二十話 「創世・解放」
この戦いは復活不可能、
リスポーン地点でだった世壊樹はデリトともに空高く雲の上だ。
故に、本当の戦争と同じように兵は全て使い捨てである。
「うおぉぉおおおっ!!テメェ、俺と同じ姿しやがってよぉ!」
「テメェこそ、同じ姿してんじゃねぇぞ!」
こっちは人数に限りがあるのに対し、
相手は俺たちが今までのプレイの中で死んだ数だけ兵が居る。
もはや勝ち目はないであろう。
「だけど…負けるわけにはいかないっ!」
「ああ、リノアちゃんを助けるんだろ?」
「師匠も男っスね~」
デリトにたどり着くにはとりあえずこの無数の兵の中を突っ切らねばならない、
戦った時の勝算はそのあとに考える!
「行くぞっ!」
「おうよ!」
「任せるッス!」
俺たちは敵の渦巻く戦場へと飛び込むと、
一層強く剣を振るった。
「こいつら、そのプレイヤーが死んだときの情報のまま蘇生されている…レベルにバラツキがある…!」
「つまり、同じキャラだからって油断するなってことだろ?」
確かに、
見た目だけじゃ相手のステータスなどがわからないから辛い…
どうしたものか。
「おい!なんだよアレ!?」
「ん?」
敵陣へとドンドン突っ込んでいく味方が、
片っ端から倒されていく。
「何が起こっているんだ…」
「セト!もしかして…」
もしかして?
…まさか、あの強さは!
「Testか…!?」
俺は味方を押しのけて騒ぎになっている場所へと走った、
そしてそこにいたのは。
「やっぱりか…」
「…ノア」
まさかこんなところで再開することになるとはな、
ギルドにいたころTは一度も死んだことは無かった。
恐らく、ラクスラズルでわかれた時…あれが死亡判定だったんだろうか。
「お前、変わってないな」
「君こそ変わってないね…」
"確かに変わっていない。"
「そこを通してくれないか」
「すまない、君のお願いでもきけない」
Testは三回ほど瞬きすると、
すぐさま背中の剣を抜いてこちらへと剣先を向けた。
「やるのか」
「もちろん」
それならば俺もそれに答えるまでだ。
「いくぞ俺」
『あぁ、勝てる見込みは無いがな』
「いくよ、ノア…!」
俺は真っ先にフラッシュスタンスを発動させてTestの後ろへと回りこんだ、
恐らくデリトのようにフラッシュスタンスはコピーして使えるんだろうが、使用しないということはTest自身のプライドが残っているということか。
「何ッ!?」
フラッシュスタンスを使って回りこんだのは良いが、攻撃ができない。
回りこんだ時にはすでに俺へと剣先が突きつけられていたからだ。
「数手先を読む」
「ヘッ!そうこなくちゃなぁ!」
フラッシュスタンスを継続して使用することはできない、
恐らくTとの戦いは長期戦に持ち込まれるかもしれないからだ。
出来る限りHPは温存しておきたい。
「正面からきなよ」
「言われなくてもわかってんだよ!」
だが正面から向かったところで結果は同じ、
刀を止められるだけだ。
『これじゃあ埒が明かないな…セト、どうする』
「どうするって言ったって…」
「よそ見は敗北への道だよ」
「しまった!」
setoへと気を取られたたったの数秒、
この数秒がダメージを受ける原因となってしまった。
「うがぁっ!!」
薙ぎ払うように横腹を切り上げられた俺は後ろへと吹き飛ぶ。
「本当は勝算はたっているんだろう?だしたらどうだ」
あぁ、
まだ早い気もするが出すか。
『出すのか?』
「だってよ、たった一撃喰らっただけで俺のHPが残り1/3だぜ?いくらデリト戦があったとはいえこれはダメージが大きすぎる。」
ここで出さなきゃどこで出す。
「いいぜ、出してやるよ」
「フッ…」
Tはレイピアを持つように剣を構えると、
そのままその場で待ちの体勢へと入った。
「これが…秘策だ!」
俺はアイテム欄から装備を選ぶと、
決定コマンドを押し右手へと装備した。
「これがデリトと戦った時に左で壊世を使ってた理由だ」
セトの利き手である右手に握られていたのは、
現在左手に装備している壊世とは対照的な見た目をし、美しい光をまとった刀。
「…解放完了!」
『神刀 ―創世―』
「フッ…どうやら僕からの贈り物は大切にしていてくれたみたいだね」
「当たり前だ」
セトは双剣を持つように創世と壊世を構えるとそのままフラッシュスタンスを発動させる。
「くっ!」
「一本じゃ防ぎきれないだろ」
先ほどのように後ろへと回りこんだ、
が先ほどのように完全に防がれることは無く一撃を与えた。
「ついでだ」
セトは近くの敵を壊世で斬ると、
そのままTへと振りきった。
「これは…!」
敵のデータ情報が塊となってTへと飛んでいく。
「うぐぁっ!」
一瞬でデータを処理しきれなかったTはそのままダメージを負い勢いで後ろへと倒れる。
「…リキャストはあと30000ダメージってとこか」
「フフ…まさか僕がガードしているときに壊世で僕の剣にダメージを与えてリキャストしていたとはね」
Tはそのまま立ち上がらず、
その場へと座り込んだまま手を振った。
「行きなよ。」
「…」
俺はTに何も言わずにその場を去った。
「3回の瞬き…アイコンタクトが役立ったなぁ」
そう呟くとTestはその場から勢いよく上に飛んだ。
◆ ―デリト付近― ◆
「デリトォォオオッ!!」
セトはデリトの浮かぶ上空を見上げながら地面を駆けた、
ただでさえ天空であるラクスラズルの更に上空となると…もはや攻撃すらままならない。
「消え失せよ」
デリトは天を仰ぐように腕を振り上げると、
そのままセトを指さした。
「なっ!?」
天からは無数の閃光が降り注ぎ、
地面を砕きながらセトへと向かって来る。
「これは…マズい!」
閃光がセトの元へと達した時、
周囲の地面は破壊エフェクトと共に吹き飛び、辺りは砂ぼこりにつつまれた。
「愚かな」
誰もが唖然としたその時。
「愚かでもいいさ…」
砂煙をかき分けるように大剣を持ったジャンが出てきた。
「危なかったなぁ、セトよぉ」
「流石ナイトってところか」
「強がりやがって」
ジャンの職業であるナイトは仲間を守るのも役目である、
故に守りの徹底ぶりには目を見張るものがある。
『第二ラウンドだ』
「あぁ、再開だ」
二本の神刀を振り上げ、
デリトへとセトは向かう。




