第389話 目を覚ました少女
翌朝。
少女が眠っている部屋には、朝の光が差し込んでいた。
ゼオンはいつものように、少女のそばに座っていた。
「……」
少女のまぶたが、わずかに動く。
「ん?」
ゼオンが顔を上げる。
そして、少女がゆっくりと目を開けた。
「……!」
ゼオンは驚いて立ち上がった。
「起きた!」
少女はぼんやりと天井を見る。
しばらくして、ゆっくりとゼオンへ顔を向けた。
「……」
「大丈夫?」
少女は答えない。
ゼオンは慌てて部屋を出た。
「父さん!」
廊下を走ってくる。
「父さん、起きた!」
「何?」
「女の子が起きた!」
リオンもすぐに部屋へ向かった。
「本当か?」
「うん!」
リオンが部屋へ入る。
少女はベッドの上で、静かに座っていた。
「……目を覚ましたか」
リオンが声をかける。
少女はリオンを見る。
しかし、何も言わない。
「体調は?」
すぐに日本側へ連絡し、簡単な検査を行う。
血圧や体温などを確認する。
「特に問題ありません」
「身体の方も?」
「今のところ異常は見当たりません」
リオンは安心したように息を吐いた。
「そうか」
それなら話を聞ける。
リオンは少女の前に座った。
「君の名前は?」
「……」
「どこから来た?」
「……」
「マサラ王国を知ってるか?」
少女は何も答えない。
リオンは少し首を傾げる。
「聞こえてるか?」
少女はリオンを見る。
そして、口を開いた。
「……」
声が出ない。
「……しゃべれないのか」
少女は小さく頷いた。
リオンは困った顔をする。
「そうか……」
質問しても答えられない。
紙とペンを渡してみても、少女はどうすればいいのか分からないようだった。
「どうする?」
リオンがゼオンを見る。
「僕がやる」
ゼオンが少女の隣に座った。
「無理に話さなくてもいいよ」
少女がゼオンを見る。
「分かることだけでいいから」
ゼオンはゆっくり話しかける。
少女はしばらくゼオンを見つめていた。
そして、小さく頷いた。
「じゃあ……まず名前から聞いてみるね」
リオンは少し離れた場所へ移動した。
「頼んだぞ、ゼオン」
「うん」
ゼオンは少女と向き合う。
少女はまだ不安そうだった。
それでも、ゼオンの隣から離れようとはしなかった。
ようやく、事件の当事者から話を聞ける。
ただし、その少女には、声がなかった。




