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一時帰国

パーティーの次の日、お祖父様が手紙を持って私達のところへ来た。


「サナ、お前に手紙が来ているぞ。」


お祖父様の言葉にサナが驚いている。


「え?私にですか?」


「ああ、そうだ。差出人は……バ……いや、リカルドからのようだぞ。セバスチャンが私経由で送ってきたんだ。セバスチャンの手紙によると…………いや、いいか。その手紙を見ればわかるだろう。」


サナはお祖父様から手紙を受け取って戸惑っているようだ。

まあ、そうだよね。

兄から手紙って珍しいし、サナ宛なんて初めてだと思う。

正直何が書いてあるか気になるけど、先ずはサナが確認しないとね。

ただみんなから注目されているこの状況で手紙を確認するのは恥ずかしいか……。

私は手紙を持ったまま固まっているサナに声をかけた。


「ねえ、サナ。ここだと落ち着かないだろうから部屋で1人で手紙を見てきたらどうかしら?」


私の言葉にサナは「はい」と返事をして、「失礼いたします」の言葉と同時にいなくなった。

……うん、とっても手紙が気になるんだね。



サナがいなくなるとお祖父様が口を開いた。


「本当はこのまま北の国にでも行こうと思っていたんだが、一度国に戻ろうと思う。たぶんここがリカルドの勝負どころだからな。」


「勝負どころ……ですか?」


「ああ。セバスチャンによるとリカルドの奴見合いしたみたいだぞ。」


あらあら、兄と見合いをしてくれる奇特な方がいるとは驚きだ。

でも何時ぞやかのパーティーでも令嬢に囲まれているところを見ると、まだ騙されてくれる令嬢はいるということか。

……うん?じゃあ何で兄はサナに手紙を寄越したんだ?


「お祖父様、何故お兄様はサナに手紙を送ってきたのでしょう?見合いの報告ですか?」


お祖父様は笑いながらこう言った。


「たぶん見合いのことには全く触れていないのではないか?大方追い詰められて覚醒したのだろう。」


覚醒って……。

何だか面倒くさいことになっている予感がする。

こういう予感ほど何故か当たるんだよね。



ドアが開く音がした。

どうやらサナが戻って来たみたいだ。



「サナ、お兄様の手紙はどうでしたか?」


私の質問にサナは困った顔をした。


「どうと言われましても……何と言っていいのか……。」


最終的にサナは私に手紙を差し出してきた。


「え?読んでもいいのかしら?」


「はい。リリーナ様に読んでもらいたいです。」


ふむ、そこまで言うなら読んじゃうよ。

どれどれ…………ふんふん………

うん、短い。

しょうがないよね、兄だし。


ふーん、『直接伝えたいこと』ねえ〜。

お祖父様じゃないけど本当に覚醒したのかな?

まさかお見合いしてやっとサナに対する気持ちを自覚したの?

でも、たぶんサナにはイマイチ伝わっていない気がする。


私はサナに手紙を返した。


「ねえ、サナ。サナはどうしたいの?お兄様に会いたい?」


「わ、わたしは……」


サナは少し考えてからこう答えた。


「私は、リカルド様のお話を聞いてみたいと思います……。」


私とお祖父様は顔を見合わせて頷き合った。


「では、明日国に帰ろう。な〜に、少し予定を変更するだけだ。どうせ国に帰るならそのまま東の国に行ってもいいしな。」


お祖父様の言葉に何故かサスケさんが反応した。

いつものごとく小さい声でブツブツ言っている。


『え、東の国、行くのか?……うーん、不味くないか?バレる?……ん、別に、いいか。』


よくわからないけど1人納得しているようだ。


「さあ、では荷物をまとめておきましょうね。とは言ってもそんなに多くはないけど。」


お祖母様も既に帰る準備を整え始めている。

それを見てアンジュさんとアレン君も自分の荷物の整理を始めた。

サナはこんなにすぐに帰る話しになってビックリしているように見える。


「あ、あの私のワガママで……このように皆様を巻き込んでしまって……」


ワガママ?

ワガママなのはあのバカ兄でしょ。

どっちかと言うとサナは被害者だ。


「サナ、気にしなくても大丈夫よ。急ぐ旅でもないのだし、そのまま東の国にだって行けるわ。それよりお兄様が何を言い出すのかが私は心配よ。サナに迷惑がかからなければ良いのだけど……。」


「そんな!リリーナ様が申し訳なさそうになさらないで下さい。リカルド様のお話しを聞くと決めたのは私なんですから。何を言われても大丈夫ですわ。」


……何を言われてもね〜。

いきなり求婚されてもそんなこと言ってられるかな?

もしも本当に兄が自分の気持ちに気づいたのだとしたら、たぶんサナに猛攻を仕掛けると思う。

ただ、90%ぐらいの確率で返り討ちにあいそうだけど。


兄が暴走したら問答無用で沈めようと私は心に誓った。

もちろんお祖父様とお祖母様の力も存分に使わせてもらう気満々だ。

きっと喜んで手伝ってくれることだろう。

よし!兄、待っててね!

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