番外 「その後 ~全編~」
インターホンが鳴る、
どうやら"例の物"が届いたようだ。
「おぉ…これが」
荷物を受け取った俺はダンボールの時点で十分興奮していた。
興奮度で言うと、中学の時に親にナイショで購入したR18指定ゲームが届いた時並みかそれ以上だ。
「おぉ!すげぇ!」
その中に入っていたのは今はやりのVR…とかいうやつだっけか?
そんな感じのヘッドセットとグローブ、
それから専用の靴だった。
「はぇ~こんなにしっかりしているんだなぁ…」
俺は全て装着すると、
PCに有線接続して早速ゲームを起動した。
◆ ―ラクスラズル・シティ― ◆
目の前が真っ暗になったと思えばすぐに光が入ってきた、
あたりが明るい。
「ここは…」
そこは近未来化した町のような見た目をしていた。
透明パイプのような通路、機械的な見た目をした自動ドア、浮いている乗り物。
「なんか…アップデートして復活したのはいいけど、ずいぶん変わったなぁ。前は本当に西洋RPGって感じだったのに…」
俺はハッとしてメニューを表示させる、どうやら基本的な操作方法は変わっていないようだ。
「追加されたコマンドもあるようだし、後で見ておくか。今はそんなことより…」
ステータス画面を開く、
ステータス表示も少々変わっていた。
「なんか…色々と科学的な見た目だなぁ、見方は同じだから良かったけど」
どうやらステータスの見方はほとんど同じようだ、
しかも自分の装備も変わっていなかった。
「えーっと、あったあった。」
セトはアイテムパックから『カタナ』を取り出す、
これはセトが初心者の頃から今までずっと装備していた初期装備である。
無論、攻撃力や耐久度は皆無に等しいがアイテムグラフィックのシンプルさがセトは好きなのだ。
「まぁ、腰にさげるだけで戦いには使わないんだけどな(笑)」
服装も変わってないのは嬉しかったのだが…
「なんか、周りのプレイヤーの視線が痛いな…」
町、アイテム、このゲーム自体がSF映画のような超未来装備をしているのに対して俺の服装はどうだろうか?
和服に刀、それと赤のハチマキ。
これはもう場違いとしか言いようがない。
「装備も変えておこうかな…」
色々と試行錯誤しているときだった、
メール欄に新しい通知が出た。
「ん?メールか…へぇ、俺の頃はチャットかメッセージだったのになぁ」
とりあえず開いてみる。
どうやらリンクからのようだ、内容は呼び出しである。
「ということは、『世界樹』か!」
俺は走り出した、新たなこのゲームの世界を!
◆ ―世界樹・根元― ◆
「これで満足かしら?」
「何がでしょうか?」
そこには腕を組みながら「チッ」と舌打ちをする女性とニコニコと爽やかに微笑んでいる女性の二人が居た。
「アンタのことよ!あがめられる存在になって満足かってきいてるの!」
「あがめられるだなんて、私はそうは思っていませんよ」
「あぁ!そうですか!」
二人ともこの世界には無いようなキャラメイクをしている、
だけどその姿には見覚えがあった。
「ひえ~…世界樹も立派になったもんだなぁ~」
女性二人組の立っている場所に生えている世界樹をみて驚く。
前のように地面にただ生えているのではなく、根元の周りが鉄のようなもので囲まれており科学的管理が施されていそうだ。
「ようこそお越しくださいましたセト様。」
「おう、悪いな遅くなって。配達が中々こなくてさぁ~」
「全く持って変わらないのね…」
「お!お前は、デリト!」
そう、
そこにいたのはリンクとデリトである。
「ずいぶん厄介なことしてくれたじゃない…これじゃあ生殺し状態だわ!」
「セト様があなたを生かしてくださったのですよ?少しは感謝してください。」
「ただの余計なことよ!」
(そうよ、アイツが余計なことをしなければ…!)
私が完全体になってTestを攻撃した時、確かにアイツは私のデータを破壊したわ。
ただし"一部"だけね。
「あなた、私の戦闘データを破壊したでしょ」
「ん?あぁ、まぁ。正確にはTestのデータ…な」
そう、
私は確かに戦闘はできるけど以前のような因子やコピーを使った攻撃はできなくなっていた。
「そのあと、どうやって私を生き返らせたわけ?」
「生き返らしてなんかいねぇよ、最初のままだ。俺はあの時『創世』でオメーを切った、その時にスキルを発動させたんだよ。」
(創世のスキル…?)
