」
「ここは…!!?」
俺たちの前には一つの路地があった、
そしてその先には…




