03話 「デリトと決闘…?」
唐突に町の宿屋まで転送された、
恐らくまだラクスラズルシティ内だろう。
俺は宿屋の個室にあるベッドへと腰をかけて先ほど会ったばかりの少女を警戒した。
「一体誰なんだ君は」
「人に尋ねる前に自分から話すのが常識だとは思わない?」
少し鼻につく物言いだな…
「俺の名前はゼノ、なりたくてなった名前じゃないんだがな…」
「なりたくてなったわけじゃない…か、私は『デリト』よ。脳裏に刻みなさい」
脳裏に刻めって、
何様だよ。
「それで、どうして俺をここに連れてきた」
「ん?それはね、あなたに何か特別な力があるかもしれないからよ」
「俺に?」
特別な力も何も、
始めてから1時間くらいしか経っていないぞ、
それなのに特別な力なんてあるわけないだろ…
「うーん…やっぱり見た感じ無いわね」
「わかったなら解放してくださいよ」
俺はとにかくこのゲームをまともにプレイしたくて仕方なかった。
考えても見てくれ、
ゲームをプレイしてまだ一度も自由にプレイできていない。
こんなのってありか?
「でも、アンタどうしてあんなところで戦っていたの?まだビギナーでしょ?」
「それは…」
俺は一瞬言っていいものかと躊躇ったが、
助けてくれた恩もあるし洗いざらい打ち明けた。
「ふ~ん、なるほどね」
「そういうことだから俺は行かなきゃならない」
腰を上げ、
ドアに向かおうとすると後ろへと押し倒される。
「え?」
するとデリトは顔を俺の顔へと近づけ、
一指し指を俺の唇へと当てた。
ちょっと息を吐くとお互いかかりそうな距離に俺の心臓は高鳴っている、
先ほどからこのデリトという少女は妙に大人びている…
「さっきの戦い、あのハイルとかいうやつに勝てなかったのにギルマスに勝てると思っているの?」
「や、やって見せるさッ!」
するとデリトは俺から離れ、
剣を装備した。
「アナタ確か片手剣使いだったわよね、ということはブレイバーかしら」
「そうだけど…なんだよ」
「表に出なさい」
は?
表に出ろって…まさか
◆ ―ラクスラズル・宿屋前― ◆
「やっぱりこういうことかよ…」
案の定、
俺は剣を交えることとなった。
宿屋の前には人だかりが出来て、
最悪の事態となっている。
「こんなところで負けたら笑いものだぜ…」
「その発言、勝つ自信があるって受け取ってもいいのかな?」
「ご自由にどうぞ…!」
「強きね」
俺は先ほどのデスマッチで覚えたばかりだが、
武器をちゃんと装備出来た。
「それじゃあ始めるわよ」
「いつでもいいぜ…ッ!」
こうして俺とデリトの決闘(?)は始まった。
「あ、ストップ」
「は?なんだよ」
デリトは一瞬ニヤつくと、
いきなり条件を提案してきた。
「どうせなら賭けようかなってね」
「何を賭けるんだ」
目当てはなんだ、
武器か?金か?どちらにせよ俺にはまだ何もないぞ。
「そうね、じゃあ"負けたほうが勝った方の条件1つを許すまでのむ"ってのはどう?」
「はぁ?リスクでかいじゃねぇか!」
「まぁ最後まで聞きなって、その条件を出す代わりに私は"武器"では攻撃しないってことでどう?」
確かに、
今の俺ならばできる限りハンデは欲しい。
これは飲むしかないだろう…
「わかった、良いだろう」
「決まりね」
そう言うとデリトは後ろへと下がり、
指を内側へと数回まげて挑発してきた。
「舐めやがってッ!」
俺は精一杯の力を足に入れ、
剣先をデリトへと向けたまま突進する。
「運で勝てる?アナタ、ゲームを舐め過ぎよ」
「何ッ!?」
気づくと目の前からデリトは消えており、
俺の背後から声が聞こえた。
「ウグッ!」
そのまま俺は足をかけられ、
地面へと顔から突っ込む。
(まぁ、勝ったら奴隷にする程度の価値かしらね)
「まだだ…」
HPゲージはまだほんの少ししか減っていない、
これなら希望は捨てられない。
「はぁ…やれやれね」
「うおぉぉおおっ!!」
俺は下から全ての勢いを剣と全身に込めてデリトへと斬りかかる!
瞬間、
何かが吹き飛んだ気がした。
「何ッ!?」
「え?」
俺の放った一撃は既にデリトの目の前へと切り替わっていた、
いや正確には"いつの間にか斬り進んでいた"というべきだろうか。
「くッ!!」
瞬時にデリトの剣によって防がれたが、
この一撃はただの一撃じゃないと確信した。
「アナタ…今のは…」
「知るか…「会心の一撃」か何かじゃないのか?」
いや、
例えクリティカルだったとしてもあんな攻撃にはならないわ。
一瞬、ほんの一瞬だけどゼノの足元が光るのが見えた…
ということは多分…
「気が変わったわ…」
「何?」
デリトは剣を構えなおすと、
こちらへと鋭い笑みで言葉を放つ。
「アナタ、私に負けたら「弟子」になりなさい」
「あぁ、なんでもいいよ。だから、さっさと終わらせる」
ゼノは先ほどのように踏み込む、
しかしさっきのような奇跡は起こらず…
「そうね、"さっさと"ね」
デリトがまたも瞬間移動したかのように後ろへと回りこみ、
剣で軽く斬りつけた。
「グハッ!」
ゼノのHPゲージを見るとバーの色は赤へと変わり、その場へと倒れこんだ。
「とどめは刺さないわよ、リンクに手間をかけるからね」
「くそ…なんて強さだ」
俺はいきなり空中に身体が浮くのを感じた、
見るとデリトに担がれていた。
「それじゃあ、約束通り。稽古をつけるわよ」
「馬鹿ッ!みんなの前でこんな恥ずかしい恰好させr…」
最後まで言葉を言いきる前にテレポートさせられた。
こうして俺はデリトという少女の弟子となるのだった…




