十九話 「オール・デリート」
セトが刀を振るい、setoが指示を出す。
先ほどまではデリトの攻撃を防ぐのでやっとだったが、
二人が合わさった今、本当の意味でデリトと対等に渡り合えている。
「クソ…!クソッ、クソッ!!」
滅茶苦茶な太刀筋で剣を振るうデリトに対し、
セトは正確に攻撃と防御の使い分けをこなしていた。
『次は下からの切り上げだ、その次は右…!』
「次は下、そのあと右…!中々、隙ができないじゃねぇか…」
いくら防御と攻撃がうまくいっているとはいえ、
直接攻撃をするには隙が足りなさすぎる。
「ハァ…ハァッ…」
「もらったぁっ!!」
「しまっ…!!」
『バカ…ッ!!』
少し、
ほんの少しだけ疲労で刀を降ろした瞬間。
デリトの一撃がセトへと直撃する!
「うぐぁっ!!」
そのままセトは後ろへと吹き飛んでいき、瓦礫のオブジェクトの下敷きとなった。
「フフ…まだ終わっていないんだろ?ここから砂ぼこりをかき分けて立ち上がってくるのがセトだろう?」
デリトはまるで先を知っているかのようにほくそ笑む、
勿論、デリトの予想通りセトは立ち上がってきた。
「やれやれ…フラッシュスタンスを継続して使っているとHPがとんでもないほど減るなぁ…イテテ」
『確かに回復が無いのは辛いな、だがまだ折れるなよ?』
「言われなくてもわかってるよ、コイツを倒すまでは折れないさ…!!」
「フフ…そうこなくちゃあねぇっ…!!」
セトの戦いを遠くから見守っているリノア、
その周りには一緒に見守る四人が居た。
「ラルゴ…って言ったっけ?いいのか、こんなところにいて」
「俺は確かにseto様と知り合ったのは割と最近だ、だが誰よりもseto様を見続けてきたつもりだ。故に、最後まで見届けるのも俺の役目。」
「まぁ…確かに師匠のサブキャラが居たなんて、全然知らなかったッスからね~」
「セト…」
「なぁに、安心しろ。あれは俺が鍛えた刀だ、そう簡単に折れやしないさ」
心配そうにセトを見守るリノアの頭に軽く手を乗せて、
アナライはひとこと言う。
「セトにはもう一つ、"奥の手"があるからな」
「奥の手…?」
『そろそろ決めたほうがいいんじゃないのか?』
「簡単に言ってくれるな、どう考えてもアイツ、上級レイドボスくらいの強さはあるぞ…それにソロで挑んでるも同然なんだ、少しはいたわれ。」
『俺だったら、もう決めている』
「あ?負けたくせに何言ってんだ。」
『あぁ…確かに、結局俺はカルマを救えなかった…だがな、今から変えることはできる』
「あぁ、そうかい…!」
喋りながら戦っているが、
手は少しも緩まない。
これがセトの技術だろうか。
「ホラァ!またHPが無くなるぜぇ!?」
「ック!キツイなぁ…!!」
『チッ…本当は使われたくなかったんだがな…』
そういうと、
setoは壊世を持つセトの手を上乗せて握るように掴み、指示を続ける。
『いいか…これは俺のスキルだ、だから出来る限り精神を保ちつつ俺の波長に合わせろ』
「は?…なんだそr…」
『行くぞっ!!』
「うわっとと!!」
そのままセトとsetoはデリトを刀の肌で弾くと、
スキルを発動させた。
『「"グリード ブレイド"…!!!」』
瞬間、
壊世はデリトの構えている剣の間を縫い、
剣先から勢いよくデリトへと突き刺さった。
「何ッ!?」
『「喰らえぇぇぇええええええッ!!」』
デリトの動きを封じるかの如く、
黒いツタが一斉にに絡みつく!
