02話 「路地裏のデスマッチ」
俺たちは目的の場所へと向かって町の中を歩いていた。
「そういえば、えっと…カイザさん?」
「カイザでいいぞ」
「あ、じゃあカイザ。どうして俺を助けたんだ?」
聞きたいことは色々とあったが、
まずはこの質問からである。
「それは単純な話、強かったからだよ」
「俺が?」
「違う、お前を助けたプレイヤーがだよ。あれはレベリングやその他プレイ方法を熟知している目だった、恐らく前作からのプレイヤーだろう」
そういえば気を失う前にそんなのが見えたっけ、
確かあれは女の子だったはず…
「回復してくれたのもその方だ、素晴らしい弓の腕前だった」
「へぇ…じゃあ、会ったらお礼しなきゃなぁ」
そんなことを話ながら歩いていると、
すぐに目的の場所へと到着した。
「ここだ。」
そこは町の中にある何の変哲もない路地裏だった、
奥は少し広くなっているようだ。
「ここに俺の仲間たちが居る、そいつらを倒せれば俺はお前と手を組んでやる。」
「わかった」
俺は恐怖心をかみ砕いて路地裏へと足を踏み入れた。
「んお?カイザじゃねぇか、ヒャハハ!お前負けたんだってなぁ?」
「あぁ、ちょっとプレイヤー当たりが悪くてな。」
早速、一番近くにいたガラの悪そうなプレイヤーが話しかけてきた。
「おい、なんだソイツ?」
「あぁ…こいつは…」
「ゼノだ、よろしく」
俺はこいつらを倒さなくてはならない、
別にゲームに思い入れがあるわけじゃない。
ただ、
ゲーマーとして許せないだけだ。
「ケッ!気に入らねぇなぁ…よし、リングに上がれ」
リング?
「あぁ、このあたりのルールでな。リング上で武器有りで戦うんだよ、相手が死ぬまでな」
「な、なるほど…」
まだ武器を使ったことすらないんだがなぁ、
何とかなるか?
「まぁ、アイツのレベルも俺と同じ20くらいだ。そこまでの強敵ではないだろう、お前は別だがな」
「どうかな」
一瞬、
カイザがムっとした顔で睨みつけたがそれはすぐに解けて、ニヤリと怪しい顔へと変わった。
「いくぞ」
俺はリングへと上がった。
◆ ―世界樹・根元― ◆
そこにはいくつかの人数による集まりができていた。
「では、これよりゲームを見回ることについての会議を始める」
世界樹の根元といっても通常のプレイヤーが来れる場所ではなく、
世界樹の精霊によって設けられた特別なルームである。
「何か意見や質問、発見などがあった人は順番に挙手を」
仕切っているのはガタイのよい騎士風の男であり、それを円状に囲むようにして会議室が成り立っていた。
「はーい!はい!」
一人の少女が手を上げる。
「ギルマスは本日も欠席ッスか~?」
「あのなぁ…アイツはアイツで忙しいんだろ。あ~あ、今日こそ真面目な雰囲気でやろうと思ったんだがなぁ~」
男が気の抜けたように座り込む、
少女はやってやったりという顔で笑っていた。
『というか、なぜ俺も出席しなきゃいけないんだ?』
椅子に立てかけるようにしておいてある刀から声が発せられる、
恐らく相当な珍品だろう。
「そりゃあ、お前がギルマスの代わりだからなぁ」
『フンッ!やれやれ…』
刀は表情は見えないが、
世界樹のてっぺんを見つめているようだった。
世界樹の先には…
「おー、やっぱり絶景だなぁ~!!」
侍風の男が世界樹のてっぺんにある木の枝の一本に座り込んでいた、
ラクスラズルシティを見渡して満面の笑みを浮かべている。
「おーい、デリト~!」
その男は『デリト』という名前を呼んで一人の少女を呼んだ、
少女はまるで魔法のようにどこからともなく現れた。
「何の用なのよ、忙しいんだけど?」
「まぁ、そう言うなって。ホレ、あそこ見てみろ」
「なによ…」
少女はしぶしぶ男に言われるがままその方向を見てみると、
そこには戦いを繰り広げている男たちが居た。
「あれは…デスマッチでもやっているのかしら」
「いいや、注目するのはそこじゃあない。次の選手だ」
「次の選手…?」
少女はもう一度見直すと、
既に次の試合が始まっていた。
そこには男二人が向かい合って立っていた。
「片方はアサシンのようね、そんでもってもう片方は…ん?初心者装備ね、アンタみたいに自信でもあるのかしら」
「いいや、あれは本物の初心者だ。恐らく、レベルも1前半あたりだろう」
「どうしてそんなことがわかるのよ」
「目つき、武器を構える姿勢、武器の持ち方。どれを見ても武器を抜いたことが無いって感じだ」
少女はなるほど、
という顔をしてその男を見つめた。
「そうだ!デリト、お前言ってこいよ」
「はぁ!?なんで私が行かなきゃいけないのよ!!」
少女は男の発言に激怒する、
が男はそれを笑って受け流した。
「いいからいいから」
デリトと呼ばれる少女は「もう…」と言うと、
面倒くさげにその場を去った。
「さぁて、どうなるかな」
男は今日も世界を見つめている。
◆ ―ラクスラズルシティ・路地裏のリング― ◆