「スキルっていうか、武器効果って言うのかなぁ?まぁ、壊世と同じような感じだ」
「それで?その創世のスキル効果は?」
「"創世"だよ」
「はぁ?」
何を言っているのかがわからない、そのまま言ってどうするんだコイツは。
「つまりは作りだしたんだよ、ゲームシステムを無視して。まぁ、簡単に言えば"創世と壊世"この二つを合わせてTestだな」
「理解しがたい回答ね、もう少し分かりやすく言いなさい」
「だから…何かを作りだす創世、対して何かを破壊できる壊世。これはもうTestのゲームマスターとしての特別能力そのものだろ。」
なるほどね…
それで私の崩壊しかけた体をギリギリでとどめられたってわけね。
「まぁ創世は世壊樹が崩れたときに無くしちまったけどな、ハハハ!」
「ハハハ!じゃないわよ!アレが他の人の手に渡ったら大惨事よ!?」
「まぁ、壊世があるし。何とかなんだろ…ってあれ?」
壊世を取り出してみるとアイテム表示などは同じなのだが効果テキストの表記が変わっている、能力も消えているようだ。
「ああ、セト様。それらの武器はもう効果使用不可能ですよ、念のため消させていただきました。」
「な、ナンダッテー!?」
「ご安心ください、創世も使用不可能です」
よかった、つまり創世を悪用できる人はいないってことだな。
『ちなみに俺は生きてるぞ』
「うお!seto、生きてたのか!」
『んだよ、生きてちゃ悪いか?それと、お前アイテムパックに入ってる『リリール・サンド』あれもうアイテム消費期限切れて腐ってるぞ』
「ナニィィィイイイッ!?」
セトは急いでアイテムパックをあさって探し始めた。
それを見てリンクは微笑んでいた、恐らくセトがいるとその場の空気も変わるんだろう。
◆ ―リリール・シティ― ◆
「よぉ!久しぶりだなセトォ!」
「おう!久しぶりだな!」
元リリールの町にて俺とジャンは落ち合った。
「それにしてもアイテムが残っていたのは良いとして…スキルとかレベルはリセットだなんてなぁ~チクショ~」
隣でジャンがリリール・サンドを食べながら泣いている、そんなに不味いくらい腐っていたのか俺のリリール・サンド…
「そういえばお前、プライベートルームシステムはもう利用したか?」
「プライベートルーム?」
「あぁ、通称PRSって言うんだけどよ。今回のアップデートで実装されたらしいんだよな。」
ほう、中々に面白そうだな。
PRSか…
「どんなのかというとよ、簡単に言えば一人に一つ自分の部屋が貰えるんだよ」
「へ~これまたすごいことを」
じゃあ俺にもあるってことか、後で見てみようっと。
「それで?お前は利用したのk…ん?」
俺はジャンに聞こうとしてとあることに気がつく、
向かいの路地にいる少女である。
「リノア…」
「ん?…あ、おい!セト、どこいくんだよ!?」
俺は何も考えずに向かいの路地へと歩みを進めた、
そこにいるのがリノアに見えて…
「あ、あの!」
「…はい」
「えっと…その…」
そのキャラは確かにリノアに似てはいた、
キャラメイクが少し違うが職業が魔法使いだ。
しかもこのキャラの頭上には「クエストを手伝ってくれる方募集」と表示されていた。
「も、もしも…俺たちが手伝っちゃダメかなぁ?」
「……」
やっぱりダメか、そりゃそうだ。
いきなりハイテンションで話しかけられたら不審者以外の何物でもない、これはここまでの話か。
「…いいですよ」
え?
「ほ、本当か!」
「はい。よろしくお願いします」
俺はその場で飛び上がりそうになった、
こんなにも他人と話せて嬉しかったことがあろうか?
いや、ないね。すぐさまジャンを呼びに行った。
◆ ―数十分後― ◆
「これで…終わりだッ!」
ジャンが剣を振り下ろして最後の敵を切り倒す、
目の前には『Quest Clear』の文字が表示された。
「へー…意外とレアアイテムがドロップするんだなぁ…」
「セト、俺らも一応貰っておこうぜ。アイテムの一部は前作から引き継がれていないんだからよ」
そんなこんなでアイテムを回収していた時のこと、
少女がこちらへと歩いてきた。
「これ、どうぞ…」
少女はセトに何かを送った。
しかしその後、少女はセトたちよりも先に町へ帰ってしまった。
「なーんであの子あんなに急いで帰ったんだろうな?」
「さぁ…」
などと言いつつもアイテムが添付されたメッセージを開くと、
そこにはレアアイテムがたくさんあった。
「えっ!?これは…」
「こいつは!?なんでこんなにレアアイテムを…?」
当然ながら、まずは怪しんだ…が。
その後は感謝の気持ちが残っていた、きっとあの子は前作からのプレイヤーだったんだろうな~としか思っていない。
「あの子にお礼を言わなくちゃな…」
「あ!でも…いや、まさかな?」
いきなりジャンが声を上げる。
「なんだよ?」
「いやな?これは配信開始早々にあまり良くは無いことなんだが…」
「いいから言えよ」
「つい最近『クローンアイテム』が出回ってたらしいんだよ」
クローンアイテム…
配信早々出回るとは、相当このゲームの人気が高いことを示しているな。
ちなみにクローンアイテムってのは何らかの方法で増殖されたアイテムだ、このゲームにおいてはリンクがいる限りハッキングはありえないから恐らく「増殖バグ」か何かを使ったんだろう。
「ちなみに既にほとんど対策はされたんだが…まだ全部ってわけじゃないらしいんだよ」
「へぇ~…それが?」
「もしかしたらあの子があんな低レベルでレアアイテムを沢山持っていた理由って…」
コイツ、あの子を疑っているのか?
「お前、疑ってんのかよ」
「いや、ただちょっと過ぎっただけで…」
俺はジャンの胸ぐらを掴んで自分の顔の前へと引き寄せる!
「ジャン!いくらお前でもあの子を疑うことは許さないぞ!」
「な、何キレてんだよ!?セト、お前ちょっとおかしいぞ!?」
ハッと我にかえる、
その後、急いでジャンを放した。
「わ、悪い…俺つい…」
「確かにリノアちゃんに似ているのはわかるけどよ、もうちょっと頭冷やせよな。俺は一旦飯落ちするけど、その間に頭冷やしとけよ」
「あぁ…わかった」
するとジャンはテレポートクリスタルを使ってどこかの町へと飛んでいった。
「何やってんだよ俺…ッ!」
自分の焦りに腹が立って俺はゲーム内での髪をかきむしった。
(そんなことより、早く真相を確かめないと…!)
あの子は絶対にクローンなんて作っていない、白だあの子は!
そう自分に言い聞かせてセトは走り出した。




