↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
45/57

第45話:完全なる逆流(オーバーロード)、あるいは王都への反

王都の地下深く、冷たい魔力光に満ちたハッキングルーム。

「なっ……なんだと……!?」

魔導ハッカーのリーダー格の男が、目の前で次々と煙を吹いて爆発四散する黒水晶のモニターを見て、血走り目を剥いた。

「私たちの精神干渉ウイルスが、逆に逆流(リバース)してきている……!? 馬鹿な! 辺境の田舎町ごときに、こんな高負荷の逆回線(カウンター)を処理できる演算能力(ロジック)などあるはずが――」

バチィィィンッ!!

男の端末から凄まじい電撃が走り、彼は悲鳴を上げて床に転げ落ちた。

* * *

バルツァー特別自治区の領主執務室。

アレンとクロエは、メインフレームに両手を当て、眩い黄金色の魔力を放っていた。

「アレン様、逆流回路(カウンター・パス)の接続完了ですわ!」

「よし……王都のハッカーどもめ。俺たちの街を狙った代償を、骨の髄まで思い知らせてやる!」

アレンの冷徹なロジックと、クロエの研ぎ澄まされた商会ネットワークの知識。そして、リリアが遺した「温かな感情のエネルギー」が一つに融合し、一つの巨大な「反撃のコード(プロンプト)」を形作る。

『――要求(プロンプト)。敵性ハッカーグループの全IPおよび魔力波形を特定。および、奴らが隠蔽している「王都中央銀行の不正融資データ」「貴族院の裏金汚職の全ログ」の強制抽出(エクスポート)』

クロエが冷たく言い放つ。

「お姉様を侮辱し、この街の平穏を脅かしたこと……大商会の次期当主として、そしてあなたの補佐官として、一族の総力を挙げて『全財産の没収(破産)』という社会的死刑宣告をプレゼントしてあげますわ!」

『――出力(アウトプット)。王都全域の全魔導掲示板(ビジョン)および監査局への、全データ一斉送信(パブリック・ドロップ)』

ピィィィンッ……!!

執務室から放たれた黄金の光の奔流が、空間を跳躍し、遥か王都の中心部へと撃ち込まれた。

* * *

その頃、王都の中心街。

貴族たちが優雅に馬車を行き交わせ、魔導掲示板(ビジョン)には華やかなニュースが流れていた。

その時――。

街中のすべての魔導ビジョンが、一斉にバグったように激しく明滅した。

そして、画面に映し出されたのは、王都の最高権力者たちや、先ほどまでアレンたちを襲っていた魔導ハッカーたちが、裏で結託して巨額の裏金を私腹し、自治区を潰そうと企てていた「生々しい音声付きの全証拠データ」だった。

『なっ……!? おい、あのビジョンを切れ! 止めろ!!』

『我が家の裏帳簿がなぜ公開されているのだ……っ!?』

王都の街路は、一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵図へと変わった。

自分たちが仕掛けたはずのハッキングを完璧に倍返しされ、一瞬にして社会的な信用も財産もすべてハゲタカのように剥ぎ取られていく特権階級たち。

それは、アレンたちがロジックと知性の力で見せつけた、圧倒的かつ最高にスカッとする「ざまぁ」の光景だった。

* * *

静まり返った執務室。

ふう、と息を吐き、アレンとクロエは手を下ろした。

コンソールの画面には、王都からの侵入者たちのシグネチャがすべて「完全消去(ロスト)」されたことが表示されている。

「ふふっ……ざっと見事な損益計算(リベンジ)でしたわね、アレン様」

クロエは片眼鏡が壊れた素顔のまま、勝ち誇ったような、しかしどこか柔らかい美しい笑みを浮かべた。

「ああ。お前のおかげだ、クロエ」

アレンは彼女の頭にそっと手を置き、優しく撫でた。

クロエは「っ……子供扱いしないでくださいませ!」と少しだけ顔を赤らめながらも、その手を払いのけようとはしなかった。

外部からの最大の脅威は、完全に粉砕された。

街には再び、星灯りの収穫祭の温かな光と、領民たちの笑い声が満ちている。

――だが。

すべての騒音が消え去った地下牢の底で、鉄格子を掴むマリアの指先だけは、狂気に満ちた執念の色を失っていなかった。

「……まだよ。まだ、お兄様を絶望の底に突き落とす『最後の手段(とっておき)』が残っているわ……」

自治区を揺るがす最終決戦の幕が、静かに上がろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。