「さぁ!次の試合は~なんッと!完全初心者とハイルの戦いですッ!!アサシンとしてこのリングマッチに出場してきたハイル、それを初心者が倒せるのだろうか!?」
司会の男が実況をしていると、
周りがざわめく。
周囲からは「お前どっちに賭ける?」「俺はハイルだ」「当たり前だろ(笑)」などの声が聞こえる、完全初心者であるゼノに勝ち目がないことは明確だからだ。
「それでは双方の準備はよろしいでしょうか?レッツ・バトルゥッ!!」
ゴングの音とともに戦いの火ぶたが切って落とされた、
ゼノはハイルを睨みつけているがハイルはそれをあざ笑うかのようによそ見をしている。
「うおぉぉおおおっ!!」
ゼノが先手を打つ、
背中の剣を抜いてハイルへととびかかった。
「うわあっ!助けて~!……なんてな」
それと同時にハイルは何かアイテムを投げる、
それに気がついたゼノはすぐに攻撃を中断してその場に着地する。
「ヒャヒャッ…もうおせぇよ!!」
ハイルはゼノの視界から消えると、
先ほどのアイテムから霧のようなものが立ち込めた。
「なんだ…これ?」
「喰らいやがれぇッ!!『ダガー・レイン』…!!」
ハイルの声とともにゼノの上から短剣の雨が降り注ぐ、
ゼノはかわし切れずにいくつか命中してしまう。
「ぐぅっ!だがそこまでのダメージじゃ…」
「『アッド・ミスト』」
「何ッ!?ぐああああああっ!?」
ゼノのHPゲージのバーが一瞬にして緑から黄色へと変わる、
既にHPの残りが半分を切ったということだ。
「ヘヘッ!こんなのに引っかかるたぁ、やっぱり雑魚だぜぇ!!アッドミストはなぁ、ダメージとかを増幅してくれるんだよッ!!」
「畜生…ッ!」
全然刃が立たねぇ、
攻撃がまともに当たらない。
やっぱり俺の思い上がりで、無謀だったのだろうか…
「終わったな…」
誰もがそう呟いた、
そして力なくゼノはその場へと倒れた。
「ハハッ!見ろよあいつ、HPの急な消費でその場に倒れこんじまったぜ?」
「情けねぇなあ!!」
周囲は笑いに包まれた、
ゼノはリングの上で涙を流した。
惨めさからか、はたまた悔しさからか。
もしくはその両方だろうか、
そんな中、一人のキャラクターが観衆を割ってリングへと上がった。
「はーい、選手こうたーい。アタシがでまーす」
「え?は、はぁ?」
そこには赤い髪の少女が立っていた、
武器も何も持たずに。
「何言ってんだお嬢ちゃん、ここはお前のようなガキが来る場所じゃねぇんだよ」
「じゃあ、こうしようか?もし私に勝てたら、私を犯してもいいわよ?」
あたりが一層ざわめきだす、
男は一瞬呆気にとられるとすぐにニヤついて了承した。
「いいねぇ…気の強い娘を犯すのも悪くねぇ…ッ!!」
「ま、勝てたらだけどね」
「ヒヒッ、ほざけ」
少女と男は向かい合うと、
すぐに戦いは始まった。
ゼノはカイザに治療をしてもらっている。
「ヒヒッ!今夜の相手はお前で決まりダァッ!!」
先ほどのように飛び上がる、
そしてナイフを構える。
「喰らえぇ!!『ダガー・レイ…」
男がスキル名を言おうとすると、
途中で声が途切れた。
気がつくと少女はいつの間にかリングの端へと移動しており、足を組んで髪をいじっていた。
「なっ…!?」
「チェック・メイトよ」
瞬間、
男の顔がボコボコと一気にへこんでいく。
身体もそのダメージ速度によってか、
空中に浮いたままダメージを受けている。
まるで見えない何かに攻撃をされているかの如く。
「ゴボェ…」
ハイルは血のエフェクトと共にその場へと落ちて、
死亡エフェクト、つまり消滅した。
「こ、これは一体…」
その場が静まり返る、
そしてすぐに沸き上がった。
「スゲーッ!!スゲーよ君ィッ!!」
「最高に痺れるプレイだったぜぇっ!!」
俺は何が起きたのか全く理解が出来ずにいた、
俺だけかと思いカイザを見てみたが同じように驚いていた。
「なぁカイザ、あのハイルとかいう奴…消滅したけど大丈夫なのか?」
「…え?あぁ、何かしらのペナルティはあるだろうが、蘇生は自動的にされるよ。ここの近くなら恐らく世界樹だろうな」
カイザの話を聞き「なるほど」と思っていると、
リングから降りてきた少女がこちらへと向かって来る。
「お、おいゼノ。お前さん、あの娘に何かしたんじゃないのか…?」
「は、ハァ!?俺はゲーム開始直後にお前に殺されかけたじゃねぇか!」
「そ、そうか!じゃ、じゃあ俺ぇ!?」
少女が目の前に立って、
指を俺の胸へと突きつける。
「ねぇ?ちょっとお話ししましょうか?」
見た目は笑顔だが、
内面は恐ろしいということを本能が悟っていた。
「とりあえず、ゆっくりできる場所で…ね?」
胸が押し付けられる、
色っぽい雰囲気からは"少女"というよりも"お姉さん"といった感じだった。
身長も低くはないし高くもない、
本当に大きさは同級生の女子といったところか…
「じゃあそういうことで…」
「へ?」
色気にとられていると、
少女は指パッチンをしてその場を俺ごと去った。
俺は連れ去られた。




