01話 「Read New World」
『Read New World』
俺は今日、新しいゲームを購入した。
これがまた期待に胸が膨らむゲームなんだよ、
なんでも制作会社が存在しないゲームなんだとか。
あるとき、
ネットにふと配信されたゲームらしくて、これの前作もあるんだとか?
その前作も製作者不明ときた。
「これはもうやってみるしかないなぁっ!」
俺は早速購入したヘッドセットのような器具などを装着した。
「これでいいのか…?」
すると一瞬、
意識がフツと消えたかと思えば眩しい光が差し込んできた。
「ここは…?」
どうやらどこかの部屋のようだ、
妙に近未来的でデジタルな部屋である。
「ようこそお越し下さいました、初めての方ですね」
「えっ!?あ、はい!」
いきなり後ろから話しかけられて反り返りそうになる。
「そんな緊張しなくていいんですよ。では早速ですが手続きを始めさせていただきますね」
すごい…
こちらの行動も踏まえて会話を展開している。
まるで本当に生きているか、プレイヤーキャラのようだ。
(これが今の人工知能ってやつなのか…?)
「ログインID:20160421 キャラ識別番号:8946番」
(へぇー、そういうのがあるのか…)
「ではキャラ名を入力してください」
「え?」
入力って…
手続き書も何もないんだが?
「メニューは頭で「出ろ」と思うだけで出現しますよ」
「え?あ、あぁ!そうなんですか!」
俺は言われた通りに想像すると、
案の定出現した。
「はえ~すっごいなぁ」
「ではそこに名前の入力を、本名などはお控えください」
確かにオンラインゲームで本名はまずいよな…
なら!
「えーと、『ゼ』…『ノ』、次は『ギ』…あっ!!」
押し間違えて「決定ボタン」を押してしまった。
「はい。『ゼノ』様ですね、了解しました」
(高性能なゲームなのにキャンセル機能はないというのか…!?)
そのまま目の前の女性(?)キャラは手続きを進めていき、最後の質問となった。
「職業をお選びください」
「クラス…か、何にしようか…」
色々あるなぁ…
数十種類は優に超えるクラスの種類だ、
このゲームどうやってデータ容量を確保しているのだろう?
「おっ!これでいいや」
俺は結構スタイリッシュそうな職業があったのでそれを選択した。
「サムライかブレイバーをお選びください。」
「じゃあカッコ良さげなブレイバーで」
「かしこまりました。それではお楽しみください」
やっとのことで手続きを終えると、
そこにはすごく美しい風景が広がっていた。
「うぉぉぉおおおおっ!?スゲェエエ…」
どうやらラクスラズル・シティ?とかいう場所のようだ。
「ん?でも皆なんとなく俺のほうを見ているなぁ?」
他のプレイヤーが俺のほうを見てヒソヒソと会話をしている、
どういうことだろうか?
するとその中の一人が叫ぶ。
「早くそこから離れろッ!!」
「え?」
俺の足元に影ができる、
ドンドン影は大きくなっていき人の形へと変わる。
「は?」
俺はハッとして後ろを振り向くと、
そこにはハンマーを持った大男が立っていた。
「残念ッ!ゲームオーバーだァ!!」
男はそう叫ぶと俺に向かってハンマーを振り下ろしてきた。
「はッ!?えぇぇええええっ!!?」
ガクンッ!と脳が揺れる、
厳密には"そんな感覚がする"だけだが。
そのまま俺は地面へと倒れた。
(え?いきなりなんだこれは…?)
そう思って意識が薄れゆく中、
一つの影が飛び出した。
『あちゃ~…こりゃあマズいっすねぇ…』
(誰だ一体?この声は?)
そのまま気を失った。
気がつくと俺はベッドへと横になっていた、
知らない部屋である。
部屋の中を見渡してみると、
一人の男が椅子に座っていた。
「ん?おぉ、起きたようだな」
(ゲッ!?さっき俺に攻撃した男!!)
男は椅子から立ち上がりこちらへ来ると、
そのままそこで頭を下げてきた。
「え?ええ!?」
「いや、この度は誠に申し訳ない事をした。」
え?
いや、てか始まったばかりで攻撃されたから何もわからないんだけど…
「おっと、自己紹介が遅れたな。俺の名前はカイザだ、よろしく頼む。」
「は、はぁ…こちらこそ」
…って、
俺さっきこの人に殺されたんだよな?
いいのだろうかこれで。
「説明すると長くなるのだが…」
「え?」
「俺がなぜ君を殺そうとしたのか、だ。安心しろ、まだ君は死んじゃいない。回復アイテムで死ぬ前に回復したからな。」
よかった、
俺はまだゲーム開始時即死という黒歴史を作らなくて済んだのか…
「ギルドってわかるかな?まぁ、チームと思ってくれればいい」
ギルドは俺でもわかる、
一応ゲーマーだからな。
「勿論、俺もギルドに入っている。しかし…」
「しかし?」
カイザは椅子へと腰をかけなおして一息つくと、本題へと入り始めた。
「数か月前、俺たちのギルドである『レッド・スコーピオン』のギルマスが交代されたんだ。」
「それが?」
「その後のギルマスが酷くてな、力で全てを制す。簡単に言えば俺たちに初心者プレイヤーを襲うように言い放ったんだ。」
現に俺を殺そうとしていたじゃないか。
「俺はそこまでレベルが高いわけじゃない、まだLV.27だ」
「うわぁ…力に屈してるじゃないか」
「面目ない…」
カイザは恥ずかしそうに顔を赤らめながら頭の後ろをかくと、
すぐに表情を戻した。
「まぁ、そういうことでお前を襲って簡単にアイテムを手に入れようとしたってわけだ」
「なるほど」
するとカイザは「用も済んだしサヨナラだ」と言って椅子から立ち上がり、出口へと向かった。
「ちょっと待ってくれ」
「ん?」
なぜ今引き留めてしまったのだろうか。
「カイザさん、あなたはそのギルマスに苦しんでいるんですよね?」
「ま、まぁそうだが…」
「だったら、俺が手を貸しましょうか?」
あーあ、言っちゃったよ。
力の差がありすぎだろ、
勝てるわけがない。
「ハッハッハ!気持ちはうれしいが少年、腐っても奴はギルマスだ。少なくとも俺に殺されかけたお前さんじゃ倒せやしないよ」
「いいやっ!倒してやるよ」
「なんだと?」
俺は、
自分でもわからないくらいにイラついていた。
ゲームのパッケージに泥を塗るような真似をされていること、
初心者に対してPKを仕掛けていることはゲームの評判を落とすこと間違いなし。
「そのクズを倒してやるって言ったんだよ」
「ふざけるな!お前で倒せていれば俺たちは苦労していない!」
俺はベッドから降りて、
すぐ横に置いてあった初心者用の片手剣を持って部屋を出る。
「おいっ!聞いているのか!?お前じゃ無理だと言ったんだ!」
「だから無理なんだよ」
「何?」
踵を返して後ろにいるカイザへと向き直り言葉を放つ、
これは綺麗ごとでも何でもない。
「無理だって言って行動しなかったんじゃないのか?それじゃあ無理に決まっているだろ」
「なんだと…」
「行動もしないで偉そうにほざくだけが強さなら、俺はそれを強さとは認めない!」
そのまま俺はもう一度廊下を歩きだす。
「…わかった」
おや?
「俺が案内しよう。ただし、生命の保証はしない!」
「わかった。」
こうして俺のゲームは始まった。




