閑話 リカルドの危機③
俺は今、非常に混乱している。
何で俺はここまで追い詰められているんだろう?
たかが令嬢1人に……。
見合いから3日経った。
その間に何度もあの見合い相手から急襲を受けている。
俺、断ったんだけど……。
まず、屋敷にやってくる。
そして騎士団の訓練場にもやってくる。
俺の気の休まる時間が全くないのだ。
しかも訓練場にやって来るもんだから部下にも見合い相手だとバレてしまっている。
特にサナに気があった奴らは2つの反応を示しているのだ。
1つは俺がサナから離れることを喜ぶ奴ら、もう1つはサナではなく違う女性を選んだと怒りをあらわにする奴らだ。
とりあえず最初の反応をした奴らはあとでシメる。
そして今日も…………
「リカルドさま〜〜!」
う、また来た。
俺が部下相手に訓練をしていると現れる例の。
周りはニヤニヤしながら俺と令嬢を見ている。
「……お前達、まだまだ訓練が足りないようだな。安心しろ、そんなお前達に心優しい俺がトコトン付き合ってやる。」
俺の言葉に部下達は
『横暴だ!』
『もう動けないっす!』
『サナ様は俺が貰い受ける!』
などと戯けたことを言っている。
そして最後の奴マジでシメる。
俺が部下達に訓練を続行している間も、件の令嬢は帰ろうとしない。
いつからこの訓練場は見学が気軽に出来るようになったんだ?
もう、勘弁してくれ。
結局、追加訓練が終わるまでいた。
「リカルド様!お疲れ様です!」
……ああ、本当にな。
訓練よりも精神的なものが原因だと目の前の令嬢は気づいていない。
「…………ああ。」
俺の素っ気ない対応にも全くめげない。
「リカルド様、これ、もし良かったらお召し上がり下さい。」
彼女が差し出したのは見るからに手作りと思われる菓子だった。
ここでこれを受け取ってしまったらますますドツボにはまってしまう。
俺は少し考えた後、こう言った。
「すまないが、その、俺は甘い物は苦手なのだ。」
もちろん大ウソである。
俺の大好物はサナが作ったクッキーだ。
「…………そうでしたか。」
うっ、そんな顔したって受け取ることは出来ん。
エリス嬢は少し泣きそうにも見える。
俺たちのやり取りを見ていた他の隊員がヤジを飛ばしてきた。
『隊長の人でなしーー!』
『女の敵!』
『サナ様に言いつけてやる!!』
あいつら〜〜、また最後のヤツだけは後でシメる。
ーーその日の夜
俺はグッタリしていた。
今までこんなにも言い寄られたことなどない。
正直断る以外に何をしたら良いのかわからん。
しかし、1つやらねばならんことがある。
それは…………サナに手紙を出すこと!
自分の気持ちに気づいた今、行動あるのみだ。
本当は今すぐ西の国に飛んで行きたいが仕事もある。
それにサボって行ったことがバレたら、それこそサナに冷たい目で見られてしまうからな。
なので手紙だ。
とにかく手紙を出して早くこっちに帰って来てもらわねば。
このままではいつの間にか婚約が成立してしまいそうで怖い。
ヨシ!気合いを入れて書かねば。
『 サナへ
サナ、元気か?
俺はサナがいなくて力が出ない。
サナの作ったクッキーが無性に食べたい。
こちらにはいつ帰って来る?
是非、直接会って伝えたいことがある。
本当は俺がそっちに行きたいが仕事もあるから行けないのだ。
だから早く帰って来てくれ!頼む!
リカルドより 』
これでヨシ!
で、これをセバスチャンに頼めばサナのところまで手配してくれるはず。
これを読んで早く帰って来てくれ。
次の日俺は朝一でセバスチャンに手紙を託した。
くれぐれも届かないなんてことがないように、頭を下げて。
俺がセバスチャンに必死で頼んでいる横から父が突然変なことを言ってきた。
「リカルド、お前エリス嬢と出かけて来なさい。」
「嫌です。」
俺と父は睨み合った。
ここで折れるわけにはいかない。
デートなんてしたら即座に結婚に辿り着いてしまう。
「リカルド、エリス嬢と話し合ってみないことには相性なんてわからないだろう?あんなにお前に懐いてくれる子なんて今後現れないぞ。」
「俺には……サナがいます。」
「いや、今いないし。それにリカルド、サナがお前を受け入れてくれるか微妙だと思うぞ。」
な、なんてことを言うんだ!
サナがいない人生なんて…………。
「わかりました。エリス嬢とデートをして、そして……思いっきり嫌われてきます!」
俺の発言に父が切れた。
無言で頭を殴られたのだ。
しかしいつも母に殴られていた為、あまり痛くない。
逆に殴った父が悶絶している。
「っく〜〜。なんだってそんなに石頭なんだ。」
「すいません。」
「こうなったら絶対エリス嬢と話し合ってもらうからな。お目付役もつけてやる。」
お目付役?
ふん!誰が来ようが知ったもんか。




