05話 「クエストの受注」
俺はデリトにとある建物の中へと連れてこられた、
そこらの建物よりも数周りは大きい建物である。
「ここって…」
「『クエストカウンター』とでも言っておきましょうか、ここでクエストを受注できるのよ」
なるほどな、
と思いながらあたりをうろついてみる。
「お?」
ふと、
いくつか先のクエストカウンターに見覚えのある姿を見つける。
「あの娘は…」
シュミレーションルームの廊下でぶつかった僧侶姿のアバターを使っている少女だ、まわりには4人の男キャラが居る。
「気になるな…」
「そうですね…って、何でお前まで見てるんだよ!」
唐突に耳元で聞こえたデリトの声に驚いて反応する、
がしかしそのせいで彼女を見失ってしまった。
「あの娘、笑っていなかった」
「そうですか?別にクエスト前に笑っている必要なんてないと思うけどなぁ」
「そうじゃない、周りの男どもと比べて…だ」
確かに女キャラ1人に対して、
男キャラ3人というのもどうかと思う。
「まぁ、リアルでは女かどうかもわからないんだけどな」
「いや?彼女は女だぞ」
「どうしてわかる?」
するとデリトはメニューを表示させて俺に見せる、
メニュー画面は俺のとは少し見た目が違うようだが。
どうやらそこには先ほどの娘のデータと思しき画面が表示されていた。
「これが…てかどうしてこんなものが」
「最初に様々なものを身体に装着したはずだ、あれでお前たちプレイヤーのデータは大体わかる」
「てか、どうしてお前がそんなもの持ってるんだよ」
デリトは「さぁ?」という素振りだけを見せてカウンターへと戻っていった。
「なんなんだよ全く…」
◆ ―ルーラー・ズ・シティ・酒場― ◆
酒場というのは想像通りにガラの悪い人々が意外と集まるもので、
ルーラーにおいては更に治安が悪い。
「おいっ!酒だ、酒を持ってこい!!」
「は、はい!ただいま!」
カウンターに大きく股を開きながら座る男の怒鳴るような注文に、
店員はビクビクしている。
「たっくよぉ…」
完全に酔っている男は、
ブツブツと文句を言いながら自分の武器を磨いていた。
『キィ…』
ドアを開ける音とともに一人の男が入ってくる、
男はそのまま真っすぐに席へと向かった。
酔っ払い男の隣の席へ。
「んだぁ?見ねぇ顔だなぁ?ん~?」
早速、
隣に座った男へと絡み始める酔っ払い男。
しかし、男は微動だにしない。
「シカトこいてんじゃねぇぞゴルァ?」
「臭いな…」
やっと男が口を開く、
がそれは挑発の言葉を出すためだった。
「んだとぉ!?もっぺんいってみろぉ!」
すると静かな男に対して酔っ払いは磨いていた斧を振りかざす、
男は冷静にそれを避けると、酔っ払いのイスを蹴り飛ばして足を酔っ払いの股の下へと入れる。
「大股開いて酒を飲まれると、テメェの小便臭くてたまらねぇって言ったんだよッ!!」
男は勢いよく酔っ払いの男の股間へと足をけり上げる、
無論酔っ払いのほうは大ダメージを受けて口を開いている。
「床にでも寝そべっていろ」
その言葉に操られているかの如く、
酔っ払いは地面へと倒れた。
「あ、あの!」
カウンターには先ほど奥へと下がっていった店員が戻ってきていた、
客の視線もこちらへと集まっている。
「あ、ありがとうございます!」
「なに、この店の店長から連絡を貰ってね」
店員が店長のほうを見ると、
申し訳なさそうに店長は笑っていた。
「あ、そうそう。これをテイクアウトしたいんだが…」
男がメニューを指さして見せてくる、
勿論頼まれたものは持ち帰り用に包んで渡した。
「ありがとう、また何かあったらここに連絡してくれ」
「は、はぁ…」
男から名刺のようなものを渡され、
店員は少し反応に困った。
が、名刺にしては黒かった。
「Joker…?」
その名刺には"Joker"という文字だけが書かれていた。
(あの人の名前かな…?)
◆ ―ラクスラズル・東の平原― ◆
街はずれの広い草原でゼノは剣を振るっていた。
「この世界に草原なんてないって言ってたのに、あるじゃないか」
「ここは草原じゃない、待ちまずれの未開拓の土地だよ」
(別に草原でもいいと思うのだが…)
デリトの言う修行というのは、
ただ剣を振るうだけなのだろうか。
そう思い始めていた矢先、次の課題が出される。
「よし、じゃあ次よ。」
「やっとか…」
「この土地には三種類のモンスターが居るわよね?」
確かに三種類いる、
「ブルート」というイノシシのようなモンスター、「バグナイト」という空中攻撃系の虫系モンスターと「グラード」というサイのようなモンスターだ。
「その"ブルート"を50体狩りなさい」
「50体も!?」
「それと、ブルート以外のモンスターへの攻撃は禁止よ。もし相手から攻撃してきたら避けて、ブルートだけを狙いなさい」
無茶苦茶だ、
どうしてほかのモンスターには攻撃してはいけないのか…
「ほら、さっさと済ませる」
「はいはい…」
俺は言われた通りブルートへと斬りかかった、
ブルートは突進以外の攻撃はせず、比較的倒しやすいモンスターだ。
「よし!まずは一体目!」
だがそう思い通りにいきもしない、
ゼノは後ろから走ってきていたもう一体のブルートに弾き飛ばされる。
「うあっ!!」
そのまま草の上へと背中から着地した、
間髪入れずにブルートが次の攻撃へと入る。
「くそ…だが次は油断しない!」
ブルートを迎え撃つようにゼノは剣を構える、
それと同時に腕に痛みが走る!
「なにッ!?」
腕は麻痺して剣を落としてしまった、
ゼノの腕を刺したのはバグナイトだった。
「畜生、この虫ヤロ…」
剣を左手で代わりに拾いなおして、
バグナイトに斬りかかろうとしたその時、
デリトの言葉が脳裏をよぎった。
『ブルート以外のモンスターへの攻撃は禁止よ』
ゼノは「チッ」と舌打ちをすると、
バグナイトから攻撃目標を変え、ブルートへと剣を向けなおした。
「いいぜ、やってやんよ…!」
ここからあと49体を倒さなければならない。
ここからゼノの猛烈な修行が始まるッ!
「さて、私は昼寝でもするかな」
その頃、デリトは眠りにつこうとしていた…