「ば、馬鹿な!?私のHP・MPがドンドン減って…イヤァァァァアアアッ!!」
全て吸い尽くすと、
ツタは剥がれてその場にはデリトだけが残った。
「やった…のか…」
セトはボロボロになった身体をいたわるように壊世をその場へと降ろした。
「うおおおおおっ!セトォォオオオオ!!」
「師匠~!」
「セト!」
真っ先に世壊樹の根元へとみんなが集まってきてくれた、
これで終わったのか。
「みんな…終わったぜ、ヘヘ」
「セト、よくやったな~信じてたぞ~!」
「師匠~」
俺もこれで帰れるのか、
現実に。
「…ない」
「え?」
セトは声のしたほうに瞬時に振り向いたが、
そこには何もなかった。
そう、
なくてはいけないのだ。
「デリトが居ない!」
その時「ハッ」としてあたりを見るがもう遅かった。
「え…?」
こちらへ走って来る中、
リノアだけが立ち止まった。
「リノアッ!!」
リノアの首に手をまわす形で、
デリトが抱きついていた。
「まだ終わっていない。フフフ…なぁんか、リンクの香りがすると思えば…こんなところにいたとはなぁ」
「嫌!離して…!」
「やめろデリト!リノアに手を出すな!!」
「リノア?…リノアだと?」
リノアという名を聞いた時デリトの表情が一瞬だけ驚きへと変わる、
そしてすぐさま元に戻る。
「そう、この娘がリノア…」
「なに…?」
「リンクじゃなくても良い…!この際、お前のほうが優先だっ!」
「っな!?」
そう言うと、
デリトはリノアの襟元をめくり首筋へと噛みついた。
「うわぁ…随分と大胆ッスね…」
「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!」
「デリト!テメェ、何をっ!」
リノアがその場に膝から崩れ落ちる、
しかしデリトはリノアを噛んだまま離さない。
「デリトォォオオオオッ!!」
「安心なさい、別に殺そうってわけじゃないわ。ただ、私の因子を流し込んでるだけよ」
「何をする気だ…!」
「あなたの油断が招いたことよ、世壊樹は普通に生きていたのに私が死んだなんておかしいじゃない?よく考えていれば勝っていたかもね。」
そう言うと、
次第にリノアの身体がデリトの中へと飲みこまれていく。
「カルマに使った手と一緒、一体化するだけ。殺しはしない」
「今すぐ離れろぉぉぉおおお!!」
『待て!』
しかし、
setoの制止の言葉は届かず、セトはデリトへと勢いよく突っ込んでいった。
「もう手遅れだ」
「うぐっ!」
案の定、
セトはデリトに払いのけられて吹き飛んだ。
「セ…ト…」
「リノアッ!!」
そのままリノアはデリトの中へと消えていった。
「この力…最高ッ…!!」
デリトの身体がドンドン変化していく、
背中からは翼が生え、赤かった髪はみるみる白く輝く髪へと色を変えた。
「な、なんだと…」
地面は砕け、
世壊樹は空高く雲よりも高くデリトとともに浮かび上がっていった。
「メチャクチャなラスボスっすね…」
「おいおい、あんなんどう倒せって言うんだ…」
デリトは最終的に世壊樹をも取り込み、
パッと見、大天使のような見た目へと変身していった。
『おい、絶望感に浸っている場合じゃないぞ!リノアを救うんだろ!』
「でも…あんなのどうやって…」
『仲間が居るだろ!』
そうだ…俺にはまだ仲間が…
『行くぞ!』
「お、おう…!すまなかった!」
しかし、
そう簡単に行くわけもなく。
「我はこの世界の支配者となった、今こそTの意志を受け継がん。」
デリトは頭上へと手を広げ、
そのまま勢いよく腕を振り下ろした。
「なんだ!?」
漆黒の霧の中からは、
見覚えのある姿が無数に出現した。
「これは神がくださったチャンスというわけですか。」
「フム、これでネイティブにも光が来るのか」
「ヒヒッ…俺を路地裏で殺した野郎の顔もあるじゃねぇか~?」
「オルゼの勲章に栄光あれっ!」
「ナイト1、到着いたしました。」
「ナイト2、到着いたしました。」
今まで倒した敵のほかにも、
無数の敵が出現してくる。
「んなっ!?チートすぎんだろ!」
「あちゃー、シュベルクも居るッスね~」
「この人数は…」
そんな絶望のさなか、
遠くから声が聞こえる。
「お、おい!ジャン、避難活動をしたんじゃないのか!?」
「したさ!なのになんで…」
遠くから走ってきたのはアナライのギルド軍隊だった、
そのほかにもアナライの知り合いだと思われるギルドが無数にこちらへと走ってくるではないか。
「見た感じだけでも…数百人はくだらないぞ!?」
「お前たち―!どうして戻ってきたー!」
『俺たち、アナライさんが心配で!見捨てるわけにはいきません!』
「お前ら…」
アナライは照れ隠しからか「フッ」と笑うと、
いつものように指令としての役目を果たし始めた。
「お前たちの覚悟は受け取った!ここからは一歩も引けぬ、行くぞみんな!!!」
『うおおおおおおおおっっっ!!!!』
まるで現実の戦争のように大量のキャラクター達が
勢いよく交わっていく。
「さっきまで覚悟して飯落ちしてたんだ、うおー!」
「一応のために遺言を書き残してきた、PCに貼りつけておいた!」
「俺もさっきまで風呂落ちしてた、噛みしめて温まってきたぜ!」
「何言ってんだお前ら…俺なんて戦闘のためにいろんなゲームを掘り返したぞ!」
戦いの煙の中からは様々なユーザーの声が聞こえた、
しかしそれが安心感にもつながり、「勝たねば」という闘争心にも火をつける。
「俺たちも行くぞ!」
「了解ッス!」
こうして最後の戦いは幕を開けた…




